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蒼羽@不定期投稿
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羽海汐遠
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MaruM
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恋人が人を殺した。
ある夜の日、血だらけの恋人が家に帰ってきた。
「え?どうしたの?転んだの?」
「…人を殺した」
泣きながら言う彼を前にして、私はなにも言えなかった、何かの冗談だと思った、ドッキリだと思った。でも、泣き崩れる血だらけの彼を見て、冗談を言ってるようには見えなかった。
それが何よりも辛かった。
「…ごめん、ごめん」
ごめんを連呼しながら声を上げて泣く彼を見て、私は「最低だ」と思った、今すぐに彼なんて捨てて逃げればよかった、だって私は関係ないのだから、だけど私は彼が好きなんだ、どうしようもなく好きでたまらないんだ。
だから震える彼に駆け寄り強く抱きしめた。
「大丈夫…、1人じゃないよ」
この瞬間、私も共犯になった。
自分の胸の中で情けなく泣き叫ぶ彼を私は離さなかった。私も相当おかしいのかもしれない、人を殺した恋人をそれでも愛しているなんて、他人から見たら私は愚かなんだろうな。だけど私は彼を愛しているから。
彼を愛することはやめられないから。
次の日、テレビをつけたらすぐに恋人が犯した罪のことがニュースになっていた。犯人は未だ不明だとそう書かれていた、それなら逃げられる、きっと犯人が見つかるのに時間はかからないだろう、だから早く今のうちに逃げてしまおう、そう考えた。
遠い目をしてそのニュースを見る彼の目の下には隈があった。きっと眠れなかったのだろう。
「ごめんね。」
ニュースを見ながら謝る彼を見て胸が苦しくなった。
「謝らないで」
私は彼になぜ人を殺したのかと聞かなかった。理由を聞いたら「許せる理由」を探してしまう気がしたから。だけどほんとは理由なんてどうでもよかった、目の前で震える彼を見捨てることは私にはできなかった、
「ねぇ、一緒に逃げよう」
声が震えていた。
彼はしばらくなにも言わなかった、泣きそうな顔で下を見ていた。
「…君まで壊れる必要はないないよ。」
そう言って笑う彼の顔は、昨日まで私が知っていた笑顔とは違った。
「もうとっくに壊れてるよ。」
貴方が人を殺した瞬間から。
貴方をを見捨てることができなかったあの瞬間から。私はもう元の私には戻れない
彼は何かを言いかけて口を閉じた。かわりに私の手をそっと握った。その優しい手つきに涙が出そうになった。そして同時に彼の手の冷たさを知った。
私もその震える彼の手を握り返した。
私はもう元には戻れないから、今更貴方を捨てていくことはできないから、だから貴方の罪まで愛することにしたんだよ。
家を出る時彼は何度も家の中を振り返った。
「忘れ物?」
彼は小さく首を振って言った。
「…もうここには帰れないんだなって。」
そう言う彼の寂しげな表情を見て胸が苦しくなった。泣くのを我慢して、彼の手を強く握った。
荷物なんて持たずに、行き先もわからずに。
明日が来る保証もないのに、私たちは歩き出した。どんなに追い込まれても進むしかないことはわかっているから。
歩いてる途中でよく2人で行っていたパン屋を見かけた。
「君、ここのメロンパン好きだったよね」
彼は立ち止まって、パン屋を見つめながら言った。思わず泣きそうになった。昨日から私は泣きそうになってばかりだ、そんな自分が情けなかった。
世界中から追われているのに。貴方は私の好きなものを覚えてくれていた。それだけで救われた気がした。
その日私たちは安いホテルに泊まった。
私は眠れなくてなんとか寝ようと目を閉じた。
「ごめん…。」
隣から掠れた声が聞こえた。誰に向けたごめんなのかわからない。 私なのか。 殺してしまった人なのか。 それとも、自分自身なのか。
私はもう一度目を閉じて彼の手を握った。
それだけで十分だった、幸せだった。いや、幸せだと思い込まなきゃ、生きていけなかったんだ。
それから一週間私たちは歩き続けた。手だけは絶対に離さなかった、話したらどこかに行ってしまう気がしたから。
そんなある日。
「ねぇ、もう一度あの家に帰らない?」
彼が突然言った。
「え?なんで?」
彼はなにも言わなかった。少しだけ微笑んで行こうと私に手を伸ばす。わたしは戸惑いながらも彼の手を取る、震えはもう収まっていた。
家に帰ると、一週間いなかっただけなのに何年も帰っていなかったかのように懐かしく感じた。家具も食器も全部あの時のままだった。2人でソファに腰掛けた、手は握られたまま。
「最後にさ、話したいことがあるんだ」
沈黙の中彼が静かにそう言った。
「え?」
「僕は、これ以上君を苦しめたくないんだ」
彼が言う言葉はどれも最後のお別れの言葉にしか聞こえなかった。
「嫌だよ。ねぇ、一緒に逃げるって言ったじゃん、」
私は泣きながら彼にしがみつくように言った。
「貴方の罪まで愛したのに。」
彼は静かに私の唇にキスをした。私を強く抱きしめてから、彼は家を出た。
私は動けなかった。走って家を飛び出した時彼はもう遠くにいた。追いかけようとした、けれど、彼は一度も振り返らない。私はその場にへたり込んで泣いた、声をあげて情けないほどに泣いた。
どれぐらいの時間がたっただろう、立ち上がって外を見るともうどこにも彼の姿はなかった。
もう終わってしまったことが辛かった。夢であって欲しかった。彼が人を殺してしまったことも、全部全部夢であって欲しかった。早く目を醒ましてと馬鹿なことを考えてしまった。
これは現実だ。
その日は眠れない夜を過ごした、彼のことを考えてしまって、忘れられなくて、眠ることなんてできなかった。
次の日、テレビをつけてニュースを見ると彼が逮捕されたことを知った。
テレビを消して。彼が使っていたコーヒーカップで彼が好きだったココアを飲んだ。私はいつもの癖で一個余分にココアを作った、誰も飲まないのに。
貴方の罪まで愛した。
だけど、その罪を許せたわけじゃない。だから私は貴方の罪を背負って生きるよ。最後まで貴方を愛してしまったから…。
コメント
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第2話、読み終えました。胸が締め付けられるようなお話でしたね…「理由を聞いたら『許せる理由』を探してしまう」という一文に、主人公の葛藤がすべて詰まっている気がしました。罪を愛すると決めた強さと、それでも最後に彼を止められなかった切なさ。ココアをひとつ余分に作る癖が残っている描写が、もう戻れない日常を静かに物語っていて苦しかったです。続きがとても気になります。