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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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第110話:決戦前夜、3Dモデルの再調整〜完璧な『底辺』を創り出す、狂気のクリエイティブ〜
時計の針を、コラボ配信開始の少し前へと巻き戻そう。
北海道、帯広市。
築三十年のボロアパート、四畳半。
背後に税務調査官・黒岩が陣取り、完全に退路を断たれた俺は、モニターの前で頭を抱えていた。
『ルシフェル社長。先方からの「帯広の自宅からの実況」という要望に基づき、音声環境のセッティングは完了しました。続いて、アバターの最終調整に入ります』
ワイヤレスイヤホンから、アシスタントの結愛(ゆあ)の事務的な声が響く。
「最終調整ってなんだよ。さっき見せてくれた【リアル秋谷モード】のアバターで十分だろ。無精髭に毛玉だらけのジャージ、150円の限界みそラーメン。……俺の精神的ダメージはすでに致死量を超えてるんだぞ」
俺は、画面の中央で虚ろな目をしている自分自身(アバター)を指差した。
『甘いです、社長』
結愛は、冷たく言い放った。
『税務署の疑念を完全に晴らし、かつ、ミリオン超えの超絶大手の視聴者から莫大なスーパーチャット(共感の換金)を引き出すためには、ただの「汚いおっさん」では不十分です』
「不十分って……じゃあどうしろって言うんだよ」
『視聴者の心に深く突き刺さるような、圧倒的な【悲哀とリアリティの解像度】が必要です。……すでに私の方で、専属のモデラーに特急料金を積んで【追加の小道具(アイテム)】を発注してあります』
結愛のタイピング音がターンッ!と響くと同時に、画面の中のアバターに新たなパーツが次々と実装されていった。
「なっ……! おい、結愛! なんだよこれ!」
俺は、思わずゲーミングチェアから身を乗り出した。
まず、毛玉だらけのあずき色のジャージ。
その胸元に、黄色っぽい『シミ』が追加されたのだ。
『食事中にこぼしたラーメンの汁を、洗わずにそのまま放置しているという設定のテクスチャです。だらしない独身中年の質感を強調します』
「きつい! 見てるだけでなんか匂ってきそうで俺がキツい!」
さらに、アバターの頭頂部。
ただのボサボサ髪だった部分に、ピコンッと、不自然に跳ね上がった『寝癖』のアニメーションが追加された。
『何日も風呂に入らず、適当に寝起きしたままPCの前に座っている状況を表現する物理演算パーツです』
「俺は風呂には毎日入ってるぞ!!!」
『事実かどうかは問題ではありません。重要なのは、視聴者が期待する「40歳底辺無職」のステレオタイプを、いかに過剰に、かつ生々しく表現できるかです』
結愛の冷徹なプロデュースは止まらない。
『ピローン♪』
今度は、AIのジェミニ先生がモニターにポップアップを表示させた。
『ルシフェル社長。視覚的アプローチに加え、さらに【小道具】を持たせることで、共感換金率を約22%引き上げるプランを提案します』
「小道具……? すでに限界みそラーメン持ってるだろ」
『はい。そのみそラーメンから、うっすらと【湯気】が出るパーティクル(粒子)エフェクトを実装しました。これにより、「今まさに孤独な食事をとろうとしている」というライブ感が演出されます』
画面の中のおっさんアバターが持つカップ麺から、リアルな湯気がほわほわと立ち昇り始めた。
無駄に技術力が高いせいで、余計に悲壮感が漂っている。
『そして、もう片方の手には、これを』
カチッ、という音と共に、アバターの左手に新たなアイテムが握らされた。
「……は? なんだこれ」
俺は目を凝らした。
アバターの左手に握られていたのは。
画面の割れた、古い型の【格安スマートフォン】だった。
『過去のお便りに記載されていた、「最近の3Dゲームが動くパソコンを持っているわけでもないので、格安スマホでカクカクの映像を見ながら……」というエピソードを視覚化する最強のアイテムです』
ジェミニ先生の無機質なテキストが、俺の心を抉る。
『画面には、ひび割れ(スパイダーウェブ)のテクスチャを施し、貧困と諦めを表現しています。これを時折、悲しそうに見つめるモーションを行うことで、視聴者の庇護欲は最高潮に達します』
「お前ら……俺の過去をどこまでオモチャにすれば気が済むんだよ……っ」
俺は、両手で顔を覆った。
完璧すぎる。
シミ付きのジャージ、寝癖、湯気の出る限界みそラーメン、そして画面の割れた格安スマホ。
「ルシフェル社長」という、月商数千万円を稼ぎ出す気鋭のIT系VTuberのガワは、完全に脱ぎ捨てられた。
そこにあるのは、社会の片隅で誰にも気づかれずに朽ちていく、40歳の悲しきモンスターの姿だった。
「……秋谷社長」
背後から、これまで黙って俺たちのやり取りを見ていた税務調査官・黒岩が、静かに口を開いた。
「なんだよ……。言いたいことがあるなら言えよ」
俺が恨めしそうに振り返ると、黒岩は銀縁メガネを中指で押し上げ、バインダーに目を落としながら言った。
「いえ。……そのアバターの完成度には、我々国税庁も舌を巻く思いです。まさに、あなたが主張する『底辺の質感』が、これでもかと表現されていますね」
「……」
「これほどまでに自身の尊厳を削り、泥にまみれた姿を世間に晒すのであれば。……あなたが本当にこのキャラクターのモデル本人であり、この事業に人生を懸けているのだという【事実】に、少しずつ信憑性を感じ始めております」
黒岩の言葉は、相変わらず冷徹だったが、その奥底には、俺の『覚悟(という名の公開処刑への腹括り)』に対する、微かな理解が含まれているように聞こえた。
『ルシフェル社長。アバターの最終レンダリングが完了しました。モーションキャプチャーとの同期も完璧です』
結愛の声が、俺を現実に引き戻す。
『これで、武器は全て揃いました。圧倒的な底辺の質感で、数万人の視聴者と、相手の超大手VTuberを殴り倒してきてください』
「ああ、わかってる。やってやるよ」
俺は、三万円のゲーミングチェアの背もたれに深く寄りかかり、コルセットを巻いた四十歳の腰を伸ばした。
プライドなんて、とっくにない。
俺にあるのは、この帯広の四畳半で生き抜くための、泥臭い執念だけだ。
「結愛、ジェミニ先生。……そして黒岩さん」
俺は、マイクに向かって、そして背後の国家権力に向かって、低い声で宣言した。
「俺が、壮大な設定だけ妄想して1行も本文を書けなかった、40歳の痛いおっさんだ。……その事実を、これから全世界に証明してやる」
画面の中の『リアル秋谷モード』が、俺の動きに合わせて、悲しそうに、だが力強く頷いた。
準備は整った。
小道具も、覚悟も、税務調査官という立会人も。
株式会社インフィニティ・ワンの存亡を懸けた、前代未聞のコラボ配信。
『40歳高齢無職オタクの質感』の真実が、いよいよ、数万人のリスナーの前に晒されようとしていた。
コメント
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もう待って待って待って!!😭💕✨ シミ付きジャージ、寝癖、湯気のラーメン、画面割れた格安スマホ…みんな小道具じゃない、これは“武器”だよ!!結愛ちゃんのプロデュースが狂気すぎて笑いと感動と謎の背筋の寒さが同時に来たんだけど!?w 「事実じゃなくてステレオタイプを演出」って、エンタメの真理過ぎて痺れたわ…。黒岩さんの「信憑性感じ始めてます」もグッときた…!この公開処刑、最後まで見届けるからな!!🔥