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結婚してから大体1年が経った。
街の人に挨拶にいって、お祝いをもらって、
挨拶をして、ど突かれたりもして、、、
これも、日頃から街へ出かけているクローバーのおかげだと思い、心底感謝している。
「ビショップさん。」クローバーが覗き込む。
「今日実はお伝えしたいことがあって、夜に予定はありますか?」ニコニコしてご機嫌な顔をしている。
「一昨日に出たばっかだし、大怪盗になってからちょっと動きにくくなってるから暇だよ。」
「そうですか!じゃあ楽しみにしててください」
夜
世界特別指名手配にされた頃からやはりマークが増えて、街も動きにくくなった。いずれこの地は捨てなければならないから、今のうちに家を探しておくのも悪くはないだろう。
考えている途中に来た松五郎と酒を交わしながらその話を少しした。
「ビショップはな。慎重すぎるんだよ。盗む時みたいに大胆にすりゃいいものをさ、人に情をかけちゃうから自分で追い詰めてんだよ」赤い顔をしながら松五郎はそう言った。
「別にアタシらの事なんか気にしないでいーのよ。ただ、師匠が同じで今も流れで一緒にいるだけなんだから。」後から来たオセロが言う。
2人はあっさりとしている人間だ。簡単に人を傷つけたりはしないけれど、やろうと思えば間髪入れず実行に移す人格。実際、師匠にもそうやって隙を入れずに行動しろと教わってきたものだから間違っていない。
それでも「ビショップ」という人間はどこかで迷ってしまうのだ。
「あっ皆さんおそろいですか?」クローバーがテケテケと部屋に入ってくる。クローバーが大切な話をすることが分かったのか、オセロも席について顔を伺っている。
「実はですね」そう言って何かを机の上に出した。机の上に出されたものに書かれていたのは
《母子手帳》
「「「、、、え?」」」
3人の声が一斉にハモり、クローバーはクスクスと笑った。1対3で真逆の反応がしばらく続く。まず声を出したのはオセロだった。
「まじで!?おめでとう!クローバー!!」
「ほら!お父さん!!」とビショップをクローバーの元へ差し出す。
「え、、ちょ、まじで?」自分には、親というものの存在すら分からなかった。物心ついたときから孤児院で仲の良かった年代もいなかったから、尚更家族というものの暖かみを知らない。
ボーッとしている父の前で小さな母はお腹をポンポンと撫でる。
「あなたと私の子です。お父さんになれますよ。」気づくと思いっきり抱きしめていた。
オセロと松五郎もいつの間にかどこかに行っていて、2人だけの空間になっていた。「ありがとう」以外、なんと言えばいいのか分からなくてひたすら一緒にいた。
しばらく経ち、クローバーのお腹もだいぶ大きくなった。悪阻が驚くほど軽く、妊娠中もいつも通り仕事に行っていた。街の人にもたくさん祝ってもらえたようだ。
その裏で自分は懸賞金をどんどんあげていた。
私生活が仕事に出るというのはこういうことかと身に染みていた。
「この指輪、ネックレスにしてもキラキラしててつい自慢してしまうんですよね。仕事先の奥様に言われました。」クローバーはそう言って妊娠してつけれなくなった指輪を指さした。
結婚したあと、怪盗とは別で必死に働いて指輪を買った。その店で1番と誇れるものを買ったからそれも当然であろう。クローバーを隣に座らせて話をする。今後のことだ。
「今が楽しい時だと思って悪いとは俺も考えたが、子を産んだら引っ越そう。この地に住んだのもだいぶ長くなった。」
最近交番の目が気になる。特に何も変わっていないはずだが、ギラッと睨みつけられたことがある。そう言うとクローバーは少し悲しそうな目をしたあと、「仕方ないですものね。私はあなたに一生着いていくと言った限りはあなたのワガママにもついていきますよ。」
実は、出産する病院関係でもあるのだ。ここは孤島だから、万が一囲まれたら病院へ行けない。専用の水上バイクもあるが、果たして産気づいた妊婦をその不安定なところへ乗せられるかも分からない。
そういった不安から、予定日2週間前までには引越しをして、今のうちに他の病院へ移る。という予定でいきたいのだ。
この時、気づいてれば良かったなと思っていたことがある。恐らくクローバーは分かっていただろう。でもきっと心配させないために1人でずっと抱えていたんだろう。未だに後悔ばかりをして、謝っても謝りきれない
《クローバーが持病を持っていたこと》
その日は大事な日だった。師匠の残した秘宝が展示室にて展示されるという話を聞いた。
その秘宝は世界的に非常に価値があるもので、怪盗ならば誰でも夢見るもの。弟子として残したものは持っておくものだろうということで松五郎とともに出かけることになった。オセロはクローバーが臨月のため、家にいて欲しいとお願いした。
8月が過ぎたばかりであったのに恐ろしく涼しくて残暑がなかった。だからクローバーはいつもの長袖ブラウスに緑色のブローチをつけ、黄緑色の上着を羽織っていた。遠くから見ても妊娠していると分かるほど大きくなっていた。
いつも「行ってくる」と手を振ると「行ってらっしゃい」と手を振り返してくれるクローバーはその日、手を振り返すのに加えて一番の笑顔をしていた。
それが生きているクローバーを見た、最後の顔だった。
少し書き方を変えました。この方が小説に近くて書くのも若干楽なので、これからこちらでいきます!
だいぶ練習用に作ったこの話もラストに近くなってきました。これからもオリジナル小説書いていきたいなぁと思うので、これの続編や、遠い未来編も書いてみたいなぁと思っています
(あくまで予定なので、自分でもわかんないです笑)