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※このお話を読むときのポイント💡
情景や、登場人物達を自分の自由に想像しながら物語を読むと、より楽しめますよ♪
第十七章:体育祭に向けて
体育祭、学校中が血気盛んになる行事
只今僕は死にそうです
体育祭とか、陰キャには無理ゲーだ
清水とも喧嘩したままだし
今回のは長引きそうなのはわかりきったことなのに
なんかもやもやする
僕から何かできるわけないのに…
ここ最近、また僕は一人になっている
たまに日比谷さんが話に来る程度だ
いつもうざったらしい程に絡んできたあいつは、他の友達といる
今では習慣になったお昼の時間もまた元通り
なんだったんだ、この期間は
心の奥底ではさみしいと感じてしまう程に、あいつらに影響されてたのか?
放課、緑葉が散り、黄色く染まった校庭の木をただ呆然と眺めていた
ふと、虚ろなこの眼に黄金色の長い髪が映り込んだ
〈ばあっ!〉
「……なんだ、日比谷さんか」
〈も〜、嬉しそうじゃないなぁっ!〉
「…べつに、」
先程まで合っていた眼を逸らしまた校庭へ眼をやる
本当は嬉しいなんて、絶対口にしてやらない
僕は頑固なんだ
〈素直じゃないなぁ〜〉
「で、どうしたの?」
〈え?何か用がなきゃ話しかけちゃだめなの?〉
僕は少し驚きつつ、こんなところも彼女のよさだと実感し、
「別にいいよ、聞いてみただけ」
無難に返答した
〈あ、用と言えば!涼とはどうなったの?〉
「どうって…」
答えは簡単だ
今の状況を見て察してほしいものだな
悪化状態だ
今までに無いほどの最悪的な環境に僕もこたえてしまう
「…見てわからない?」
僕はほんの少しの怒りを込めて言葉をプレゼントした
〈っあ〜…〉
〈なるほどねぇ…〉
今頃か、
なんて僕が呆れるのも無理はない
〈で?琉生はどうするのよ〉
「え?どうって…?」
〈だーかーら!これからどうするのってこと!〉
あー……などと、情けない声を出しながら窓際の席、一人黙り込んでしまった
〈え、まさかこのまま何もしないつもりだったの!?〉
「ま、まさか…」
「…いや、嘘です、嘘つきました」
「実はさ、どうしようか悩んでてさ…」
「こんなこと今までなかったから…」
僕は頭を掻きながら照れくさそうに言った
すると日比谷さんは自慢気に
〈私に任せてよ!〉
〈何のために君に話しかけたと思ってるんだい?〉
と、にやにや
「……君、さっき用はないって言ってたじゃないか」
〈ギクッ〉
核心を突かれたように、アニメのようなポーズを取る
つられて僕も笑い出す
「まあ、いいか。で任せろって言う割には何か策があるんだよね?」
〈え?あるわけないじゃん〉
僕はあんぐり状態
ないならなんで任せろなんて言ったんだよ…
〈ないから一緒に考えるんだよ!〉
「僕は思いつかないから君を頼ったんだよ?」
〈あー……〉
〈ま、まあ??二人で考えればなんか出てくるって!〉
無邪気なものだ
自分のことではないだろうに
ここまで必死になるのか
少し、いや、だいぶ嬉しくてたまらない
この気持ちにいつか名前をつけられたら__
なんて、気が早すぎる気もするが
2限目
今日から体育祭にむけて本格的に動き出す
正に2限目の今この瞬間は修羅場だ
自分達がやりたい種目に向けてじゃんけんという死闘を繰り広げる
まあ、僕は余ったものでいいが
一応これでも中学の頃は陸上部だったもので、そこそこ体力はある
昔は体の弱かった僕に父が勧めてくれたのだ
父は小学校の体育教師をしている
今思えば自分の子供が体育系の部活に入って欲しかっただけなのでは、と考えるようになってきてしまっている
ちなみに、母は保育士だ
だからか小さい頃はとても優しかったと思う
…今もとても優しいが
そして、妹の海音を溺愛している
これは将来面倒なことになるだろう
そんな事を考えていると皆の修羅場が終わったようだ
ガッツポーズをする男子
殴りかかろうとする女子
様々な人がいる
その中で、清水はそれを遠くから眺めていた
あれ…?清水は選ばなかったのか?
まあ、あいつは運動神経がいいから何でもできると思うが…
と清水の方を向いていると、急に清水がこちらを向いてきて眼がばちっと合ってしまった
僕は急なことに驚いてさっと、そっぽを向いてしまった
そのとき、ふと見えてしまった清水の横顔は何故か少し淋しそうに見えた
肝心な日比谷さんはというと、何を選んだのかは定かではないが、思いっきり天に向かってガッツポーズをしていた
恐らくはやりたかった種目をできるのだろう
さあ、後は何が空いているかな
黒板に並ぶ空白の文字は
100/200m走
障害物競走
借り物競争
騎馬戦
…どれも嫌なんだが
ましてや借り物競争なんかやれるものか
ちなみに、リレーは全員参加だそうだ
選択種目なんてなければいいのに……
なんて考えるのは僕だけだろうか?
うーん…、と悩みつつも僕の中では一つしかないので名前を書きに行く
決めたのは
100m走
チョークに手をかけ、100m走の欄に名前を書こうとする
が、僕より背の高い手に阻まれてしまい、書けなかった
手の主を見ようと見上げると、僕を見下ろした清水が、あ。といいたげな顔をしていた
そうか、清水も100m走に……
って、こんなに気まずいこと他にあるか??
でも僕は他にできそうなものはない
だから譲ることもできない
仕方なく、清水のあとに欄に名前を書いた
[決まったなー?]
[今日の放課後から練習が始まる]
[各自位置を確認しておいてくれ]
先生が練習中のことや、注意事項などを話し終わり、やっと授業がおわった
〈…琉生、涼とだけどいいの…?〉
〈てか、100m走なの驚きなんですけど!?〉
日比谷さんが思っていた通りのことを聞いてきた
なんて君は行動が読みやすいんだ
「別にいいよ、話すかも分からないんだ」
「僕、中学のとき陸上部だったんだ」
「一応100m走の選手、大会にも出てたよ」
「でも今は運動苦手だけどね」
〈えー!?知らなかったよ!?〉
そりゃそうだろ、話してないもん
知ってたら逆に怖い
でも今の見た目の通り、運動はそこそこ
現役の時のようにいかないのが現実
目に見えているよ
「今話したんだ、これでもう知らないとは言わせないよ?」
ずる賢く言う
〈あ、悪知恵を使ったねー?〉
〈うん!忘れないよ!〉
〈さっき涼と話すかわからないから大丈夫って言ってたけど…、涼も友達100m走にいないから本当にわかんないよ?〉
「……」
そこは盲点だった
清水は絶対友達とやると思ってた……
やばい、これ本当に気まずいやつだ
「そ、そういえば、日比谷さんは何にしたの?」
無理に話を逸らす
〈え?私はね!借り物競争にしたよ!〉
さすがだ
コミュ力おばけ
そのまま1位をもぎ取ってしまえ
なんて、優勝に興味のない僕が言うなんて、珍しいこともあるものだ
〈あ、次の授業始まる、またあとでねー!〉
「うん」
チャイムが鳴り、次へ次へと時間割が進む
気がつけば、最高に気まずい時間へ
放課後
全校生徒が事前にクラスごとにチーム分けされている、待機場所へ向かう
僕らのクラスは緑色だ
天気は曇りよりの晴れ
この後、天気が荒れる予定だ
その前に終わらせたいという先生方の思惑なのか、少し早めに始まった__
第十八章:体育祭練習
僕は先ほど決まったばかりの100m走選手達が集まる場所へ向かった
そこには屈強な男子生徒達や、いかにもじゃんけんで負けたような生徒も多々いた
その中で僕は恐らくじゃんけんで負けた組に見えるだろうな
まあ、そう見えててもいいさ
滑られてもいいさ
人を見た目でしか判断できない奴らめ、後悔するといい
100m走はほかの競技よりも単純なので、試しに走ってみることになった
見本として、去年経験した3年生徒達が行うことに
一応、僕もそのうちの一人だ
清水は去年騎馬戦だったので、見学だ
僕の他には、いかにも強そうな陸上部生徒、眼鏡をかけた弱そうに見える生徒
まあ、見た目だけではわからないが
当然、僕は敵にも思われていないのだが
運動場にいる生徒達の注目の目が集まる中、コースは内から3番目のいい感じのところだ
金だけはある公立高なので、競技用スターティングブロックがある
使うのは1年ぶりだ
狙うは2位~3位くらいかな
コースは8レーン
今回使うのは7レーンまで、つまり7人で競う
先生の声でスターティングブロックに脚をかける
[set]
バンッ_!
グラウンドに雷管の音が響く
それと同時に一斉にスターティングブロックから脚を離す
スタートだ
久しぶりに走る、3レーンの風は気持ちよく、どこまでも走っていけそうなほどだ
9月だからか、陸上部のタンクトップのユニホームは少し肌寒い
横から5レーンの陸上部生徒が迫ってくるように思う
抜かれるか
僕はさらに空を切るように走る
黒く少し伸びた髪は風になびき、手を腕から上下に振る
横目だが、日比谷さんと清水が見えた気がする
横で何か話している
こんな時でももやっとしてしまうのはいけないことだろうか?
残り50mといったところか
そこでやはり陸上部の生徒に抜かされてしまった
現役は強い
最後まで気を抜くことはなく、久しぶりの100m走は終わった
再び鳴る雷管の音で少し先を行く生徒のゴールを知らせてくれた
僕は2位だった
先程までは1位だったらしい、気が付かなかった
1位との差は、わずか2.36
後少しだった
先程戦った生徒に試し走りなのに全力だったと、後で苦笑いを受けてしまった
向こうにも意地があったのだろう
仕方あるまい、流石に陸上部でもない僕が1位になったら面目が潰れるのだろう
とても必死だったらしい
水を飲んでいると、陸上部の部長と名乗る人から、今度の試合に補欠として出てほしいと、言われてしまった
が、受け入れるはずもなく、即刻お断りした
僕には陸上は無縁に等しいほうが嬉しい
〈琉生〜!すごかったね!✨️〉
「日比谷さん、ありがとう」
〈いや〜、以外にも早かったからびっくりだったよ!〉
それはそうだろうな…、いつもの根暗な様子からは考えつかないだろう
「…清水は?」
ダメ元で聞いてみた
期待はしてなかった
〈涼なら、さっきまで見てたんだけど…、どっか行っちゃった!〉
……やはり見てくれていたのか、
見えてはいたが、はっきり言われると嬉しい
でも、一声掛けてくれてもいいじゃないか
…と、そうだ。僕らは今喧嘩していたのだった
どうも走ると忘れてしまう
〈とにかく!取り敢えずお疲れ様!〉
「ありがとう」
日比谷さんからタオルを受け取り、額の汗を拭う
[借り物競争注意事項話すよ〜!]
「あ、呼ばれてるよ」
〈本当だ!行ってくるね!〉
駆け足で向かう日比谷さんは、とても足は速そうに見えない
だがやはり見た目で判断しては駄目だ
もしかしたら速いのかも
…当日までのお楽しみだな
ふと、背後に気配を感じ、振り返る
『よぉ、さっきはお疲れさん』
「あ、ああ…」
…話が続かない
木陰の隅、二人立ちながら沈黙が続く
木々が風に揺られ音を立てる
その音だけが妙に大きく僕の耳には届いていた
な、何か話さないと…
とにかく謝るか…?
いや、その前にこの前の事情説明を乞うか…?
「あ、あの、!」 『お、おい…!』
同時だった、ここまでどう同時というほどに。
2人顔を見合わせて吹き出した
久しぶりに清水の笑顔を見た気がした
「被っちゃた、ね…w」
『そうだなw』
『先、言っていいぞ』
「あ、ありがと…」
息を整え、深呼吸
「まず、この前は言いすぎてごめん…」
「この前のことが気にかかって強く当たってしまった…」
「本当にごめん」
『ん?嫌待て、この前のこととは何だ?』
「え?だから、あの花火祭の時の……」
ここで、はっと息を呑む
あの時一緒にいたのが本当に日比谷さんなら、またややこしくなるぞ
……仕方ないか、腹をくくるしかないようだ
「…あの日、日比谷さんと一緒に居て帰らなかったか?」
「鳥居に向かっていくお前らしい人を見たんだが…」
『おいおい、俺もそのことについて聞こうと始業式の日話しに行ったんだよ』
『あの日、なんで先に帰ったんだ?』
『俺人が多くて花火上がっても行けなくてさ』
『花火の途中くらいで向かったんだけど…』
「え、?僕は途中で帰ってないよ」
「最後までいた、最後まで花火をあの丘で見てたよ」
「……」 『…………』
「じゃあなんだったんだ?」
「取り敢えず、僕が見た清水らしい人は見間違えってことだよ、な…?」
『あ、ああ…、』
『……( ゚д゚)ハッ!』
『俺、人が多すぎて、入る草むら間違えたかも…』
『……』 「…………」
「おい、…」
『わりぃ…!多分俺がミスってた…』
『…つまり、だ』
『お前が見た俺らしい人は見間違え、俺らが合わなかったのは人が多すぎてすれ違ったか…』
「…はぁ…」 『はぁ〜…』
「なんだよこれ、w」
『そうだな、w』
僕は心の中で何も思うこともしないまま、清水との話に熱中してしまった
全てを話して、スッキリしたよう
仲直りできて嬉しいような…、晴れやかな気持ちになった
『いや〜、全て勘違いだったとは…』
「そうだな、僕らおっちょこちょいすぎるだろ、w」
『うんうん…w』
また2人見合わせて吹き出してしまう
取り敢えずまた話せて良かった…、
『あ、そうだ。これが解決したら言おうと思ってたんだよ』
『琉生。そろそろ名前で読んじゃあくれねぇか?』
「え…?」
『その…、俺等親友、だろ?』
照れくさそうに、髪をかき上げながら言う
…親友、ねぇ…
今回ばかりはそう思ってもいいだろうか
最初はこんなやつなんて、と思っていた
今は、
「…やだ」
『えぇ〜!?』
「……涼」
『…!?』
「…これでいいだろ、//」
さすがに少し照れくさい
『下げて上げるなよ〜!✨️』
キラキラとした顔のまま、飛び掛ってきた
「うわぁっ、!?」
わしゃわしゃと頭を撫でられる
照れ臭さが増すが、それも涼だからか許してしまうような気がする
これが3年間の仲ということだろうか
……今はそういうことにしておいてやろう、
心のなかでも照れくさくて、苦笑いをしてしまったのは内緒だ
ポツポツと雨が降り出した
僕らはまた笑いながら大勢が向かう校舎へスタートを切った
次回第十九章:体育祭
コメント
26件
仲直りできたみたいで良かった〜!
読んでて楽しい物語作るのまっじでうまいよね、長いけど飽きなかった