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※このお話を読むときのポイント💡
情景や、登場人物達を自分の自由に想像しながら物語を読むと、より楽しめますよ♪
第十九章:体育祭#1
「はぁはぁっ…はぁ…っ…」
息が上がる声がする
後ろからは陸上部生徒や、運動部の生徒達が全力で砂を蹴る音がすぐそこまで迫っている
絶体絶命だ
クラスと、同じ緑団の声援
緊張感が高まるゴール前
なのに、何故だろう。
今この瞬間を僕は楽しんでいる__
__少し前に遡る
今日は体育祭、皆が血気盛んになる日だ
僕には暑すぎる
日陰にいたいよ
だが生憎、リレーでも重要なポジションで、100m走もアンカーになってしまった
この前の試し走りを見ていたクラスの中心生徒が僕をアンカーにと、推したらしい
別に余計なことしなくていいのに…
だが、任されたからには全力でやる
それが僕という男だ
〈お〜い!琉生ー?〉
〈早くこっちおいでよ〜!〉
日比谷さんが、暑いグラウンドの待機場所から僕を呼ぶ
「嫌だよ、暑いじゃないか」
〈えぇ~??これからもっと暑くなるんだよ!?〉
〈今のうちに慣れとかないとさ〜〉
『ほら、琉生』
涼が僕の近くに来て、背中を押す
「はいはい…」
流石に僕も日陰から出ないわけにはいかなかった
『よし!よくできました〜』
髪をわしゃわしゃと撫でてくる
前からよくしてくるけど、涼の中で流行ってんのかこれ?
「ちょっと、涼…子供扱いしないでよ」
僕はちょっと拗ねたように涼の手を払う
『えぇ〜、楽しいのに…』
「楽しくない」
〈本当に仲直りしてよかった〜!〉
〈二人が離れてる間なんか気まずかったもん!w〉
すごいど真ん中をぶち抜いてくる
それは僕らも同じだよ…w
〈てか!?琉生、涼のこと名前で呼んでたよね!?〉
〈いーな〜!私も呼んでよ!〉
「やだ」
即答
だが、今は。だ
まだまだ卒業まで期間はある
その間に言えるような覚悟を持ち合わせよう
そうじゃないと僕が赤面してしまいそうだ
〈ちぇ〜、まいっか!まだ卒業まで長いし!〉
「そうだね」
思っていたことと同じ事を言われ、少しびっくりするが、日比谷さんらしいと何処かで感じた
[ただいまから体育祭を始めます]
[選手の皆さんは待機場所についてください]
『おっと、じゃあまた後でな!』
「日比谷さん、借り物競争がんばってね、!」
〈うんっ!〉
待機場所は、クラス男女で分かれていて、同じ緑団の人達が学年ごとに横並びになっている
だから席が離れている日比谷さんとはあまり話せないのだ
そのため、まず選択競技1番目の借り物競争に出場する日比谷さんにエールを送ったのだ
プログラムはこうだ
開会式
1年学年種目〈綱引き〉
2年学年種目〈玉入れ〉
3年学年種目〈綱引き〉
1.2.3年選択種目〈借り物競争〉
〈騎馬戦〉
〈障害物競走〉
昼休憩
1.2.3年選択種目〈パン食い競争〉
〈200m走〉
〈100m走〉
1年学年リレー
2年学年リレー
3年学年リレー
閉会式
だ、そうだ
まさかの選択種目最後が100m走とか…、最悪にも程がある
それに、開会式というものは何故こんなにも長く感じるのだろうか?
校長先生の話とか、なんでもいいことはやはり長く感じるのだろうか
この時間だけは暑さを忘れる程時が遅く流れているように感じた
[ただいまから、星嵐学園体育祭を始めます!]
先生が声を張り上げる
耳がキーンとするほど、生徒達の雄叫びが続いて耳に届いた
ついに始まった
高校生活最後の体育祭が_
{最初の競技は1年学年種目の綱引きですっ!}
放送委員が関係者テントで声を上げる
この時間は僕らにとっては暇だ
……なんて、そんな訳がなかった
僕らのクラスも他クラスも、全力で応援を始めた
応援団長達が自身の団をまとめ、応援歌を歌い始める
僕はそんな派手なことできないし、声も大きくないから、貢献できない
なら、せめて見守るくらいはしよう
{三競技目は、3年学年種目の綱引きですっ!}
いやいや、最初から綱引きとか腕終わるんですけど…
はぁ…と、深くため息をつきたい
落胆していると、後ろから日比谷さんが肩を叩いてきた
〈るーい!〉
〈がんばろーね!✨️〉
…僕はもしかしたらチョロいのかもしれない
さっきまであんなに嫌だったのに、本気でやる理由ができた
本当に、僕はチョロい
結局、僕らは大して力になれなかったかもしれない
が、今この時点での順位が6クラス中3位だった
ど真ん中じゃないか…
僕的には嬉しい順位だが、この順位は上がりもし、下がりもする不安定な順位だ
だから僕らは次の選択種目で何としても上に上がりたい
{選択種目、借り物競争に出場する選手の皆さんは位置に付いてください}
先程とは違う声の主が呼びかける
心の中で日比谷さんを応援する
{よーい始めっ!!}
選手たちが群がる運動場を見つめ、日比谷さんを探す
(いた…!)
運動場の真ん中にいる日比谷さんは、お題を見るなり硬直してしまった
どうしたのかと、疑問に思っているとこちらへ向かって走ってくる
頭上にハテナが浮かび、首を傾げる
〈琉生!一緒に来てっ!〉
「…え?」
間抜けな声が出てしまった
もう僕の思考を追い越して、ただただ日比谷さんに手を引かれ、走り出す
隣を走る選手との差があと僅かの時、やっと僕も落ち着き、逆に日比谷さんの手を引く
「ほら、もっと早く走らないと追いつかれるよ?」
前だけを見て息を細く刻みながら、後ろに声をかける
背を向けていてもわかる
今絶対にやにやしてるだろ
〈わかってるよっ!〉
僕らは手を繋いだまま、ゴールテープを1番に切った
「で?お題は何だったのさ」
試合終わりに問う
〈……っ、//わ、笑わないでよ…っ!?〉
これまた何だと首を傾げてしまう
〈……そ、尊敬する人…、//〉
……???
(は??)
もう何が何だかわからない
日比谷さんが僕を尊敬??
意味がわからない
…ただ嘘ではないらしい
日比谷さんは頬を赤く染め、左手で口元を隠す
まるで必死に照れ隠しをしているようだ
ばればれなのに
かわいいな…、
(!?)
僕は今何を思った
かわいい、だと…?
日比谷さん相手に…?
「……っ〜…//」
「…そうかよ、//」
ただそのひと言しか思い浮かばなかった
でもそれでも、僕には決死のひと言だった
不覚にもかわいいと思ってしまったことに対して、尊敬していると素直に言われたこと
その全てに僕は照れてしまったのだ
本当にチョロいのかもしれない
…今は、今だけは、彼女だけにチョロくてもいいのかもしれない
そう、僕の中で答えが出た
次回第二十章:体育祭#2