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管野アリオ
875
#オリジナル
重田💋(omoda)
886
それから数日後。
「上條、社長室に行ってこい。社長から話があるそうだ」
経理部長から突然そう告げられ、優來は思わず目を瞬かせた。
「……私が、ですか?」
「ああ。例の案件についての話だそうだ」
「分かりました」
優來が席から立ち上がると周囲から小さなどよめきが起こった。
社長室に呼ばれるほどのことをした覚えはないし、響生フィナンシャルとの案件だってまだ大した話は進んでいない。
(何の話なんだろう……)
そんな不安を抱えながら急いで社長室へ向かった優來は、社長室の前で一度だけ深呼吸をする。
「失礼します」
「急に呼び出して悪かったね。まあ座ってくれ」
「はい……」
促されるまま優來ソファーに腰を下ろすと、向かいに座った社長は手元の資料に目を落としながら穏やかな口調で話を切り出した。
「例の、響生フィナンシャルとの案件なんだがね」
「はい」
「今後は補佐だけじゃなく、先方との連絡や調整を君に担当してもらいたいと思っている」
一瞬、優來は何を言われたのか理解出来なかった。
「……私が、ですか?」
「ああ」
社長は資料から顔を上げると優來をまっすぐ見つめた。
「これは先方からの申し出でもあるんだよ。君にメインの連携役を担ってもらいたいとあちらから指名があってね」
「…………」
その話を聞いた瞬間、優來の脳裏に至の顔が過ぎった。
(……もしかして、あの人が?)
出来ることなら、これ以上至とは関わりたくない。
そう思った優來は慎重に言葉を選んでいく。
「せっかくのお話なのですが……私には、少し荷が重すぎる役目だと思います。その、今回の案件に携わることですら私には荷が重いと感じているので……」
そんな優來の言葉を聞いた社長は表情を崩さぬまま静かに首を横に振った。
「君の仕事ぶりは経理部長からも聞いていてね、重要な案件だからこそ、各部署の優秀な人材を選んだつもりだ。私の目に狂いは無いと思っているよ」
「……そんな風に評価していただけることは嬉しいです……けど……」
「今回の案件が、会社にとって非常に重要なものだということは分かっているね?」
「……はい」
「新工場の建設がかかっている以上、資金調達が滞れば計画そのものに影響が出る」
社長の言葉に優來は黙って頷く。
「だからこそ、先方からの希望には可能な限り応えたいと思っているんだ」
会社にとって重要な案件であることは優來自身も十分に理解しているからこそ、そこまで言われてしまえばこれ以上断る理由を口にすることは出来なかった。
「…………分かりました」
少しの間を置いて優來は諦めたように答えた。
「お引き受けします」
「そうか。助かるよ」
こうして優來は担当することになっていた資金関連の資料確認や管理業務に加え、響生フィナンシャルとの打ち合わせの補佐、更には先方との連携をメインで担うことになった。
(出来るだけ、あの人と関わりたくなかったのに……)
皮肉にも、仕事を通じて至と接する機会はこれまで以上に増えることとなってしまったのだった。
コメント
1件
うわあ…これ、完全に“逃げ場を塞がれる”展開ですね…💦 優來さんが「これ以上関わりたくない」って思ってるのに、会社の案件として断れないのがつらい。 社長の「先方からの指名」って言い方も、至さんがわざと距離を詰めてる感じがしてゾクゾクします…。 彼女の諦めの「分かりました」に、こっちまで胸がギュッとなる。続きが気になる…!