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第一門を抜け、灰色の霧の中で息を整えた少年と小柄な悪魔。
五百人いたはずの受験者は、すでに半数以下。
戦場の幻影に呑まれ、倒れた者。恐怖に耐えきれず膝をついた者。判断を誤り、門に拒まれた者。
石畳の上には、脱落者たちが無言で横たわり、試験管の部下によって運ばれていく。
「第一門通過者、247名」
試験管の冷たい声が響く。
その数字は、冥府仕官試験が“選別”であることを改めて突きつけた。
500人中10人。
すでに半数が消えたという事実は、残った者たちの喉を締めつける。
少年は静かに息を整えた。
ここは通過点に過ぎない。
次の、知識の門ーー封印された真実の門、が二人を待っていた。
巨大な石扉には古代文字が刻まれ、試験管の声が広場に響く。
「第二門は歴史の知識と判断力を試す門だ。過去の事件の正しい結末を選び、生き残れるかが鍵だ。」
門の向こうに足を踏み入れると、壁一面に映し出されるのは、魔界・冥府・天界の歴史的事件の映像。
古代戦争、反乱、裏切り者の物語ーーそのすべてが生々しく再現されていた。
少年は深く息を吸い込み、視線を前に据える。
隣に並ぶ小柄な悪魔。第一門で睨んできた彼も、まだ表情を固くしている。
ふと少年が声をかけた。
「ところで、名前は?」
小柄な悪魔は目を細め、少し顔を背けて答える。
「…アモンティウス・カイ」
少年は微笑み、自分の名を告げた。
「アゼリオン…とだけ名乗っておこう。よろしくな。」
互いに名前を確認した瞬間、緊張の中に小さな信頼が芽生える。
まだ言葉を交わすわけではないが、互いの存在を意識し合う目線が交わった。
壁に映し出される映像が動き出す。
「古代の裏切り者は誰か? 戦争の原因は何か? 正しい判断を選べ。」
一瞬の静寂。
少年は胸の奥で、聖騎士時代に鍛えた筆記・記録能力を思い出す。
戦場の報告書を読み解き、過去の戦略や事件の記録を分析してきた知識が、今、鮮明に彼の頭の中で整理される。
「そうだ、文献に書かれていたとおり。」
少年は過去の知識を頼りに、正確な答えを選ぶ。
隣のアモンティウスも、最初は迷うが、少年の落ち着いた様子をちらりと見て、自分の直感と判断力で選択を重ねる。
壁の映像が一つずつ消え、正しい答えを選んだ証として扉が少しずつ開いていく。
最後の問いを選び終えると、映像が完全に消え、知識の門は静かに開いた。
少年はほっと息をつき、アモンティウスをちらりと見やる。
彼もまだ無言だが、どこか誇らしげな顔をしている。
互いに名前を知ったことで芽生えた信頼は、まだ小さくとも確かに二人を支えていた。
門の向こうには、さらに難解で過酷な判断の門が待つ。
だが第一門、第二門を突破した二人は、少しだけ、自分たちが冥府仕官試験を生き抜ける可能性を感じていた。