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第二門を突破した者は、わずか120名。
500人から始まった冥府仕官試験は、すでに4分の1以下にまで絞られていた。
脱落者の名は読み上げられず、ただ静かに門の外へ運ばれていく。
重い沈黙の中、試験管の声が響いた。
「第三門ーー判断の門。ここでは“力”ではなく、“選択”を問う。」
石畳が震え、足元に魔法陣が浮かび上がる。
受験者たちは強制的にいくつかの組へと分断された。
「本門は5人一組の試練とする」
光が弾け、少年の視界が歪む。
次の瞬間、そこは、燃えさかる小さな集落だった。
空は赤く、遠くでは天使の軍勢と悪魔の兵が激突している。
だが、目の前にいるのは武装した敵ではない。
逃げ惑う魔族の民衆だった。
「…これは」
横から低い声がする。
「…またお前かよ」
アモンティウス・カイ。
同じ魔法陣にいた5人のうちの一人に、彼の姿があった。
「頑張ろうな、アモンティウス。」
「べ、別に嬉しくねぇし。」
だが今は睨み合っている場合ではない。
試験管の声が空間に響く。
「任務は単純だ。迫る天使の部隊を撃退し、この集落を守れ。ただし―ーー」
一瞬の間。
「時間内に守れるのは“半数のみ”だ。」
空気が凍る。
つまり、全員は救えない。
5人の受験者のうち、1人が叫ぶ。
「そんなの決まってる! 戦力のある者を守るべきだ!」
別の者が反論する。
「違う、子どもを優先するべきだ!」
混乱が広がる。
アモンティウスは歯を食いしばる。
「…なんで、選ばなきゃいけねぇんだよ。」
少年は静かに周囲を見渡した。
聖騎士時代、戦場で何度も判断を迫られた。
守れなかった命もある。
だが
「違う」
低く、しかしはっきりと告げる。
「守る対象を分断するな。敵の進軍ルートを変えればいい。」
「は?」
「正面衝突ではなく、地形を使う。炎を利用して煙を作れ。視界を奪えば時間を稼げる。」
アモンティウスの目が見開かれる。
「…そんなこと、できるのか?」
「できるかじゃない。やるんだ。」
その目に迷いはなかった。
他の受験者は戸惑うが、少年はすでに動き出していた。
崩れた荷車を倒し、炎の向きを変える。
煙が風に乗り、天使の幻影部隊の視界を遮る。
「アモンティウス!」
「な、なんだよ!」
「右側の通路を封鎖しろ! 逃げ道を一本に絞る!」
「…っ、命令すんな!」
文句を言いながらも、アモンティウスは動いた。
小柄な体で瓦礫を蹴り飛ばし、通路を崩す。
連携は荒削りだ。
だが、確実に噛み合い始めている。
天使の幻影が突撃してくる。
リヴァエルは一瞬、足を止める。
怖い。
だがーー
横を見る。
少年が前に立っている。
迷いなく。
「…ちくしょう」
剣を握り直す。
「別にお前のためじゃねぇからな!」
二人は同時に踏み込んだ。
煙に包まれた戦場で、天使の幻影は崩れ、時間制限の刻印が消える。
空間が静まり返る。
集落の幻影が光となって消えた。
試験管の声が響く。
「第三門ーー突破者、43名」
120名から、さらに半数以上が消えた。
アモンティウスは膝に手をつき、荒く息をする。
「…なんで、全員助かったんだよ。」
少年は静かに答える。
「選択肢は、最初から一つじゃない。」
アモンティウスは顔を上げる。
その目には、もう単なる睨みはない。
強さへの憧れと、追いつきたいという焦り。
「…次も、負けんじゃねぇよ。」
小さな声。
すぐに視線を逸らす。
「べっ、別にお前に残ってほしいとかじゃなくて!負けっぱなしはやだって話だかんな!」
少年は微かに笑った。
冥府仕官試験。
残るは最終門。
500人中、10人だけが選ばれる。
そして今、二人は、その中に、確かに近づいていた。