コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「そっちこそ、ホストに……ホストにハマってたじゃないか」
「それは、あなたに振り向いてもらうための嘘。ホスト通いなんて、私の性に合わない。そんなことも気づかなかったんだね。あなたは他の女の人にしか興味がない。だから私はあなたを試した。でも、結局、何も変わらなかった」
妻の顔は、死人のように暗かった。
初めて会った時は、こんな女じゃなかったのに。
綺麗で色っぽくて……
妻をこんな風にしたのは俺なのか?
俺のせいで明美は……
「今日、一緒にここで過ごしたら、もう離婚しましょう。結婚もしてないけど……。ケジメをつけたいから、離婚届も書いてきたわ」
悲しく微笑む妻。
「そ、そんなこと急に言うなよ」
「急なんかじゃないわ。ずっと考えてたこと。それをたまたま今、実行するだけ」
「いや、でも、そんなこと、お前は……」
「だからお前じゃないんだってば! もう……いい加減にして。私のたった1度しかない人生に、もうあなたは要らないの」
明美……
今さら名前で呼んでも、もう遅いのか?
ずっと目の前にいた女を幸せにしないで、俺は……
「最後の夜だから笑って過ごしたい。あなたを好きだった自分とも今日でお別れ。新しい人生を歩む前に、楽しい思い出を頂戴」
本当に……俺はバカだ。
ずっと何をしてたんだ……
明美が……妻がホストに入れ上げてるって本気で信じてた。まさか、俺に気づいてほしくてついた嘘だったなんて……
次の朝、目が覚めたら、もう妻はいなかった。
置き手紙さえもなく……
なぜか、大きく落胆する自分がいる。
あんなに冷めていた妻への想いが、炎のように燃え上がって……
でも、もう……全てが後の祭りだ。
自業自得。
俺みたいな男は、誰にも愛してもらえない。
妻との思い出を頭の中から引きづり出し、かき集めようとしたのに、俺の頭の中には……何もなかった。空っぽの記憶に、俺は、ただ妻に懺悔するしかなかった。
何もかも失って……
これから先は、ただ虚しい人生が自分を待っているのか。
妻は、その後……
2度と戻ってくることはなかった。