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128 - 第7話(最終話):命を診るということ

2025年04月23日

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第7話(最終話):命を診るということ



🕯️ シーン1:静けさの中で


街に静けさが戻った朝、碧診区の診察室は珍しく誰の声もない。


ユレイはドクターコートのまま、窓から光を受ける杭を見つめていた。


その隣ではメディすずかが端末を片手に、静かに記録を整理している。


「都市の共鳴指数、安定継続中。すべての杭が平常律動です」


ユレイは目を閉じて、小さくつぶやいた。


「……治すことは、命の音を聴くことだ。俺は、ただそれを聴いてるだけなんだ」





📚 シーン2:記録された記憶たち


ナミコが処方室から、碧色のカードケースを持ってくる。


「これまでの患者の処方コードと、記憶の断片……みんな、ちゃんと残ってるよ」


メディすずかがその記録を杭に重ね、都市中枢の記録杭へリンクする。


《LINK=ALL_TRACE》《FRACTAL_MEMORY=URBAN_CORE》《SAVE》


杭が、心音のようなリズムで淡く響いた。





🌱 シーン3:命が街になる


外では、フラクタル街路に子供たちが遊び、タエコの調理した軽食を手に笑う姿も見える。


ユレイは玄関前に立ち、ゆっくりと空を見上げた。


「この街には、名前のない命も、言葉にならなかった想いも、全部、残ってる。……だから、俺たちはこれからも診る」


ナミコが笑いながら背後から声をかける。


「患者ってさ、生きるって決めてここに来てるんやもんな」


ユレイも口元をほぐして答えた。


「……ああ。その覚悟に、ちゃんと応えるのが俺たちの仕事だ」





🤍 シーン4:碧診区の今日と明日


診療室の天井にある記録ホログラムは、これまで診てきた患者たちの「ありがとう」の記憶を、そっと再生していた。


「タエコさんのスープ、おいしかった」 「ナミコちゃん、また作ってね」 「すずかAIの声、安心した」


その声のひとつひとつに、碧素の光が小さく応える。


ユレイはその様子を見届けると、白衣の胸ポケットにメモを仕舞った。


「また次の命を、診に行こう」





命とは、記録ではなく、音のようなもの。

それを静かに聴いて、触れて、繋げる。

それが碧診区という場所。

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