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佐久間と目黒の姿を見て、おや? と思った。
前日は珍しく2人そろってオフだったはずだから、一緒に来るのはまあ、想定内。
契約とはいえ2人は恋人だから。
だけど、いつもと何だか雰囲気が違う気がする。
誰かに話そうにも、メンバーはあまり2人のことには触れたがらない。やっぱり罪悪感があるんだろう。
(まあ、そうなるよな…)
この関係を許容してる俺達全員が共犯だ。誰が悪いわけでもない。
(後で照にでも相談してみるか)
そんなことを考えているうちに、楽屋にはメンバー全員が集まっていた。今日は集合時間よりみんな早く来たからか、スタッフさんはまだここにはいない。
視界の端でこそこそと話す佐久間と目黒。佐久間が少し赤くなって慌ててるのを目黒が宥めてる。
何やってんだ?
そう思ってると、赤くなった佐久間を背中に隠しながら目黒がみんなに呼びかけた。
「あの、まずはみんなに謝らなくちゃいけないと思って。俺の軽率な行動で迷惑をかけて、心配までさせて…本当にごめん」
そう言って深々と頭を下げる目黒に全員が戸惑う。
「あげくに佐久間くんとの契約なんて…余裕ないにも程があるし、最低なことだっていうのも分かってる。余計な心労をかけて、みんなには本当に申し訳ないって思ってる」
メンバーの誰もが、声も立てずに静かに目黒の話に耳を傾けていた。それぞれ佐久間と目黒の関係に、思うところもあっただろう。
それでも目黒がそれを分かってくれているなら、少しは救われる部分もある。
深く下げていた頭をゆっくり上げた目黒は、真剣な顔でメンバー全員を見回した。
「みんなはきっと、佐久間くんに俺を押し付けたって気持ちがあると思う。でも…俺がこんなこと言ったら駄目かもしれないけど、佐久間くんが側にいてくれて良かったって思ってる。佐久間くんで、良かったって」
少し、話の風向きが変わった気がする。
それは他の連中も感じてるみたいだった。
「佐久間くんが側にいてくれたから、気持ちも安定したなって思う。甘えてくれて、甘えさせてくれて幸せだったなって思うし、あと…」
「待って蓮! 話ずれてるから、めっちゃずれてるから!!」
「あ、そうだね。ごめん」
何か不穏な方向に話がいってるぞと思い始めた矢先に、目黒の背中に隠れたままの佐久間からストップがかかる。
良かった。何を聞かせられてるのかと思った。
「とにかく、佐久間くんと一緒に過ごさせてくれたこと…すごく感謝してる。ありがとう。それで、あの…すごく勝手なのは分かってるんだけど。一つ伝えておきたいことがあって…その…」
「どうした、目黒。思ってること、何でも言ってくれ」
いつもストレートに物を言う目黒にしては歯切れが悪い。
見兼ねた照が助け舟を出すと、決心したみたいにこくりと頷いた。
「…俺、昨日佐久間くんと婚約しました! よろしくお願いします!!」
「「「「「「「……はぁぁぁあっ?!」」」」」」」
「っ、だから! 色々すっ飛ばし過ぎなんだよお前!! いきなり婚約しましたとか言われてもみんな困るだろーが!?」
「え、でも本当のことだし。昨日プロポーズ受けてくれたでしょ?」
「う、けました、けども…っ! 報告するにしたって、まずは本当にお付き合い始めましたとかでいいだろ!?」
「え、佐久間それマジ…?」
思わず声が出てた。
目黒の背中から正面に来て説教を始めた佐久間が、ぴたりと動きを止める。ゆっくりと俺を見たその表情は、ちょっと泣きそうだ。
あの時みたいな、悲しい幸せの涙じゃなくて。本当に幸せで、でもそれが恥ずかしくて堪らない感じの、涙。
「そっ、かぁ…」
幸せ、なんだ。本当に幸せになれたんだ。
偽の愛された記憶なんかじゃなくて。目黒から本物の愛を貰って。佐久間の献身が、報われる時がやっときたんだ。
コメント
3件

偽物でも欲しかっためめから本物の愛をもらえて、、、🥺よかった😭