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最初は、ただの勘だった。
たとえば、衣装室から出てくる時間。
別々に入ったはずなのに、いつの間にか同時に出てくる。
でも、一緒にいた気配は微塵も残さずに。
(……別に、偶然か)
そう思っていたけど、気にしだすと止まらない。
いつもと同じようにリハが終わって、
みんながぞろぞろ帰り支度を始めたとき、
涼太が照にぼそっと「今夜、来る?」とだけ言った。
声のトーンも目線も、なんでもない風を装ってる。
でも翔太の耳には、何か引っかかった。
(……今夜、来る?)
なんか妙に含みがある。
でもそれだけじゃない。
目も合わせずに「……ああ」って答えた照はどこか“応じる”という感じだった。
(……あれ? なんか妙に静かじゃない?)
翔太はその日、自分でも理由が分からないまま、夜中にスマホを握ったまま寝落ちしていた。
⸻
そして数日後。
たまたま楽屋で2人きりになるタイミングがあった。
翔太が何気なく岩本の腕に視線をやると、 袖の下に、うっすらと掴まれたような痕が見えた。
それだけで、胸の奥がざわついた。
(まさか……いや、そんな……)
でもその直後、宮舘が扉を開けて入ってきて、
岩本と軽く目を合わせただけで、何も言わずにソファに座った。
言葉も視線も交わしていないのに、
そこに“通じ合ってる”何かがある。
そして翔太は思ってしまう。
(……たぶん…してる。でも付き合ってるとかじゃない、な、。)
そう気づいたとき、背中がぞくっとする。
あの完璧で静かな2人が、お互いに手を伸ばすのは、感情じゃなくて、ただの欲望の時だけ。
そんな関係、信じたくないのに、リアルすぎて目を逸らせない。
翔太はその日から、2人の間の沈黙が怖くなった。
話してないのに伝わることが多すぎる。
そして、その沈黙に、自分だけ取り残されている気がしてしまう。
⸻
(付き合ってるわけじゃない、でも関係はある——何それ、最悪にエロいじゃん……)
でも、もしそれを言葉にしてしまったら、
2人はもう絶対に、それをしなくなる気がした。
だから翔太は、誰にも言わないし、聞かない。
ただ、気づかないふりをしながら、密かにのたうち回ってる。