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「お疲れさまでした〜!!」
撮影終わり、いつも通りの向井康二。
明るく声を張りながら、隣にいた舘の肩をぽんと叩いた。
そのとき、ちらっと見えた舘の首筋。
うっすら赤い痕が、衣装の襟の奥に隠れていた。
(ん……?)
ふだんならスルーする。でも今日はちょっと違った。
さっきまで岩本と宮舘が並んでいた、ほんの短い瞬間。 2人の間に流れていた空気が、あまりにも静かで、濃かった。
言葉はなかった。
でも、目線のタイミング、呼吸の合い方、
お互いの存在に対する“距離の測り方”が、やけに正確すぎた。
(……なんか、してる?)
康二の中で、ふわっとした違和感が膨らんだ。
でも、それを確信に変えるほどの証拠はない。
むしろ、そうであってほしくないくらいの空気感だった。
だから、後日。
メンバー数人が帰った後、スタジオに向井、宮舘、岩本の3人だけが残っていたタイミングで、 あえて“何気なく”訊いた。
「てかさー、あんたら、最近仲ええよなぁ。なんかあったん?」
宮舘は、ほんの少しだけ目を細めた。
岩本は、軽く眉を上げた。
「いや、別に」
「そう?」
2人のそっけない返事。でも、その“無反応”が逆に康二の中でピースをはめた。
(あー、これや……)
思い返せば、あの夜。
撮影の後に誰もいない廊下で、宮舘が岩本に何かを囁くように話していた。
そのときの声のトーンは、仲間同士の会話というより、
“知ってる者同士だけが交わす、短くて深い連絡”のようだった。
⸻
後日、佐久間にぽつりと漏らした。
「なぁ……舘さんと照にぃって、してると思う?」
佐久間は、飲んでた水を吹きそうになったあと、真顔で返した。
「……今さら?」
「うそやん!!?」
「気づくの遅いよ?」
「まじで!? しかも付き合ってんの?そーいう感じ??」
佐久間はふっと笑って、首を振った。
「康二もまだまだだな。たぶん、気まぐれに重なるだけの、お互い都合のいい関係」
康二は絶句した。
そしてぽそっと呟いた。
「……いっちゃん怖いやつやん、それ」