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#恋愛
#長編
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琥珀色の瞳をキラキラさせて、私を愛おしそうに見える姿が、私に名を呼ばれただけで笑顔になる顔が、凹んで落ち込んでいる時に頭を撫でるとぎゅうぎゅうに抱きしめるのが──好きなのだ。
ミイラ取りがミイラになるなんて。チョロいのはどっちだ。
「……元の姿に戻って、ご飯とか作ってあげたいな」
ポツリと呟いた。
独白のつもりだったが、いつぞやの眩い輝きに包まれる。
「──っ!?」
次の瞬間、奇跡的なことは何も起きなかった。
女神様が現れるとか、魔法っぽい展開は何もなく、ただ視界に違和感があった。
ふと窓ガラスに自分の姿が映っている。十九歳の姿の私が。
「えええええ!?」
傍にいた四足獣のモフモフたちは、いつも通りまったく何にも変わらず、すり寄ってきた。警戒されるよりは、ましだけれど順応が早すぎる。
「貴方たちは、この姿の私を警戒しないの?」
「くう??」
「くぅん」
どうやら私の匂いや雰囲気、私そのものは変わっていないので、大人になっても反応は変わらなかった。可愛い。
頭を撫でたらデレデレになって、床に蕩けたチーズのようになっていた。うん、私の大人の魅力にやられたのね。
(とににかくにも調理できるぐらいに成長できたんだもの、美味しいものを作れるわ)
数日前に届いたこの世界の米と、土鍋を使って体に優しい鶏モモとふわふわ卵のお粥を作る。
出汁は川魚を焼いてから、シイタケと一緒に煮てとったモノを使用。
土鍋にバジリスクの鶏モモと、ネギネギ、ジンジャーマンドラと水を入れて、中火で熱したら、煮立つまで待って、アクを取りつつ弱火で二十分ほど経ったら、鶏モモを取り出して冷やして身を細かくほぐす。
(うん、お粥も魚とシイタケの出汁で炊いたけど美味しくできた。あとは細くほぐした鶏モモと細かく刻んだネギネギに塩と残った出し汁も加えて完成。お代わりするようなら二杯目は卵を入れてあげよう)
久しぶりの料理は、とっても楽しかった。やっぱり自分で料理を作るのは楽しい。
土鍋とスープカップと水差しを持って、ルティ様の部屋に向かった。
***
(…………今更だけれど、喜んでくれるかな?)
勢いで作ってしまったが食べてくれるか、喜んでくれるかな不安になる。そもそもこの姿の説明もしなければならない。
うぐぐっ、と唸りながらもドアをノックした。
「…………?」
くぐもった声が聞こえたので、「入りますね」と声をかけてドアを開いた。
カーテンは閉め切っていて、薄暗かった。
ルティ様の部屋。
思えば初めて部屋に入る。作業用の机にソファ、暖炉、調度品は最低限で、奥の部屋にはベッドがあった。ベッドに膨らみがあるので寝ぼけているのかもしれない。
奥に部屋にはサイドテーブルがあったので、こちらにトレーナーごと置いて、ルティ様に声をかけようとしたが──。
「……っ、ぁあ、どうして……っ、ブリ……ジット、君が──」
「──ッ」
その名前に息を呑む。
苦悶、喘ぎ、絶望と悲痛の声がルティ様の心を蝕んでいた。
(ずっとこの世界は、前世の世界と似た別世界かもしれないって思っていた。それこそ別世界の可能性が高いって……。でも……)
違ったのだ。
この世界は間違いなく、ブリジットのいた世界。そして海竜魚族の書き記した教材によれば、三百年以上後の世界となる。
私は転生して十九年しか経っていないから、こちらの世界も同じくらいの時間軸だと思っていた。けれど私の転生した世界と、この世界での時間の流れが異なっていた。
ヴィクトルが、どうしてルティと名乗っているのか分からないけれど、この人は三百年以上も生きて、ずっと悪夢に魘される日々を暮らしていた。それが贖罪として選んだ道なのだろうか。
(天空都市はどうなったの? あの主人公アルムートと同じように、天竜狐族を滅ぼした? だから地上に?)
疑問が次から次へと溢れてくる。
「すま……ない、私が……っ、──っ、あああ」
ルティ様はくぐもった声を上げつつ、布団から手を伸ばす。その手が、指先が何も掴めず崩れ落ちるのを見た瞬間、もうだめだった。
「ルティ様」
ルティの手を両手で掴んだ。酷く冷たくて、震えていた。
「──っ、この……ではなく、転生先は──幸せな世界で──」
譫言のように呟く声は掠れていて、よく聞こえなかった。この世界では魂は流転し、人族であれば転生することは良くあるし、前世の記憶を持っていることも多い。けれど私は異世界に転生した。
(もしかして元の世界に転生したのは、……トラウマのない世界を……ヴィクトルが望んだから?)
もしそうだとしたら、自分がもう出会うことはないのに、それでもこの人は私を、私の魂を安全な場所に逃がそうとしたことになる。
その結果、片翼を永久に失う苦痛と絶望になると知りながら、《片翼》の幸福を願おうとした。
「──っ」
そんな訳がない。
そう否定したくても、出会ったルティ様は奇跡が起きたかのように驚いていたし、心から喜んでいた。大事にしてくれていた。
(想定外だわ……)
私は復讐しようとルティ様の傍に居ることを望んだのに、すでに復讐しようとした内容は果たされていて、三百年以上もずっと苦しんでいた。私よりもずっと長い年月、悪夢を見続けていたのだ。
「……もう、苦しむのは十分です」
***
それからどのくらい時間が経ったのか分からなかったけれど、掴んでいた手の温もりが温かくて、私もうとうとし始めた頃──。
「んんっ……」
布団に包まったルティ様がモゾモゾと動き出した。
「ルティ様、……食欲はありますか?」
「……ん、シズクの匂いと声がする……?」
(え!? 私って臭うの??)
慌ててルティ様から離れようとしたが、ベッドの中から白銀の尻尾が伸びてきて掴まれた。モフモフで素晴らしい手触りだ。
「──ッ、見舞いに来てくれたのですか?」