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交渉に来ていた男が倒れ、双方に動揺が走る。
「ベルモンド殿!あの御仁は!」
マクベスがベルモンドに問い掛けると、彼は不敵な笑みを浮かべながら返答する。
「見ての通り、偽物さ。暗くてよく見えなかったが、一瞬だけ月明かりに照らされてな。それで気付けたんだ」
「……卑劣な真似をするものですね」
「ああ、そうだ。俺達の評判を落としつつ、どう転んでもリンドバーグの奴は生き延びるわけだ。食えない爺さんだな」
「交渉に偽者を使うなんて!誠意を感じられません!」
「所詮はマフィアってことさ。あの爺さんは確実に仕留めねぇと、後々お嬢にとって厄介な存在になる。まあ、こんな嘗めた真似してくれたんだ。殺っても文句は言われねぇさ」
「……では、予定通りに。シャーリィの望みは殲滅です。嘗めた真似をした奴等を、生かしておく理由はありません」
「はっ!戦闘用意!」
「はっ!!!」
マクベスの号令に従い、百名の戦闘部隊が正門付近に布陣する。
「奴等の守りは固い!撃ち合いになるぞ!気を引き締めよ!」
マクベスが指揮を執り、戦闘準備が整えられていく。対するリンドバーグ・ファミリーもまた応戦する構えを見せていた。
「真正面からだけじゃ苦労するなぁ」
「……その為にこの娘達が居るのです」
カテリナはアスカとリナ達猟兵に視線を向ける。
「なるほどな。俺達が正面から攻める。リナ達には別の場所からの攻撃を任せたいんだが?」
「お任せください!私達の本領をお見せします!行くわよ皆!」
「はいっ!!!」
リナを含めたエルフ十名が闇に溶け込むように散る。
「……アスカ、リナ達と一緒にとは言いません。独自に動きなさい。シャーリィが喜ぶように」
「……ん」
アスカもまたフラりと姿を消す。
次の瞬間、双方からズダダダァーンッ!っと凄まじい銃声が響き渡る。
「撃ち負けるな!日頃の訓練の成果を見せよ!」
互いに遮蔽物に潜みながらの激しい銃撃戦が始まる。リンドバーグ・ファミリーもマスケット銃ではない連射速度で数の不利を補っていた。
「大砲でも持ってくるんだったなぁ……って、シスター!?」
後方から撃ち合いを続ける友軍の遮蔽物のある最前線へ進んだカテリナは、抱えていたAK47を構える。
「シスター!?危険です!」
側に居た士官が止めるも、カテリナはAK47を構えて引き金を弾く。
すると、軽快な音と共に帝国では明らかにオーパーツと言えるほどの連射速度で銃弾が吐き出され、二階の窓を薙ぎ払う。
そこに張り付いて銃撃していたリンドバーグ・ファミリー構成員数人が倒れる姿も確認された。
マガジンを撃ち尽くすと、カテリナは素早く伏せて空のマガジンを抜き、新しいマガジンを装着した。
「……癖になりそうですね」
珍しく笑みを浮かべるカテリナに、周囲の味方がゾッとしたのは秘密である。
一方屋敷では、リンドバーグが組織の生き残りを賭けて懸命に指揮を執っていた。
「正面ばかりに気を取られてはいかんっ!常に周囲を警戒するのだ!特に外壁や裏門への警戒を怠るな!」
だが、彼の必死の指揮とは裏腹に最前線に立つ幹部達は強い焦りを覚えていた。正確で連携の取れた射撃と、なによりカテリナによる掃射が効果を発揮したのだ。
「このままじゃ突破される!もっと人を集めろ!裏門の奴等を呼んでこい!」
「ですが、ボスが裏門を警戒しろと!」
「馬鹿野郎!このままじゃ正門が抜かれるんだよ!そうしたら裏門どころの話じゃなくなる!早くしろ!」
結果、当初十人が割り当てられていた裏門の警備は僅か二人にまで減らされる。
「もう少し派手に暴れてやるか!マクベスの旦那!シスター!合図をしたら援護を頼むぞ!」
「了解した!備えよ!」
「……怪我をしないように。シャーリィが悲しみますからね」
「任せとけ」
不敵な笑みを浮かべて大剣を抜くベルモンド。彼は遮蔽物から慎重に射撃の間隔を見極めていた。
「今だ!」
「撃てーーっ!!」
次の瞬間ベルモンドは遮蔽物を飛び出して屋敷の正門を潜り、庭園を駆け抜けて母屋を目指す。
暁戦闘部隊が一斉射撃を行い、更にカテリナも掃射を開始。ベルモンドは敵味方の銃弾が飛び交う中を駆け抜け、母屋へと辿り着き。
「そーらよっと!!」
思い切り振り抜いた大剣は木製の扉を破壊、内側にあった家具などのバリケードも一刀両断する。
「マジかよ。ドルマンの旦那、大した仕事するなぁ」
その切れ味にベルモンド自身があ然となるが、それよりも衝撃を受けたのはリンドバーグ・ファミリーである。
「母屋に侵入されたぞ!」
「一階の奴等は侵入者を始末しろ!」
「二階からも応援を出せ!」
ベルモンドの排除に動くが、それは一階、二階からの銃撃が減少することを意味していた。
「前進!距離を詰めるぞ!」
それを見逃すマクベスではない。彼は速やかに前進を指示。先頭に立ち、正門から庭園内部に前進。花壇などを遮蔽物としながら暁戦闘部隊が母屋へと迫る。
「下の奴等はなにをやってる!?奴等が庭園まで入り込みやがったぞ!」
「撃ちまくれ!残りの弾を気にする必要はないからな!」
三階から激しく射撃を浴びせるが、明らかに弾幕の密度は低下していた。
「ぐはっ!?」
「撃たれたぞ!掩護射撃!負傷者を下げろ!」
対する戦闘部隊は負傷者が出ても冷静に対処。掩護射撃を行いつつ後方の医療班へと引き渡す。
医療班もレイミの指導を受け消毒と言う概念を導入。沸騰させた湯で消毒した器具や清潔な布、包帯を使用して感染症のリスクを大幅に改善することに成功した。
「指揮官先頭か。マクベスの旦那らしいが、お嬢が真似するから複雑だな」
ベルモンドは家具の残骸に身を潜め、次々と現れる構成員の銃撃を凌いでいた。
するとカテリナも母屋へと飛び込み、今まさにベルモンドを撃とうとしていた構成員達へAK47を掃射。二人を撃ち抜き、残りは慌てて遮蔽物に身を潜め、それを確認したカテリナはベルモンドの隣に飛び込み、マガジンを切り替える。
「……無茶をするなと言いませんでしたか?」
「悪い、ちょっと無茶をした。けど、これであいつらは俺達を無視できなくなった。アスカ達も仕事がやり易くなっただろうさ」
「……内部に侵入されてまで他所を気にする余裕があるとは思えませんね」
「その通り。マクベスの旦那達もじわじわと距離を詰めてる。シスターには悪いが、付き合って貰うぜ?」
「……この場に留まって注意を引き付けるのですね?」
再び銃弾が飛来してカテリナが応戦、銃撃戦が再開される。
「その通りさ。近くの奴は任せてくれ」
「がぼっ!?」
飛び掛かってきた男へ大剣を突き刺し、振り回して投げ捨てるベルモンド。
「……せいぜい気張るとしましょうか」
そして、正面での戦いが激化しているのを見届けて。
「行くわよ、皆。狙うはリンドバーグの首だけ。後は打ち捨てなさい」
「ええ」
「腕が鳴るわね、リナ」
リナ率いる猟兵のエルフ達が手薄な裏門を見て不敵な笑みを浮かべ。
「……」
アスカは無表情のまま屋敷を見下ろしていた。