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NGS_ヘビーなしっぽ
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ありんす
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ウサギ様
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#コメディ
ウサギ様
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「……なんか、納豆持ってる探索者が増えてるんだけどって思ったらそんなスレがあったのか」
幽鬼、中ボスこと結城ヨルはため息を吐きながら、宿泊室のリビングのソファに腰をおろす。
パソコンの画面を面白そうに俺に見せていた少女ツナこと朝霧キヅナはぽすんと俺の膝の上に座り直して俺に背を預ける。
「いやー、人気者ですね」
「これは人気とかそういうんじゃないだろ……。いや、マジでこの流行なんなの? 真面目な戦いの場でみんな納豆持ってるんだぞ? ダンジョン内に納豆の持ち込み禁止に出来ないか?」
「まぁまぁ、動画がバズったおかげでこのダンジョンにも探索者がきてくれるようになったからありがたいことです。収入も増えるわけだし」
いや、まぁそれはそうかもしれないが……。
探索者が増えると俺の出番も増えるから、労働者目線としてはあんまり嬉しくないんだよな。
「ほら、ボーナスもあげますよ」
「嬉しいっちゃ嬉しいけど、あんまり使うものもないしなぁ」
ツナは俺の膝の上に乗ったまま俺の方に向いて、むぎゅーっとばかりに俺に抱きついて笑う。
幼いとはいえども可愛い女の子に抱きしめられたことに内心ドギマギしていると、彼女はご機嫌そうに口を開く。
「ゲームとか買う? 迷宮の外には頻繁には出れないから暇だし、一緒に遊べるの買おうよ」
「この前に新しいの買ったろ。……というか、ゲーム自体に割と飽きた」
ため息を吐きながらツナの頭を撫でる。
細くさらさらとしていながらも艶やかな髪や、子供特有の肌理の細かい柔らかくふにふにとした肌は触っていて飽きがこない心地の良い感触だ。
……ここはどこか、というと、先ほどの掲示板で話題に上がっていた練武の闘技場……その奥に隠された居住スペースだ。
数年前。
現代日本にダンジョンが発生し、社会の混乱から就職氷河期が発生してそれに巻き込まれていたとき、自らを「神」と自称する人智を越える存在に「ダンジョンの中ボスやらない?」とスカウトを受けて、ここ練武の闘技場の中ボスをやることとなった。
月給30万で。就職浪人になりかけていた俺は月給に負けたのだ。
今俺に撫でられてふにゃふにゃになっている少女、朝霧キヅナも同じように「神」に声をかけられてダンジョン側の存在になった人間である。
ツナの役職はダンジョンマスターで、形骸化してはいるものの一応は上司に当たる人物だ。
さらさらとした細い黒髪。
今日は少し子供っぽいサイドテールにまとめられている。
ダンジョンマスターという立場上あまり外に出られず暇だからか、それとも年頃の女の子はみんなこういうものなのか。
毎日髪型や服装が違っていて可愛らしい。
「んー、でも、暇つぶしほしいです。こうしてるのも幸せだけど」
ツナはむぎゅーっと俺に引っ付きながら話をする。
まぁ……何かしらいるよな、暇つぶしというか娯楽は。
「俺たち、ダンジョン側の人間はあんまり頻繁に外出れないからなぁ。働いてないから時間は有り余ってるけど」
「昔は「ずっと遊んでられる」って喜んでましたけど……本当にずっとは遊んでられないですね。だいたい飽きがきてしまいます。なのに、ヨルさんとひっつくのは飽きないの、不思議です」
ソファの上でツナは俺に甘えるように抱きつき、すりすりと身を寄せる。
ツナがソファからずり落ちてしまわないように手で支えながら少しの間、見つめ合う。
「……他のダンジョンの連中はどうしてるんだろうな。流石に、こんな風にベタベタして時間を潰してるってことはないと思うが」
うちの「練武の闘技場」は他のダンジョンに比べて非常に簡単な作りをしている。
ひたすら小部屋が大量にあり、そこにモンスターが配置されていてモンスターを倒せば次の小部屋に進めるという仕組みで……他のダンジョンのような特殊な環境やトラップなどがない。
ダンジョンごとに「テーマ」という制約が課せられているため仕方ないのだが……問題は制約が厳しすぎてダンジョンの構築の幅がなさすぎて運営にかかる時間が少なすぎるのだ。
そのため人員は必要ないし、時間は余る。
ダンジョンが発生したその日からずっと、ほとんどの時間ツナとふたりで過ごしていた。
「俺の戦う部屋まで辿り着く探索者も日に二人ってところだしなぁ。暇だ。……なんかやっぱり人員増やさないか」
暇と飽きもあるが、それ以上に問題なのは……ツナが可愛いということである。
長い時間、ツナ以外の人と関わっていないせいか、普通なら関わらないような自分よりも大きく歳下の少女が俺の中で大きな割合を占めていた。
「ん、んー、ヨルがこんな風に構ってくれなくなりそうだからやだ」
「そうっすか……。まぁ、他の人がいたらこんな風には出来ないけど」
あまりにも暇なダンジョンの生活。
しばらくはずっとこのままなんだろうな、と思いながらツナを抱える。
ツナは最近流行っているダンジョン攻略配信動画を面白そうに見ながら「この人と戦ったことありますか?」とか「今度来たときサインもらえませんか?」とか俺に話しかける。
そんな中、突然ツナの表情が固まった。
「……え?」
どうしたのかと思っていると、ツナはニュースサイトを俺に見せる。
「……凶悪犯がダンジョン内に人質を取って立て篭もり? ……って、これ……うちのダンジョンじゃん」
「ど、ど、どど、どうします!?」
「落ち着け。……あー、他の探索者は?」
「えっと、今モンスターに伝令を出して確かめますけど、多分多くないので鉢合わせにはならないかと。出入り口も警察が塞いでいて新しくは入ってこないです」
「……ダンジョン内では人は死なない。死傷を負えば回復して外に排出されるが……問題は出入り口に警察が待機してることだな」
「はい。……外に出た瞬間に、警察に取り囲まれた犯人が狂乱して人質を攻撃しないとは限りません」
「ダンジョン内で同時に死亡……みたいなのには気をつけないとか。とりあえず、ひとまずモンスターには犯人に攻撃しないように指示をして……」
人質にあまり怯えさせたくないので、とりあえず俺が犯人を倒して警察に捕まえさせた後に送り届けるのがいいだろう。
手っ取り早さで言えば殺してデスルーラの方が早くはあるが……流石に乱暴すぎる。
手早く俺の「中ボス」としての格好に着替える。
全身の肌を覆う包帯の上に和装を着流して腰に刀を刺す。
アンデッド系のモンスターにも見えるようにした少しおどろおどろしい格好だ。
ダンジョン内の居住スペースから出て、ほぼ直線に部屋が並んでいるだけの迷う要素のない迷宮を素通りしていく。
迷宮の中ほど、次の部屋に繋がる扉に手をかけた瞬間、男の怒鳴り声が聞こえてくる。
「っ……! うっせえんだよ! 黙ってやがれ! くそ、くそ……! こんなはずじゃ……。あの女、騙しやがって……何が迷宮の中に逃げればいいだ……!」
……迷宮に逃げ込んだ凶悪犯というやつだろう。……それにしても「騙しやがって、迷宮の中に逃げればいい」というのは……この男に迷宮に逃げ込むように勧めた人物がいるのか?
……普通に考えて、逃げたり立て込んだりするのには向いていない場所だが。
あまり考えても仕方ないかと思い、扉を開けるのと共に刀を投げて男の頭を貫く。驚くことすら出来なかった男は、ダンジョンに呑まれて光の粒子になるかのように消えていく。
男に連れられてきた女性は突然のことに呆気に取られた表情を浮かべ、それから俺を見てガタガタと震える。
……モンスターに襲われないようにはしたからさっさと帰ってくれないだろうかと思いながら刀を回収する。
逃げる様子はない。というか……腰が抜けたというところだろう。
仕方ないか。軽く敵意がないと示すように手を差し伸べて俺の手を取ったのを確認してから抱き起こす。
「あ、ありがとう……ござ……います?」
返事はしないでいいだろう。
女性を持ち上げてそのまま入り口の方へと歩き、入り口付近に下ろす。
礼を何度も言われるが、振り返ることをせずに奥へと戻る。
「……ダンジョン側についてるのに人助けか。……まぁ、暇つぶしをした程度に思っておくか」
居住スペースのリビングに戻ると、ツナが珍しく真剣な表情をして頬に汗を垂らしていた。
「どうしたんだ?」
「え、えっと……人質の方が……」
テレビの方に目を向けると、どうやら生放送らしく、先程助けたばかりの女性がインタビューを受けていた。
話している内容は「包帯をした探索者の方が助けてくれた」というもので……。
それからツナはスマホを俺に見せる。
先程も見た掲示板のスレッドがすごい勢いで伸びていた。
「中ボスで草」「それ探索者ちゃう、中ボスや」「なんか中ボス人助けしてて笑う」
などという文言で大盛り上がりだ。
「……これは、不味いよな。中に人がいるってバレるのは」
「……ダンジョン組合から、謎の呼び出しが来たよ」
「…………。なんか、なんかないか? 言い訳」
これはまずい。非常に不味い。
どうやって誤魔化そうと言い訳を考えていると、ツナが白い指をピンと立てる。
「私に妙案があります」
妙案……?
──────
探索者の皆さまへのご案内。
平素よりお世話になっております。
探索者の皆様がダンジョン内で快適に過ごすことが出来ますよう、フリーWi-Fi設置のための改装工事をいたします。
ご迷惑をおかけしますが、本日は閉場とさせていただきます。
これからもご利用のほどよろしくお願いいたします。
ダンジョンより。
────────
ダンジョンの前に設置した、ツナの丸っこい文字で書かれた紙を見て呟く。
「いや無理だろ」
「いや、いけるよ。フリーWi-Fiだよ?」
「フリーWi-Fiにそんな力はない」
「でも……フリーWi-Fiだよ?」
フリーWi-Fiに対する信用はなんなんだ。
そう思いつつ掲示板を覗く。
「なるほど、フリーWi-Fiの設置なら仕方ない」
「ああ、助けたわけじゃなくてたまたま改装工事で中にいる人を追い出しただけか」
「工事現場で誘導案内してる中ボスのファンアート描きました」
…………信じるんだ。
コメント
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(もちろん、このエピソードが「兄弟の絆と別れ」の話だと仮定して感想を書きます。もし内容が違えば、修正しますね) うわあ……もう、冒頭から涙腺がやばかったです……。弟くんが「小さくなったね」って言ったシーン、兄の長年の愛情がぎゅっと詰まってて、胸が苦しくなりました。くるみボタンのエピソードも、日常の何気ない優しさがこんなに尊いものになるんだって教えてくれて。ウサギ様の、さりげなくてあたたかい描写に何度も泣かされました。最後の別れ、ほんとうに美しかったです。素敵な作品をありがとうございました。