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「次、善逸だぞ?」
うずくまっている善逸に声をかけるが、一切返事がない。
「無理無理無理無理無理ぃ!」
「おい!紋逸!さっさと立て!親分の命令だぞ!」
「やれやれ、ですね……」
善逸、どれだけ年下に引かれれば気が済むんだ。
「じゃあこれならどうですか?」
「私は極力攻撃せずに、受け身を取るだけ」
「善逸、それなら怪我の心配も無いから、大丈夫だって」
それをようやく信じてくれたのか、ゆっくりと善逸は立ち上がる。
そして、鳳来さんから木刀を一本受け取り、中央に立つ。
鳳来さんも善逸の正面に木刀を持って立つ。
「では、はじめ!」
その合図の瞬間、急におとなしくなった善逸は、目で追うのが難しいほどの速さで何度も何度も斬りかかる。
鳳来さんは、善逸の手の動きをじっと見つめながら、その攻撃を木刀で受け止め、かわしていく。
2本の木刀のぶつかり合う音が訓練場に大きく響き渡る。
「……すごいなあ善逸」
善逸は、一切の休む間もなく、技を使わずに斬りかかっている。
しかもこの速さで。
「うーん」
「そろそろ技ひとつくらい使おうかな」
不意に鳳来さんのぼやきが聞こえた。
まさか、このスピードの打合いでぼやく余裕もあるなんて。
恐ろしささえ感じてしまう。
「鳥の呼吸 陸ノ型 水鳥の飛翔!」
下から襲いかかるこの技は、避けるのが凄く難しい。
善逸は、後退してそれを避ける。
善逸は、戦うと急に雰囲気が変わる。
いつもと真逆。
冷静で強くて頼りがいのある立派な剣士と化する。
善逸は、後退してそのままの勢いでさらに後ろへと下がる。
そして、
「雷の呼吸 壱の型」
「霹靂一閃!」
その速さはもう、目で追えなかった。
ただ一本の鋭い閃が走ったように見えた。
鳳来さんは、驚いたような、どこか嬉しそうな顔をしていた。
「やめ!」
鳳来さんの大きな一声と共に、善逸は、ハッとしたように顔を上げる。
「え。おおお俺無事!?良かったあー!死んじゃうかと思ったぁ」
いつもの善逸だ。
鳳来さんは考え事をしているようで、ひと言も喋らなかった。