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「♪〜〜〜」
電車を乗り継ぎ、少しの自然が見えるところに来た
寧々は何か歌を口ずさんでいた
どこかで聴いたことがあったはずだが、忘れてしまった
「寧々、その歌、なんの曲だい」
寧々は歌うのをやめ、僕の目を見て言った
「小さい頃、類とやったショーの歌」
少し考え込んで、思い出した
確か、『HERO』だ
作詞作曲なんて当時の僕らはできなくて、誰かの歌を引用し、僕らのショーに落とし込んだ
誰にでも優しい主人公が、困っている人々を助ける
そんなありふれた、つまらない話
「フフ、懐かしいね
…あのショーの主人公なら、僕たちのことも救ってくれたかな」
「現実見なよ。…『シアワセ』の四文字なんて、なかった。いままでの人生で、思い知ったでしょ」
「…そう、だね。でも、少しでも希望が見たかったんだ」
「嘘。希望がみたいなら、ついてくるわけないでしょ」
「やっぱり、君には分かってしまうんだね」
あんな誰にでも優しい主人公なんてどこにもいない
周りと違うから批判していいと勘違いした同級生、 偽善で、表面的な、自分だけが満足する優しさを見せた教師たち
自分は何も悪くないと、誰もがきっと思っている
それはきっと、僕らも同じなのだろう