テラーノベル
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「おい待てッ!!!」
「やばっ」
僕は寧々の手を引き、走り出した
肌を焼くような日差しと、眩しすぎるほどの晴天
そして、先ほど万引きした店の店員の怒鳴り声
「はははっ!バレてしまったね」
「ほんと、もうちょっと上手くやってよ」
2人で笑い合いながら、久々の食料に喜びを分かち合う
はじめに持ってきていた食料もそこをつき、今は万引きを繰り返しなんとか繋いでいる
どうせ死ぬのだから、別にいいだろう
寧々は体力がないから、すぐに力尽きてしまった
足取りも重く、息が切れている
数日間ろくに食べ物を食べられていなかったからだろう
「寧々、走って。追いつかれてしまうよ」
「…っご、ごめ、」
顔は青ざめ、汗を流していた
疲れている、なんて状態ではない
「もしかして、熱中症…」
まずい
後ろからはまだ追っ手が来ている
「寧々っ!」
肩を揺さぶる
これじゃあまた
あの頃に戻るだけじゃないか
決めたんだ、君と死ぬと
だから
「類」
君は僕の名前を読んだ
君は顔を上げた
目が合う
君は、アメジストのような美しい瞳をしていた
ただ、まっすぐ僕をみた
「類がいままでそばにいてくれたから、ここまで来れたんだよ」
「…あぁ、」
怖かった
君の手にはナイフが握られている
それで何をする気だ
どうしてそんな、
お別れのような言葉を言うんだ
「だからね、もういいんだ
…もういいの」
追っ手がすぐ後ろまできていた
もう10秒もあれば、僕らは捕まってしまうであろう
「死ぬのは、わたし1人でいいよ」
君はナイフを首に当て、それを押し込んだ
追ってきた店員、警察も、何が起こったかわからないような、困惑の表情を浮かべていた
僕だって、何が起きたかわからなかった
分かりたくなかった
まるで映画のワンシーンのようで
感動で涙を流せたなら、どれだけ良かっただろう
ただ、冷たい液体が頬を濡らした
それは涙なんて美しいものではなくて
君の首の、
「捕えろ!!!」
僕は警察官に取り押さえられたらしい
辺りを見渡すと、店員、警察、ヤジ
周りにはたくさんの人がいた
その中に、君はいなかった
君だけがどこにもいなかった
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