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#怪異
阿炎快空
123
リユ
232
#ダークファンタジー
阿炎快空
82
阿炎快空
111
ナギは一人ひたすらに、砂塵の舞う荒野を進んだ。
そこには、信じられない程に大きな生物の化石や、本来ならそこにあるはずのないもの——旅客機やクルーズ船、遊園地のアトラクション等の残骸——が埋もれていた。
途中、獰猛な砂虫や、腹を空かせた小鬼の群れなどにも襲われたが、その都度、二人の師から叩き込まれた剣術に命を救われた。
やがてナギが辿り着いたのは、巨大な城壁にぐるりと囲まれた都市だった。
石造りの家がずらりと並んでおり、至る所に古の遺跡らしきものが残っていた。
初めて訪れる大きな都市は、ナギには新鮮だった。
通りを行き交う、奇怪な姿形をした異形の者達。
しかし、おそらくは自分の姿も、見る者が見れば奇怪なのであろう。
ナギはそんなことを思いながら、人混みの中、宿屋へと向かった。
ナギは宿屋の主人である大鼠から、気になる話を聞いた。
曰く——この都市にある神殿には、「ラジオ」と呼ばれる機械が祀られている。
それは荒野で目にしたあれこれと同じく、異界からこの世界へと流れ着いた代物らしい。
その電池も入っていない壊れたラジオは時折、神のお告げを受信するのだという。
一休みした後、ナギは神殿へと足を運んだ。
神殿には大勢の人がつめかけており、外まで続く長い行列ができていた。
どうやら皆、祭壇の上に置かれたラジオを拝んでいるらしかった。
ちょうど神殿から出てきた、瞳が昆虫のような複眼になっているお爺さんにナギは尋ねた。
「本当に、お告げなんて聴こえるんですか?」
さあてねえ、と笑いながら、老人は近くを飛んでいた蝶々を、片手でひょいっと捕まえた。
そのまま、口へ運んで美味しそうに食べ始める。
「私は長いことここに通ってるけど、残念ながら聴こえたことはないねえ。けれども道に迷っている者には、進むべき方向を教えてくれる——って話だねえ」
ナギは列の一番後ろへと並んだ。
暫くして。
ナギはようやくラジオの前まで辿り着いた。
祭壇の両脇では、魔法がかけられた動く甲冑が、重たそうな槍を構えてラジオを守っている。
ナギは、件のラジオをまじまじと見つめた。
黒く四角い小型のそれは、アンテナが中程でグニャリと折れ曲がっている。
表面には英語で、異界の有名な企業——例えば、ナギが未来で出会う守谷修などが見れば、一目で「ああ」と頷くような——の名前が記されていたが、勿論ナギにはそんなことはわからなかった。
ナギは皆の真似をして、片膝をつき、胸の前で手を組んだ。
瞳を閉じ、心の中で唱える。
——神よ、お導きください。
その時であった。
世界から、一切の音が消失した。
ぎょっとして背後を振り返ったナギだったが、驚くのはそこからが本番だった。
神殿内部にいる者達が皆、凍りついたように静止している。
それはまるで、自分以外の全ての存在の時間が止まってしまったかのような有様だった。
背後から、不意に風の音が聴こえた。
びゅうびゅうという風の音に、男のか細い呻き声が混じっている。
誰かに救いを求めるような、そんな声だ。
音声は、目の前のラジオから発信されているようだった。
ナギが戸惑っていると、やがて声は途切れ、風の音も小さくなっていき——
『Mr.CHAOSの二十四次元ラジオ〜!』
—— 突然、大音量の軽快な音楽と共に、男の陽気な声が響き渡った。
先程のか細い呻きとは正反対の、明瞭かつ低音の効いた美声であった。
声は、次の様に続けた。
はい!
という訳で、本日も始まりました、Mr.CHAOSの二十四次元ラジオ!
壊れたラジオより愛を込めて、皆さんのSAN値をゴーリゴーリと削っていくこのひと時。
お相手はお馴染み、Mr.CHAOS a.k.a.イカした神様でございます。
さてさて。
オープニングでお届けしたナンバーは2003年、趣味である登山の最中に遭難してしまった、アメリカの高校教師ヘンダーソン氏の死の直前の音声!
ネイト・ヘンダーソンで『Help me …』でした。
そんなヘンダーソン氏の様にね、今日も助けを求めしリスナー諸氏からの祈りが沢山届いておりますよー。
早速、紹介していきましょう。
こちらは、ラジオネームは特に無し——本名読み上げちゃっていいのかな?——半竜族の女の子、ナギちゃんから頂きました。
ありがとうございます。
えー、何々……
『私は、悪い魔女に家族全員を奪われてしまいました』
ワーォ、大変。
『そんな魔女をぶっ殺してやりたいのですが、一体どうすればいいでしょう?』
OK、OK。
迷えるリスナーな〝ちゃんナギ〟に、頼れる神様な〝ちゃん僕〟がお答えしちゃいましょう!
なあんつってね。
みんなが崇めてくれるから僕もこうして調子こいて『神』なんて公言しちゃってるけど、そろそろどっかから怒られそうだよね(笑)
ま、〝神〟と名のつく存在だってね、疫病神やら貧乏神、邪神に死神といろいろ居ますしね。
僕みたいなのが末席を汚してても、許してもらえるんじゃないですかね、知らんけど。
でもまあ、アレでしょ?
ちゃんナギ的にはさぁー、ぶっちゃけ、僕が本当に神様かどうかはどーでもいい感じでしょ?
重要なのは、僕に君を導く力があるのか、そこんとこ実際どーなの、っつー話よね?
まあね、その点に関しては安心してくださいよ。
オジサンこう見えてね、君が殺したくて仕方のない〝宵闇〟の魔女よりも、ずっとずーっと上位の存在ですから。
そこんとこ、一つヨロシク!
さて、と——
それじゃあそろそろ、本題に入ろうか。
ちゃんナギが魔女を殺せる確率。
これはねー……正直なところ、かなーり低い。
いやいや、わかるよ?
ちゃんナギもさ、いっぱい修行して、めちゃくちゃ強くなったよね?
それはオジサンも、よーくわかってる。
でもね。
剣の腕が立つくらいで成し遂げられるほど、魔女殺しってのは甘くないんだ。
まずは、そこをちゃんと受け入れないとね。
もう一回言うけど、可能性はかなり低い。
それはもう、限りなくゼロに近い程にね。
が、しかし——ゼロではない。
無数に分岐する未来において、たった一つだけ、ちゃんナギが魔女を殺せるルートが存在するんだよね。
そしてそして——いい?ここからが重要よ?——僕の予言を参考にすれば、君はそのたった一つのルートに辿り着けるってわけ!
オジサン、ちゃんナギみたいな可愛い女の子が大好きだからねー。
君がこれから、いつ、どこで、何をすればいいか、バッチリ教えてあげようじゃあないの!
あ、そうそう。
これからいろいろ言うけども、別にメモを取る必要はナッシングだからね。
心配しなくても、僕の言葉を君が忘れることは無い。
今後いついかなる時であろうと、一言一句、正確に思い出せるはずだ。
じゃあ、いくよ——
と、その前に!
ここらで、一曲お送りしましょう。
大昔、人魚達が大勢の船乗りを溺れ死にさせた大ヒットナンバーを、今をときめくアイドル七人組が、大胆なアレンジでカバーしました!
それでは聴いてください。
マーメイド7で『破滅への誘い 2025ver.』。
コメント
1件
おおお、めっちゃ良かった!!😭🌟 ラジオの神様・Mr.CHAOSのキャラがクセ強すぎて好き!!軽いノリでSAN値削ってくるのに、めっちゃ頼りになる感じがあるのがたまらん!! 「ちゃんナギ」呼び、可愛くて笑ったけど、その後の「魔女♡♡♡の確率は限りなくゼロに近い」って絶望のフリからの「ゼロじゃない」って希望のバランスが神すぎる…先生、天才か??😇💕 ナギの健気さと、ラジオから流れる異界の音声のミスマッチ感がたまらなくエモいよ…次、めっちゃ気になる!!続き待ってる!!🔥📻