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きみが付き合ってくれるまで

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きみが付き合ってくれるまで

8 - 第8話  一緒だなんて許可していません

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2024年01月19日

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北畑くんに意味深発言をされてから一週間が経った。



あれから私はなんとなく北畑くんを気にしている。



いつもどおり「ねーねー」と後ろの席から声をかけてきても、反応は前とは少し違って―――。




……いや、反応は前もそっけないし、大差ないか。



ただ前みたいに私への興味が尽きるのを願うだけじゃなくて、私は北畑くんの言った、「好きになれそう」の意味を探していた。




授業終わりのHR。



もうじきうちの学校は体育祭があって、今体育委員が種目や当日の分担なんかの説明をしている。



聞いているようでぼんやりしていると、後ろの席から北畑くんの声がした。



「じゃーパネル係、それ、俺やるよ!」



(へー、北畑くんパネル係やるんだ……)



パネル係は主に看板づくりだ。



当日学校で使う看板をつくったり、クラスの看板もつくったりする。



自分から手をあげるなんて積極的だなーと思っていると、背中をつつかれた。



「みどり、一緒にやろうよ」



「……えっ」



「俺と一緒に大石さんもパネル係やるから」



相変わらずの強引さにびっくりしつつも、私は焦って真後ろを向いた。



「ちょ、ちょっと、私いいって言ってない!」



「なら一緒にやろう?


それなら放課後残っても一緒に帰れるし、ね?」






(えっ、そんな、イヤだよ……!)



ムリムリと手を横に振ったけど、近くの男子がどうでもよさげに言った。



「おおー、もうそうしろよ、それなら決めるのはこれで最後だし、HR終わりじゃん。


大石、いいだろ?」



男子がそんなことを言ったせいで、みんなも「そーだねー」とか、「お似合いだからいいじゃんー!」なんて言いだした。



「いやいや、待ってよ、私……!」



「じゃー決まりねー!!」



私の否定もむなしく、黒板には “パネル係、北畑、大石” と書かれてしまう。



「じゃー今日のHRは以上ですー、礼ー!」



日直の声にみんなあっという間に教室を出てしまい、呆然としていた私も、どうにもならなんだとわかり、脱力して机に突っ伏してしまった。







あ、あ、ありえない……。



たしかに私、部活してないから放課後残れるけど、でもさ……。



「ねーねー」



心の中でぶつぶつ言っていると、後ろから北畑くんの「ねーねー」が聞こえた。



無視すると後々ややこしいけど、今は反応する元気も気力もなくてスルーする。



「みどり、怒ってる?」



無言の意思表示をすれば、「ごめんね」と弱ったような声がした。



「だれも手あげなかったし、それならと俺がやろうと思ったんだ。


それで一緒にやるならみどりがいいって思ったんだけど、でもみどりにやろうって言っても絶対「やらない」って言うだろうしさ」



「……そうだよ、いつもなら絶対やらないよ」



机に突っ伏したまま、ボソッと言う。



「だよね、そうだと思った」



北畑くんの声がいくぶんか楽しそうだ。






「でもさ、一緒にやろーよ? きっと楽しーって」



私ははぁと息をつき、後ろを向いた。



「……北畑くんそればっかりだよね。


付き合うと楽しいとか、一緒にやると楽しいとか。


なんなのー?」



「うーん、経験?


俺、女子には好かれてきたほうだから、一緒にいると楽しいっていうのは結構自信あるんだ」



「あっ、そ……」



返事に困る自慢をされて、さらに疲れてくる。



あぁ……今日はもう帰ろう。



とりあえず帰って甘いものでも食べて、リラックスしよう。



そう思って席を立つと、北畑くんも席を経った。



「でもさ、最近はちょっと違うかな。


女子にみどりみたいな反応されるのは初めてで……俺が一緒にいて楽しいんだ。だから一緒にやってほしかったんだ。


無理やり誘ったけど、みどりに一緒にいて楽しいと思ってもらえるように、俺頑張るよ」



そう言って北畑くんは私と目を合わせて笑うと、「行こっか」と廊下へ歩き出した。








私のほうは、北畑くんの背中を見て唖然とする。



え……どういうこと?



なんか今の、「本気です」って言っているようにもとれるんだけど……。



いやいや……まさかね……。



北畑くんのことだ。きっと深い意味はないに違いない。



多少混乱しつつ私も帰路につき、帰りの電車。



結局一緒の電車に乗ってしまった私は、パネル係になった時以上に気分が重くなった。



遠回りして帰ろうか、それとも家が近所だと白状しようか。



現実的に考えて、ずっと隠しているなんてムリだ。



それならもう、いつ言っても同じかな……。



最寄り駅に着き、観念した私は、家のほうへ歩きながら北畑くんに言う。







「……あのさ」



「ん?」



「私の家……なんだけど」



「あっ、そうそう!


みどりの家ってどこなの? 同じ方向だよね」



「実は……北畑くんの家のすごく近くなんだ」



「えっ、マジで!?」



驚いた北畑くんが私のことをのぞき込む。



うっ……近い……。



「は、話す前に! あんまり私に近づいたりしないで。


ここ最寄り駅なんだから、親とか近所の人とかに見られたら絶対イヤなの」



「あっそっか……。ごめん、気をつけるよ」



北畑くんは言ってすぐ身を引いた。



私は呼吸を整え、なるべくなんでもないように言う。



「い、家は、北畑くんの家のななめ前なんだ」



「……えっ。うそっ、マジ!?」



「うん。だから家の近くでは近づかないでほしい」



「ひどっ、近づかないでって、ふつう近所だから仲良くしようねとかじゃないのかよー」



「だって北畑くんはやたら接近してくるんだもん。


ほら、簡単にキスとかしてくるし、そんなところ親に見られたと思うと……」



ちくっと嫌味を言うと、北畑くんは意味を理解したらしく、肩を落とした。







「ごめん。キスをそんなにみどりがイヤがってると思わなかった。これからは気をつけるよ」



「ほんと?」



「うん。本当。


……なんていうか、女子ってキスはすれば喜ぶって思ってたんだ」



「……その認識はかなり偏ってると思うけど。


まぁしないでくれるならいいよ。お願いね」



「うん、でもさ……」



北畑くんはうちの家がある角で足を止め、私は少し先で振り返った。



「なに?」



「みどりにしたキスは、俺のことを好きになってくれたらいいなーって気持ちもあるけど、したくないやつにはしないよ」



「え?」



「俺、ほんとにみどりがいいなって思ってる。


それだけは信じてよ」

















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ぬヘヘヘヘ((((

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