フィオナと別れて、暫く経った頃。
私は、私が出会った中で最も悪魔らしく、そして最も悪魔らしくない悪魔に出会った。
彼女は、ケイラ・ヴェロニカ。
由緒正しき貴族階級の家系に生まれた異端児。
それが全て、彼女の悲劇の始まりを物語っている。
『あたしにとってね!悪魔生(じんせい)って、ゲームなんだよ!自分より強い奴を倒すゲーム!
うちの家族はね、のろいし暗いし超弱いし、みーんなとってもつまんないの!
だからね、うちを出て、強い奴をブッ倒す旅をしてるんだ!』
基本的に、悪魔の性格は家系の血に大きく左右される。
例えば貴族階級の悪魔は礼儀正しく、商人などは明るく元気。
だが、人間と同じ様に、魔界にもたまに異質な者が現れるらしい。
彼女もそのひとりだ。
そもそも、魔界は弱肉強食の世界なので、こういった発言は珍しくもない。
だが、貴族階級以上の悪魔で、戦闘好きな一族の悪魔以外は、まず口にしない言葉だろう。
だからこそ、彼女は異質だった。
目をつけられた。
彼女は、世界にとっての異物として扱われた。
誰もが彼女を見下し、目の敵にした。
それでも、彼女は強かった。
懸賞金をかけられた彼女には、ひたすら強敵が襲いかかった。
彼女はどんな相手でも一発でケリを付けてしまった。
それほどまでに、彼女は強かった。
そんな彼女は、ある日恋をした。
相手は魔関所警備局の局長。
魔関所警備局は、人間界で言うところの警視庁だ。
つまり、彼女を最も目の敵にしている悪魔に、彼女は恋をした。
これがどういうことかは、言わなくても分かるだろう。
そうして、慕い人という標を得た彼女は、魔関所警備局長という高みに辿り着くために、 来る者拒まず去る者許さずで戦い続けた。
自分が狙われているとも知らないまま。
ただ、己の恋心のためだけに戦い続けた。
それが、自分の首を絞めるとは思わないまま。
ただ無邪気に、好奇心と純白な初恋を抱いて、戦い続けた。
そして、彼女は目標に辿り着いた。
圧倒的な力による制圧で、魔関所警備局局長の元へ。
そして、想いを告げる間も無く、警備局長自らの手によって、彼女は塵と化した。
最後に、彼女は笑っていたという。
笑いながら、涙を流していたという。
彼女が、最後に遺した言葉は。
『…ありがとう。最後、一緒に、ぃれて、ょかっ…た……』
彼女の言葉が、そのまま彼女の本心だったのかは、分からない。
彼女は、自分のために、いつも虚勢を張っていたから。
それでも、彼女が流した涙は本物だったと、私は思う。
彼女が恋した警備局長は、もうとっくの昔に魔界から消えてしまった。
今頃、彼女と…ケイラとどうしているだろうか。
常識と感情の乏しい私には、理解しきれないけれど。
死後の世界なんて、私も、他の誰でも知らないけれど。
少なくとも、現世での関係よりは、近い距離で暮らせているのではないかと思う。
恋い慕う相手を夢見て笑う。
彼女は、恋するミュータント。







