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「今後も何かパーティーがあったとしても、俺と一緒にいるところは見られたくない?」
「う……」
そもそもの話題を出され、私は気まずくなる。
「……昨日も言いましたけど、今回はうちの会社主催のパーティーでしたから、他の社員に涼さんみたいな人と関わりがあるって知られるのが怖かったんです。……一緒にいた女性社員は、悪い人ではないんですが、ちょっと前までは強い野心から、高収入の彼氏がいるのに篠宮さんの事も狙おうとしていた人で……。以前に朱里と一緒に話をして、改心してくれたとは思っているんですが、涼さんを見せたらあまりに刺激物すぎて、どんな反応をするか怖くて……」
「……刺激物……。●ンパッチみたいだね」
涼さんはちょっとシュンとしつつ、私の言った言葉を反復する。
「また、懐かしい奴っすね。今はパチパチ●ニックだと思いますけど」
「……父が寝てる俺の口の中に入れてきたんだよ……」
さっきから思うけど、涼さんのお父様って何者だ?
かなり愉快な人っぽいけど……。
「……まぁ、でも言いたい事は分かったよ。俺を守ろうとしてくれたんだね? ありがとう」
「……あ、スーパーポジティブだ」
「そこは都合のいいように解釈しないと。……でも、あながち間違えていないでしょ? 恵ちゃん自身が面倒な事を回避しようとしたのもあるけど、俺を巻き込まないように気を遣ってくれた……とも言えるし」
「まぁ、そうですけど……」
私はボソッと返事をし、はぐっとお粥をすくった蓮華を口にする。
「そういえば、篠宮ホールディングスにしれっとアンド・ジンの御曹司いるよね」
「あっ……、神くんの事、ご存知ですか」
さすがだな~と思って頷いていると、涼さんはちょっと微妙な顔をして笑った。
「彼がまだ八歳ぐらいだった頃、三百円ぐらいで買った黄金の玉をそっと持たせて『五百万円する純金の玉だから大切にしてね』ってイタズラした事あったなぁ……」
それを聞いた瞬間、私は鼻からお粥を噴射しそうになった。
「どっ、……どうなったんですか!?」
笑いを堪えて先を促すと、涼さんは冷や奴を食べてから悩ましげに言った。
「輝征くん、ビビっちゃってね。半べそをかいて親御さんに相談したらしく、親御さんからうちの親、それで俺にきて、……まぁ叱られたね」
「当たり前でしょうが。……しかし八歳年上……、十六歳でその悪戯って……」
「当時の俺は、パーティー会場にお気に入りのカブトムシを入れた虫かごを下げて登場するとか、かなり尖ってたね」
「遅れた厨二病だったんじゃないですか?」
「……まぁ、……否めない。あまりにモテすぎて何もかも嫌になっていた頃でもあったから、とにかく奇抜な事をしてたんだ」
「……あ、神くんを知ってるなら、三ノ宮春日さん、知ってます?」
水を向けてみると、彼は「ああ、うんうん」と頷いた。
「この世界は広いようで狭いからね。闘魂お嬢様の事はよく知ってるよ」
「闘魂……っ」
私は横を向いてぶふっと噴き出した。
「いやぁ……、前に通っていたキックボクシングジムがあったんだけど、たまたま彼女もそこを利用していたみたいでね。物凄い勢いで自社の重役や社員の名前を叫びながら、『死ねーっ!』って殴る蹴るしてたから、怖くて泣いちゃった」
その様子が手に取るように分かるものだから、私は無言で笑い崩れた。
「それで三日月グループと三ノ宮グループ、規模的に似てるでしょ? 何かと周囲から敵対しているように思われてて、親同士は別に普通に仲良しなんだけど、初めて会った時は珍獣でも見るみたいに凝視されたなぁ……」
まぁ、ある意味珍獣ではあると思うけど。
「春日さんって社交界? みたいな場所ではどういう感じですか?」
「うーん、大人になったあとは人当たり良くやってるけどね。でもその分、仕事の話が絡むといっさいの妥協なしで『女だからって舐めんな』ってオーラがビシバシ伝わってくるね。ある意味、格好いいと思うけど。……学生時代はもうちょっと尖った感じがあったかな。『はぁ? 見た目で判断しないでくれます?』みたいな……」
「なるほど……。涼さん的に彼女はどうでした? 女性として」
「いやいや、ナシって言ったら失礼だけど、怖くて無理だったな。そりゃあ、滅多に見られない美人だし、仕事もできるし魅力的な人だと思うよ。……けど、ガッツがありすぎて俺には扱いきれないかな……」
「ふぅん……」
そんな彼女が、神くんの前でクネクネしているとは、涼さんも思うまいて。
(でも黙っとこ)
そう思った時、涼さんは「あ、そっか」と納得した。
「尊の一件で彼女が一枚噛んでたのか。……そういえば一方的に怜香さんが風磨くんの結婚相手にするって言ってたんだっけ。よくもまぁ、彼女の|為人《ひととなり》を知らないで決められたもんだね……」
呆れたように呟いた涼さんを見て、私は内心で呟く。