💛「起きろ。仕事に間に合わなくなる」
照に小突かれて、目が覚めた。
ぼんやりした頭がしだいにハッキリしてくると、昨夜のことが鮮明に蘇って来て、思わず声を上げそうになった。
照はまるで何もなかったかのように平然としている。慌てて着替えを済ませて、出る準備をした。
車では、当然のように照がハンドルを握り、それに倣って助手席に座る。
いつでも代わるよとは言ってみたが、車中の会話で昨日の件に触れられたらと思うと、できれば運転はしたくなかった。慌てず騒がず事故らず、無事に帰りたい。
💛「朝飯食えなかったし、パーキング寄るか」
照が車を停めた。
コンビニで適当にパンとかおにぎりを買って、車中でぼそぼそと食べる。無言を恐れて、何かとつまらないことを話しかけてしまう自分が悲しかった。照の反応がいちいちテンションが低いのも気になる。
💛「昨日のあれなんだけどさ」
💚「へっ」
声がワンオクターブ上がってしまった。照は難しい顔をしている。俺は照が手に持っている懐かしのチョココロネを見ながらなんとか気を紛らわせた。
💛「あれ、本気?」
💚「どれ?」
💛「俺にしない?って」
💚「わーわーわーわーわー!!!」
💛「阿部?」
💚「…っ。本気です」
俺は観念した。
💛「ふぅん(笑)」
照が口元だけ笑ってサイドブレーキを外し、ギアをドライブに入れ、車を発進させた。
……え。
それだけ?
待てど暮らせど照はそのことについて、次に車が停車するまで何も言わなかった。
💚「ありがとう、送ってくれて」
💛「いや、こちらこそありがとう。色々」
💚「色々?」
💛「そう、色々。頑張れそうだわ、俺も」
怪訝な顔をしている俺の頭を、照がポン、と撫でた。
💛「阿部のこと、可愛いから好きになりそう」
💚「ぎゃ!」
💛「はは。お前って、マジな時は案外照れるんだな」
照はそう言うと、さっと車に乗り込んで、俺の心と身体を置いてけぼりにして颯爽と去って行った。
おわり。
コメント
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用事が終わり戻ってきました笑 なんかひーくんの圧倒的攻め感がおもむろに出てて最高だった👍
続き気になるよ
えぇ〜どうなるの?