TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

 ぎこちない雰囲気になる事はあっても、基本的に暁人さんとの暮らしは楽しい。


 それに彼が疲れて帰って来た時に「お帰りなさい」と言える存在であるのが誇らしかった。


 彼が料理を気持ち良く平らげてくれるのも嬉しいし、時間がある時は一緒に映画を見たり、クラシックを聴きながらとりとめなく会話をする時間も心地いい。


 二度目に暁人さんに求められた時は、「今夜、芳乃を抱きたいんだけど、いいか?」と照れながらも窺いを立てられた。


 恥ずかしいながらもOKすると、彼は嬉しそうに笑い、それがくすぐったい。


 そして身綺麗にしたあと、暁人さんは蕩けるような愛撫をし、私に抱かれる悦びを教えてくれた。


 疲れていて応じられない時があっても不機嫌にならず、体調を気遣って「何かできる事はある?」と聞いてくれるほどだ。


 最初、彼は私が自分に自信を持てるようになるため、手伝いをしたいと言っていた。


 言葉の通り、暁人さんに大切にされて愛されるたび、『自分は無価値』と思っていた気持ちがどんどん軽くなっていくのを感じた。


 かつての私は、『自分はすべての人にとって害悪で、疫病神のような存在』と思い込んでいた。


 けれど今は毎日暁人さんに「君は最高の女性だ」と言われる事によって、冷たく硬くなっていた心が、温かく潤っていくのを感じていた。




**




 そのまま、優しい〝恋人ごっこ〟の生活が続くものと思っていた。


〝事件〟が起こったのは、八月のある日。


「今日は人と食事をするから、悪いけど一人で食事をしてもらっていいかな? 帰りが何時になるかは分からないから、俺の事は待たずに寝ていてほしい」


「分かりました」


 朝に言われた時は、「仕事で会食でもあるんだろうな」としか思っていなかった。






 私はその日、日勤Bのシフトで、昼過ぎに出勤して二十二時までの仕事だった。


 仕事を終えてホテルを出た私は、休憩時間におにぎりを一つ食べたきりだったので、お腹を空かせていた。


(暁人さんとは別行動だし、たまにラーメンでも食べようかな)


 そう思った私は、ホテルを出て線路を越えると、銀座にあるラーメン屋に向かった。


 蕎麦屋の娘なだけあり、私は麺類が大好きだ。


 お蕎麦も勿論好きだけれど、中でもラーメンとパスタが好物だ。


 暁人さんからは『毎回手料理を作るのも大変だから』と言われ、外食デーを作っておすすめの店に連れて行ってもらう事もあった。


 彼と改めてデートする時は、フレンチやイタリアン、鉄板料理のコースをいただく事もあるけれど、グルメな彼が紹介してくれたラーメンや町中華は、どれも絶品だった。


 その中でも私が最近ハマっているのは、銀座にある鶏白湯ラーメンを売りにしたラーメン屋だ。


 自転車はホテルに置かせてもらい、ウキウキして歩いていたけれど、スクランブル交差点を歩いている時に、暁人さんらしき男性を見た気がして足が止まった。


(……ん?)


 私は雑踏の向こうで見え隠れしている、背の高い人物を凝視する。


 その姿を追っている間にラーメン屋を通り過ぎていたけれど、私は気にせずフラフラと歩き続けた。


 男性が着ているスーツは、暁人さんが着ていた物によく似ている。


 スーツを纏ったシルエットも、モデルのようなスタイルの良さも同じだ。


 ――なら、隣を歩いている金髪の女性は誰?


 自問したあと、私は無意識にとある名を呟いていた。


「……グレース……」


 ――どういう関係なの?


 ――どうして腕を組んで歩いているの?


 私は呆然としたまま二人を追う。


 好きな人を尾行するなんて、普段の私なら「品のない行為」と言うだろう。


(そもそも、私は単なる〝恋人役〟で、金髪の彼女が暁人さんの特別な相手だとしても、嫉妬する権利なんてない)


 私が自分に言い聞かせるなか、二人は高級そうなバーの前で立ち止まり、中に入るか話し合っているようだった。


 その時には、遠くからでも彼が暁人さんである事をしっかり確認できていた。


 彼はスーツのポケットからスマホを出し、操作する。


(あ……っ)


 その瞬間、私は見てしまった。


 彼の左手の薬指には、指輪がある。


 私は目を見開いたまま、金髪の女性の左手を凝視する。


 暁人さんがスマホを弄っている間、彼女もバッグからスマホを出して誰かと電話し始めた。


 その時、やはり彼女の左手の薬指にも指輪が嵌まっているのが見えた。


(そんな……)


 呆然とした私は、ただ立ち尽くすしかできない。

八年執着されましたが、幸せです ~傷心のホテリエですが、イケメン御曹司と契約恋人になりました~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

43

コメント

2

ユーザー

わーん😫暁人さん😭金髪女子何者⁉️ 指輪💍もどーして?気になり過ぎるーーー💦

ユーザー

連投ありがとうございます (^人^)\(^o^)/ でも続きが気になり過ぎる〜 私は暁人さんを信じていますよ〜

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚