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こんにちは人類+αです。
新作の🇫🇮総受けでございます。地雷の方は今すぐにお逃げください。それではどうぞ
春の空気って、なんでこんなに気だるいんだろうか。
桜の花びらが舞うたびに、俺はため息をついた。
——新しい制服の首元が、少しきつい。
「フィン君、やっぱり似合ってるね。その制服。ほんと、惚れ惚れする」
そう言って笑うのは、隣の日本。
新しい制服をきっちり整えて、いつものように柔らかく微笑んでいた。
「やめろ、気持ち悪い」
「またそう言う。照れてるだけですよね?」
「照れてねぇよ」
小学校の頃から変わらないこのやり取り。
日本は常に丁寧な口調で、どんな時も穏やかに笑う。
でも——俺は知っている。
あいつの笑顔の裏側が、最近どこか冷たい事を。
入学式の会場へ向かう途中、俺は何度か視線を感じた。
女子生徒の視線。男子の視線。
あの人、かっこいいね 本当に男の人かな?
そういうひそひそ声には、もう慣れた。
顔で得してるって言われるけど、得した覚えなんて一度もない。
だって、そのせいで——変な奴らに何度も絡まれたから。
「フィン、また顔で人寄せてる」
後ろから声をかけてきたのは、俺の兄……スウェーデンだった。
俺が振り返ると、にこやかに笑ってる。
相変わらず穏やかな顔。
けど、俺の目の奥を覗き込むようなその視線が、どうにも落ち着かない。
「入学おめでとう、フィン。……これから毎日、学校でも顔を見られるのが嬉しいよ」
「スウェ兄、過保護すぎ。もう高校だぞ」
「だって、弟だもん。心配するのは当然でしょ?」
「……そういう問題かよ」
そしてもうひとりの兄、ノルウェーがその隣から顔を出す。
「フィンちゃーん! お、やっぱイケメン。モテるな、今日も!」
「うるせぇ。兄貴ら、式出るんじゃないの?」
「うん、俺ら在校生代表。ま、ちゃんと弟の晴れ舞台、見届けるさ」
ノルは屈託なく笑って、軽く俺の頭を撫でた。
あの人懐っこい笑顔を見てると、不思議と安心する。
スウェ兄とは正反対の明るさだ。
式が終わり、日本と一緒に新しい教室に入る。
クラスの視線が一斉に集まる。
日本がすぐに前へ出て、にこやかに言った。
「こちらが、私の幼馴染みでとても優秀なフィンランド君です」
「おい、勝手に紹介すんな」
笑顔を崩さない人気。
俺の肩に手を置く指先が、妙に冷たくて。
背筋が一瞬、ゾクッとした。
放課後。
昇降口で待っていたのは、案の定スウェ兄だった。
「お迎え、来たよ」
「別に迎えなんて——」
「……弟を迎えに来るのは、変かな?」
柔らかい声。でも、否定できない圧。
俺が少し黙ると、スウェ兄はふわりと微笑んで耳元に囁いた。
「フィンは、僕の大事な弟なんだから。ね?」
心臓が一瞬止まったような感覚。
その声には、弟に向ける愛情以外の何かが混ざっていた。
帰り道、日本がぽつりと呟いた。
「フィン君……お兄さんのこと、怖いですか?」
「別に、怖くはないけど」
「そうですか。なら良かったです」
そう言って笑う日本の横顔が、いつもよりほんの少しだけ、暗く見えた。
——この時の俺は、まだ知らなかった。
兄と幼馴染みの愛情が、どんな形で俺に降りかかってくるのかを。
以上です。ばりばり9時過ぎてしまって申し訳ないです。