テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#怪異
イキリ火の玉
1,443
梶が目覚めると部屋には沢村だけが残っていた。努と三人の村人は外に出ているようだ。
青い顔をして膝を抱えていた沢村は梶が目覚めたことに気づいてすぐに枕元に近寄ってきた。
「か、梶さん、大丈夫っすか?」
「ああ……クッ」
「梶さん!」
「いちいち騒ぐな」
脳が覚醒すると傷の痛みが襲ってきた。深い傷ではないが、さすがの梶でも痛みに顔が歪む。
「そ、それより、どど、どうするんすか? 誰を生け贄に選ぶんすか? あいつら、もし梶さんを選ぼうとしたら、お、俺、もう」
「落ち着けって」
「す、すみやせん」
沢村は不安でしかたなかった。梶の命令なら妖怪退治も、それに失敗したことも何も後悔していなかった。だが、梶がいなくなる。それだけは恐怖だった。
いっぽう梶は考えていた。まるで危機ではない。そして子供のころを思い出していた。
梶の生まれた家は極貧だった。物心ついた時に食べていたのは悪臭漂う野菜の屑とカビの生えたパンだった。
父親の思い出は暴力だけ。母親の思い出は父親と一緒に暴力を振るう姿。力も金もない。何もなかった。どんなに理不尽でも親に逆らって生きていけなかった。
だから生きるためにずっと考えていた。いっさい食べるものがない家。小学校の給食では、余りがあると持ち帰って非常食にして、食べ物がよく捨ててあるゴミ箱を調べて回った。
生きるために何が出来るのか、そればかり考えていた。
梶が八歳の時に母親が父親を刺した。暴力やお金のことが原因ではなく今夜抱くかどうかというくだらない理由でだ。父親は死に母親は刑務所に入った。
梶は父親の祖父に引き取られた。東北の小さな町で少しはマシな生活が始まると思っていた。しかし祖父は父親以上に暴力的で悪人だった。
まだ50代の祖父は細身だが腕力がありいつも梶に暴力をふるっていた。そして梶をボコボコに殴ったあと近所を回り因縁をつけて金をせびっていた。
哀れな梶の姿に最初は小銭を恵んでくれた住人も、半年もすると警察を呼んで追い払うようになった。すると今度は梶に万引きやスリをやらせるようになった。そして成功しようが失敗しようがあとには暴力が待っていた。
親元にいた頃はまだ小学校には行かせてもらえていたが、祖父の家に来てからは一度も行くことはなかった。学校も警察も近所の住人も悪い意味で有名だった祖父に係わろうとはせずに見て見ぬふりをされていた。
梶は祖父のいない間は本屋や図書館に通った。腕力で叶わない祖父を相手に生き残るには知識と知恵が必要だと考えたからだ。
図書館では事情を知る若い女性職員が声をかけてくれて、よく弁当を食べさせてくれた。人の少ない平日の昼間は小学生レベルの勉強も教えてくれた。
名前はカナミ。地味であまり美人とはいえなかったが肉付きがよく胸が大きかった。
地頭の良い梶はドンドン知識を吸収して、そろそろ中学生になる年齢の頃にはカナミからまともな食事と知識を得て女も知った。それでもまだ祖父からの暴力は続いた。
酷く暴力を受けた時はカナミの家に泊まり朝まで抱いた。地味だったカナミも日に日に艶っぽくなっていった。
14歳の時にあばら骨を何本か折られる暴力を受けて祖父の家を出た。そこそこ快適だったカナミとの同棲生活は一ヶ月ほどで祖父に見つけられた。意外と見つけられるのに時間がかったのだな。それが梶の素直な感想だった。
暴力をふるおうとする祖父に梶はカナミの体を差し出した。カナミも素直にそれに応じる。そうなるよう、すでに調教済みだったのだ。
梶はそのままカナミとの同棲生活を続け、カナミが祖父に抱かれている横で本やネットで勉強をしていた。
そして15歳になった頃にカナミに貢がせた百万円を持って東京に旅立った。祖父やカナミがその後どうなったかは知らない。興味もなかった。
コメント
1件
めっちゃ重い…!!😭💦 梶の過去エピソード、壮絶すぎて読んでて息できんかった。極貧、暴力、祖父の虐待、それでも生き抜くために知識と知恵をフル活用してるとこがもう梶らしいし、カナミとの関係も「生きるため」って感じがひしひし伝わってきた。あのデカい胸の描写が地味に生々しい(笑) 沢村が梶いなくなるの怖がる気持ち、この過去知るとめっちゃわかるわ…次どうなるの!?🔥