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そして、最後の発症から今日まで1年の月日が経っていた。
「敬語やめてくださいよ。」
彼のスマホから機械音が出ていた。それは、僕に向けた言葉らしかった。
「だって、久しぶりじゃないか。1年くらい過ぎてるよ?」
米田君と僕は招かれた席に座った。
一人暮らし用のリビングに数人が入るには狭いアパートで、日の光も入りにくいような薄暗い部屋だった。
今までに3回も来てるのにこれまでよりも薄暗くて一番深刻に思えた。
「僕だって、緊張してるんだよ。」
彼の表情を伺った。半分冗談で言ったつもりで、少しでも笑ってほしかったから。
「そうですか、先輩は変わってませんね。」
彼も機械のように笑顔の片隅も笑っていなかった。
彼のスマホから機械音が出ているのではなく、彼から機械音が出ているような感じだ。
やはり今までと比べるとかなり深刻な状態というのが伺えた。
「…だね。 何があったか聞いていい?」
彼は重い首を動かしてこくんと頷いた。
「柴田君はいつからその症状が?」
「2日前ですけど。…その呼び方辞めてください。いつもの呼び方がいいです。」
機械音で僕のことを攻めているような気がした。
確かにそうだ。1年経って会って、信頼したい人なのに冷たくされるなんて最悪だ。僕は何をしてるんだ。
「ごめん。さっきも仕事で、つい。」
「直してくれたらいいんです。」彼は少し悲しそうな顔をしていた。