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燃え盛る炎。見渡す限りの赤。街の人の泣き声、叫び声。炎から少しでも遠ざかろうと、人々はひたすらに走る。
だが、彼女は嬉しそうに空を見上げていた。その瞳には、炎など映っていない。眼中にないのだ。
そんな彼女を僕は横目で見る。
すると彼女は、僕の視線に気づいたのか笑いかけてくる。屈託のない、無邪気な笑みだ。実に彼女らしい。
炎が延々と続く中、ギャラリーはどんどん増えていく。
何があったのかと見にくる者、驚いたように目を見張る者、ただ気になって野次馬のように注目する者、様々だ。
だが、そんなこと全てがどうでもいい。
僕の世界には、僕と彼女しかいないのだから。
ふふふと彼女は不意に笑った。
「なんだか変な気分だね」
どうして、とはあえて聞かなかった。聞かなくてもわかる。彼女は僕が彼女とこんなことをするなんて、夢にも思わなかっただろう。
「でも、ここから新しく始まるんだよ、おもしろそうじゃない?」
からからと笑う彼女はまるで天使のようだ。
僕たちは、炎が上がっている所の中央に立つ。
すると炎は大きくなっていき、僕達を包む。黒煙がもんもんと立って、警報や注意を促す呼び鈴が鳴る。2人はその風景を気にすることもなく、火に囲まれていく。
視界が赤に染まっていき、それ意外なにもわからなくなる。わかるのは彼女の手の感触だけ。
だが、やがて手の感触もなくなっていき、全てが火という闇に包まれる。
感覚が、視覚が、匂いが、わからなくなってくる。全部全部ぐちゃぐちゃになって、死を悟った。
最後に、横にいる彼女の口が動いて、なにかを僕に伝えようとしていた。
「これで私たちーーーー。」
もうなにもわからない。なにもかもがわからない。
でも。
だけど。
一つだけわかることがある。
それは。
このテロは、僕たちが引き起こしたということだ。
これから先、僕たちはなにをし、どこに向かっていくのか。
これは、僕と彼女が出会って僕が『共犯者』になるまでの物語だ。