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人は、生まれながらにして不平等だ。
そもそも平等であるとするならば、社会的な格差や階級などは存在しないだろう。
僕はこの地球、日本に生を受けたごく普通の男子中学生である。
僕は比較的もの静かで、クラスでも必要最低限の会話しかしていない。
でも、決していじめられているからとかそういうことではない。
そもそも僕は、会話自体に意味がないと思っている。
だがあいさつは大事だと思い、僕は自分の教室に入ってみんなに聞こえやすい声量で「おはよう」と言った。 そして俯きながら自分の席へと歩く。
あいさつを返してくれる人は誰もいなかった。
教室は騒がしかった。
僕は登校するのが遅いからすでに教室にはわらわら人がいたが、そのほとんどが窓の外に注目していた。
ヒソヒソとなにかを話して、慌てている人がほとんどだ。
まあ、僕には関係のないことだ。
僕は自分の席に座って、カバンから本を取り出し、開く。
窓の空いている隙間から、そよ風に吹かれてカーテンがふわっと舞い上がった。
本のページがそよ風で数枚めくれる。めくれたページをもとに戻し、そこにしおりを差し込んで僕は一旦本を閉じた。
今日は風が強い日だな。そう思いながらふと窓のほうを見た。
「ーーえ?」
目に映る光景に、僕は目を見張った。
ボンっと建物が破壊されていた。
一瞬だった。
でも、確かに壊された。
爆破されたのだ。
誰かによって。
「これって………やばくないか……」
空いた口が塞がらないというのはこのことだ。いきなりのことすぎて理解が追いつかない。爆発の光景なんて、ドラマやアニメでしか見たことがない。
そんな有り得ないものが、目の前で起こっている。
「おーはっ!」
いきなり背中を叩かれ、背中の神経に衝撃が走る。
「………。なに」
いつもめげずに僕にウザ絡みしてくる彼は、僕の顔を見るなり、不思議そうな顔をした。
「ん?どうしたんだお前。蛇に睨まれたカエルみたいな顔して」
「唐突に後ろから来るからだよ。びっくりした…」
脅かしてくる彼を睨みつけると、彼はなんだそんなことかー、ごめんな?と全然悪く思ってなさそうに謝った。
「だっていっつもお前、オレがドーンってきてもいっつも呆れたような顔するだけじゃん。珍しいなーって思ってよー」
彼は何がおかしいのか、あはははと爆笑していた。
「それで?やっぱり教室が騒がしいのってもしかしなくてもアレだろ?」
彼は窓の外の方を見ながら僕に言ってきた。
「アレって?」
「今話題になってるじゃん。計画テロ」
「チュイッターで、しょっちゅうトレンドに上がってるぜ、ほら」
そういいチュイッターを見せてくる彼。
僕はSNSなどをあまりチェックしないため、世の中でテロが起こっているなんて知りもしなかった。 「なんか同一犯の犯行らしいぜー。こんなに爆破して、よく捕まんないよな。ここの近くでも起こるとか。怖ぇ〜。最悪だよな!オレたちにも被害出たりしたらたまったもんじゃねぇよー」
「まだ一般の人の被害は出てないってこと?」
「そうらしいけど、いつか出んだろうなー。近いうちに。犯人の目的が見えないって親父も言ってたわ」
「ふーん」
「んだよ、興味なさそうに」
彼はつーんと口を尖らせた。
「オレの親父は刑事なんだ。めっちゃかっけーんだぜ!」
彼は彼のお父さんの話を目をキラキラさせながらした。
「そうなんだ。すごいね」
まあ、僕には関係のないことだ。床に視線を外し、適当な返事をした。
「ホントお前は自分に関係ないことにぜんっぜん興味持たないよなー!もっと他人に興味を持たないとモテねぇぞ!」
他人の行動や思ってることなんて、心底どうでもいいからだ。
自分さえよければいい。それが僕のモットーだ。
他人は所詮他人。他人が自分になにかしら干渉したとしても、最終的には自分が決断しなければならない。
朝読書の始まりのチャイムが鳴り、席に戻り再び本を開いた。
題名は、『星の王子さま』。
名前だけでも誰でも一度は聞いたことがあるような、有名な作品だ。
飛行中に砂漠に不時着してしまった『僕』は、不思議な少年と出会う。
実はその少年は、遠くの小さい国の王子様だったのだ。
うん、ファンタジーな物語だな。
まだ序盤しか読んでないが、結構興味深い。
「皆さんー。朝の会を始めます。本を閉じて」
先生がガラガラと教室に入ってきた。
「えー。先ほど、近くで爆発があったのはご存じだと思います。皆さんきっと驚きましたよね。警察によると、こちらに影響はないと、安心して欲しいとのことです」
ほっとする声や、ほんとに大丈夫なのかという声も聞こえてきたが、「静かに」という先生に声でクラスが静まった。
「こほん。今日の時間割のことですがーー」
先生の話を右から左へ流しながら、窓の外を見た。
焼けた建物に、警察官や消防隊員、救急車が来ている。
窓の外をぼーっと眺めていると、朝の会がいつの間にか終わっていた。
僕は授業で先生が話していても上の空で朝のテロについて考えていた。
何故だろう。
自分には関係はないとわかっていても、気になってしまった。
帰りになって、自分の家に少し遠回りして帰ろうと思って歩いていた。
僕は自分の携帯にほぼ無意識に計画的 テロと入力した。
タンっと検索ボタンを押して読み込みを待つ。
なるべく自分の家には早く帰りたくない。
そう思いながら歩く速度を落とした。
検索すると、様々な記事が出てきた。
この計画的テロは同一犯だとかまだ捕まってないとか、彼が言っていたことも書かれていた。
「ん?これは…」
そこには犯人を知っていると証言している記事があった。
「ねえ、君。なにしてるの?」
「へ?」
急に後ろから誰かに話しかけられ、僕は自分の手に持っている携帯を慌てて隠した。