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相変わらずへルックの住民が住む街に近づくとゴミやら卵やらを投げつけてくる住民が多くいる。

今日はロュタルと一緒に来たんだが…

「なぁ、お前顔面に卵ついてるぞ」

「…取ってくれ」

「撮る?」

「そっちじゃない」

いつものことだから何も感じない。

そんなロュタルの顔面から卵を取る。

そんな時、

「やめてください!!」

という声と共に俺とロュタルは誰かに手を引かれ、先程の場所から離れた場所へ来る。

俺らの手を引いた奴はニンゲンだった。

童話の中でしか見たことの無いニンゲン…

しかもメス…

こんな可愛いものだったのか……

早く知れたら良かったな…



それからそのニンゲンは陽葵という名前であることを知り、バーを行っているとも聞いた。

もちろんへルックの住民も居たが、俺ら異形頭たちを個室の部屋に行かせるなどの配慮をしてくれたり優しい一面もあるようだ。

そして今日はそんなニンゲン…

いや、陽葵さんが俺ら異形頭の住処であるロスジューノの森に訪れる日。

楽しみで仕方が無いが、表情には出さないようにしてる。

だがロスジューノの森は迷いの森と呼ばれるほど迷いやすい。

それに住処の番人である鳥籠によって喰われることも多々ある。

だから注意の言葉を伝えるはずが、バーで飲んだカクテルの酔いとその時間が楽しくて忘れてしまった。

何も起こらないといいが…

まぁ、ローブが止めてくれるだろう……





陽葵said


今日はカメラさん達の住処にお邪魔する日。

いや言葉通りにお邪魔する訳では無いけれど。

何かお土産を持っていった方がいいと思い、一応クッキーが沢山入った瓶を6つほど持ってきた。

そういえばこの不気味な森の名前って『ロスジューノ森』っていうらしいんだって。

そんな独り言を心の中で零しながら森の入口あたりにある看板を見つめた後、暗闇に染まる道を進んでいく。

「多分こっちだよね…」

「ここ以外進めそうな道見当たらないし…」

少しの今日ふと不安を抱えて恐る恐る足を進めていく。

しばらく歩いていくと何やら信号機のようなものが見えてきた。

森の中の信号機。

いかにも罠って感じがする…

そう思いながらも近づくと信号機が急に動きだした。

その瞬間、気づいた。

これは信号機じゃないということに。

信号機だと思っていたものはどうやらカメラさん達と同じように異形頭の一種だったのだ。

「えっと…あの、カメラさんに会いたいんですけど…」

この異形頭が敵か味方か何なのかは全く分からなかったが、話しかける以外選択肢は無かった。

すると信号機の光っていたランプの場所がニコニコマークのような顔文字が浮かび上がった。

続けて『カメラのマーク』『〔道〕の文字』そして手招きするように手を動かした。

「もしかして、着いてこいってこと…?」

そう呟くように聞くと再び信号機の異形頭は親指を立てているようなグッドマークを浮かべた。

果たして信じていいのだろうか?

もしかしたらカメラさん達みたいに優しくは無いのかもしれない。

そう思いながらも

「じゃあ…案内してくれる?」

と言いながら道を進んでいく信号機の異形頭に着いていく。

ていうかこの人もカメラさん達と同じスーツだ…

異形頭ってスーツじゃないとダメとかそういうルールあるのかな…

そんなことを考えていると急に頭の上からガシャンッという大きな音と共に私は大きな鳥籠のようなものに捕まってしまった。

「え、?」

困惑の声を零しながらも『やっぱり信号機の人は敵側だったのかな…』と思ってしまう。

が、先程の信号機の異形頭は私を助けようとしているのか鳥籠をどうにかして開けようとしているような動きを見せていた。

「今日はいい獲物が手に入ったな…ニンゲン…….食ったことないな…」

そんな声が急に後ろから聞こえ、反射的に振り返る。

と、頭が鳥籠の異形頭が目の前に居た。

喉からはヒュッと息を吸う音のみ響く。

そんな時、後ろから誰かに引っ張られた。

後ろにはローブを被った人が居、鳥籠の異形頭を睨んでいるようだった。

「カメラの客人を食おうとするな」

辺りに威圧的な雰囲気が広がる。

「あのさ…俺の食事を邪魔しないでくれる?」

「あの…ちょっと距離が近…」

鳥籠の異形頭の声とほぼ同時に私がそう呟くと

「…大丈夫ですか?」

と言ってローブの異形頭は私を自身の背に隠すようにした。

先程の威圧的な声とは違い、優しい声で。

そんな時、

「やっと見つけた…陽葵さん……」

と聞き覚えのある声が聞こえたきた。

カメラさんだ。

「カメラさん、なんか疲れてません?」

見るからに息を切らして肩を上下しながら呼吸をしているように見えた。

「何でもない」

「それより…鳥籠、俺の客人を喰おうとするな」

「ちぇっ…カメラが言うなら仕方ないか…」

そう言って鳥籠さんは両手を上げて降伏のポーズを見せる。

そんな光景を私は呆然としながら見ているとローブの異形頭が何やらこちらを見つめていた。

「何ですか?」

そう問い掛けるも、顔を逸らして何も答えず無視を貫くだけだった。

「あ、そうだ…!!」

「あの、これ…あげます!!」

そう言って私はクッキー瓶を鳥籠さんに渡した。

「なんだ?これ…クッキー?」

「作ったので是非皆さんに食べて欲しいと思って…」

そう私が言ったと同時に鳥籠さんは瓶のフタを開けて1つのクッキーを口に運ぶ。

鳥籠さんが最初に口にしたのは『ジャムサンドクッキー』名前からしたら思いつかないが、見たら誰でも分かるクッキー。

いや、誰でもっていうのは違うかもしれないけど…

「…初めて」

「へ?」

ぇ?初めて?何が?

鳥籠さんが『初めて』と呟くように言った瞬間、私の頭の中はハテナだらけに染まる。

「…初めてニンゲンが作ったもん食った気がする」

「え、今まで何食べてたんですか?」

恐る恐る聞くも、その答えは聞かなければ良かったと後悔するものだった。

「へルック住民とか?」

クスッと笑いながら言うが、それも相まって背筋が凍りそうになる。

そんな時、ローブさんが鳥籠さんの持っているクッキー瓶に手を伸ばした。

が、

「これ俺のだから」

そう言って鳥籠さんはローブさんに威嚇するように鳥籠の中の牙のようなものを見せる。



その後、私はカメラさんに連れられ、『異形頭の住処』に向かっていた。

が、カメラさんの足取りが早すぎて気づけば私の目の前からはカメラさんと信号機さん、鳥籠さんの姿は無かった。

隣にはローブさんの姿のみ。

先は暗闇で恐怖心を酷く掻き立てられる。

そんな時、

「僕がいる。1人じゃないから大丈夫だよ」

とローブさんが私の手を繋ぎながら私の手を引くようにして進んでいく。

とても優しい声だった…



しばらくすると明かりのある場所に出た。

そこにはカメラさん達の姿もあった。

「陽葵さん、良かった…また迷子になっていたのかと────」

そう言いながらローブさんと私の繋いでいる手を見つめる。

カメラさんは少し黙った後、

「離せ」

と言い、ローブさんを私から引き離す。

私が少し申し訳なさそうにしていると、ローブさんは何か言いたげにこちらを見た後、そっぽ向いてしまった。

ふと森の奥に何かが見えた気がして、その方向を見ると小さな桜の竜巻に包まれたような甘美な女性が立っていた。

その女性は『ここじゃない…』と呟いた後、一瞬で姿を消した。

夢かと思い、目を擦ったが私の鼻には桜の香りが残ったままだった。

「陽葵さん?どうかしましたか?」

不思議そうにその光景を見ているとカメラさん達が心配の声色を向けてきた。

「あ、何でもないです!」

なんだか言ってはいけないような気がし、嘘をつく。




あ、そういえば…

そう思い、私はバッグからクッキー瓶を5つ取り出す。

「鳥籠さんにはさっきあげましたけど…」

そう言いながら5つのクッキー瓶を並べていく。

「異形頭の住処にやって来たニンゲンがわざわざ手作りのお土産か…」

急に後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると、そこに居たのは警官の姿をした透明人間のロュタルさんだった。

カメラさんと前に一緒に居た人。

「ロュタルさん!」

驚きと共に声も口から出てしまう。

そんな私を見たロュタルさんまでも驚いていた。

「…名前まで覚えてるとはな」

「変なニンゲン…」

そうロュタルさんが呟いたと同時にローブさんがロュタルさんの足を蹴っていた。

透明だからどこに足があるか私には見えないが。

もしかしたら異形頭さんたちには見えてるとか?

「ローブさん、暴力はダメですよ?」

そう言いながらローブさんの袖を引っ張る。

と、ローブさんは私とロュタルさんを交互に見た後、ロュタルさんから離れてどこかへ行ってしまった。

「拗ねちゃったみたいですね」

「いつもあいつはあんな感じで無愛想だからな」

「でも拗ねたって言うよりさっきのは逃げた感じが強かったと僕は思いますよ〜?」

また後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

だが、中には知らない声も。

振り返ると見覚えのある姿、ランタンさんと天球儀さん。

そして真っ白な翼を生やしたまたもや透明人間の人。

ロュタルさんの友人のような。

服も体も足も見えないからロュタルさんとは少し違う。

「陽葵さん、お久しぶりですね!!」

そう言いながら天球儀さんは嬉しそうに頭の天球儀を1周半回した。

次々と人が増えていく。

というか異形頭の人たちって普通のへルックの住民たちより背大きいんだなぁ…

そんなことを考えながらカメラさんやロュタルさん、ランタンさんやらを見る。

「陽葵って背小さいな」

ふと隣にいるカメラさんに言われる。

「今『陽葵』って…」

驚きで心の声が口に出てしまう。

「……嫌か?」

「嫌じゃないです!!全然!」

「じゃあ…これからは呼び捨てで

」「了解です…!」

なんか案外カメラさんって可愛いかも?




あ、そういえばクッキー瓶並べたままなの忘れてた。

そう思いながら先程クッキー瓶を並べた地面を見る。

が、そこにクッキー瓶の姿は無かった。

「あれ?」

そう疑問と戸惑いが混ざった声を漏らすと、鳥籠さんがクスクスと笑っている姿が目に入った。

「せっかくこんな人数いるんだしさ、『かくれんぼ』しない?」

鳥籠さんが提案してくる。

もしかしてだけどクッキー瓶が消えた理由って鳥籠さんが原因?

隠したとか…

だからかくれんぼしつつクッキー瓶見つけろってこと?

「今はそれどころじゃ───」

「やります!!『かくれんぼ』しましょう!」

ランタンさんの声に被せながら声を返す。

「そう来なくっちゃ!」

相変わらず鳥籠さんは不気味な笑みを浮かべたまま。



『かくれんぼ』の始まりの醍醐味としては『鬼決め』!そう思ったのは私だけで、気づいたら皆が私を『鬼になって欲しい』と指名していた。




「なーな、はーち、きゅーう、10!」

「もーういいーかーい?」

何年ぶりのかくれんぼだろうか。

しかも異形頭とするかくれんぼなんてそもそもしたことが無い。




全然見つからない!

心の中でそう叫ぶように呟く。

カメラさん達のことだからあまり難しいところには隠れてないと思うんだけど…

そう思いながら真っ青な空があるであろう真上を見上げた。

だが、そこにあるのは緑の木々たちの景色だけだった。

そんな時

「侵入者〜!!侵入者はっけ〜ん!」

という複数の声と共に私の真上で警報音が鳴り響いた。

驚いて辺りを見回すと、そこには小さなカメラさん…

というより監視カメラのような異形頭の子供が5人ほど木の枝に座って私の方を見ていた。

「えっと…侵入者って私のこと?」

そう問いかけるも、返事は無い。

とりあえず無視してかくれんぼを続けよう。

そう思った私はその子たちを素通りして異形頭の住民らが住むロスジューノ森の最奥の方へ進んで行った。

が、後ろから誰かに引っ張られ、進めない。

振り返ると先程まで木の枝に座っていたはずの監視カメラくんたちが私の服の裾を引っ張って涙目で見つめていた。

「ぇ、ちょ、泣かないで…!」

何か無いか。

そう思いながらポケットやらバッグやらに手を突っ込み、何か役立ちそうなものを探す。

と、クッキー瓶の残りで私のおやつとして持ってきたクッキーが入った袋を見つけた。

「これ、!あげるから!!お願い泣かないで!!」

半ば押し付けるようにしてクッキーの入った袋を渡す。

袋の中のクッキーはほとんどがステンドグラスクッキーだったが、逆にそれが役に立ったようだった。

「くっきー…?」

そう呟きながら監視カメラくんたちの1人がステンドグラスクッキーを手に取り、空に向ける。

真ん中の飴が本物のステンドグラスのように光に反射して目に刺激を与えてくる。



数分後、私はかくれんぼを忘れて監視カメラくんたちを愛でていた。

クッキーを頬張る姿、私の方を見上げる上目遣いの姿、実はカメラさんの大ファンだという子供らしい1面、その全てが愛おしかった。

が、ようやく私もかくれんぼのことを思い出す。

「ぁ、ごめん、!私かくれんぼしてる最中だった…!」

そう言い、その場を離れようとするも、またもや服を引っ張られ、止められる。

「クッキーくれたお礼!ヒント教えてあげる!!」

「ぁと…、カメラさんにも会いたいから着いて行ってもいい…?」

またもや上目遣い。

分かってやっていそうな気もするが、『了承する』という気持ちは変わらなかった。

「いいよ?一緒に行こっか!」

そう私が言い、再び森の奥へと進んでいく。

初めのうちは怖かった不気味の森のロスジューノ森。

だが今では5人の仲間が増え、怖さなど微塵も無かった。

そう調子に乗っていた時だった。

突然後ろから草音と共に誰かが近づいてくる音がした。

監視カメラくんたちも怖いのか、私の後ろに身を縮めて隠れている。

が、その正体はローブさんだった。

「ローブさん…?どうしてここに?」

「…遅かったから」

「え?」

遅かった?

もしかして既にかくれんぼは終わっちゃったってこと?

あまりにも私が1人すらも探せない状態だったから…?

「また、迷子になってるのかと思った」

あ、そっちね…

そう思ったと同時にローブさんは私の手を掴み、森の奥へと足を進めていく。

監視カメラくんたちは拗ねながらローブさんに登ったり蹴ったりしていた。



「最初のヒントはね〜『住処の中で1番高い木の幹の中』!」

「1番高い木…?」

監視カメラくんたちの言葉を繰り返し呟き、辺りを見回す。

だが木々はどれもほぼ同じ高さで、” 1番高い “ っていうのは見当たらなかった。

「…ローブさん、何か知ってる情報とかありますか?」

そう聞いてみるも、ローブさんは私の方を向かないでどこか違う方を向いていた。

「ローブさん…?」

「何かありました──」

「ローブでいい」

「え?」

何かあったのかと思い、不安に駆られながら質問をした。

が、ローブさんの言葉で遮られる。

それに急になんのことだか…

もしかして…

「呼び名のことですか?」

心の声がだだ漏れのまま聞いてみる。

と、ローブさんは小さく頷いた。

呼び名…

でも明らかにローブさんって私の年上……

そんなことを考えながらローブさんの方を見る。

「…それと、敬語も外して」

「いや、それは…」

「無理…です……」

敬語も外して、しかも『ローブ』呼び?ってことは『ローブ、〜〜して』ってことでしょ?

いや普通にダメでしょ…

なんか命令してるみたいになっちゃうし。

「…なんで無理?」

「じゃあせめて呼び名変えて」

「カメラたちと同じ感じの呼び方は嫌」

そう言いながらローブさんは私の方にどんどん近づいてくる。

気づけば先程までわちゃわちゃと遊んでいた監視カメラくんたちも居なくなっている。

そう。

完全にローブさんと2人きり。

「…ローブさんってロュタルさんみたいに名前ないんですか?」

あるわけない。

だって聞いたことない。

きっとカメラさんと同じで無いんだ。

そう心の中で確定しつつも、とりあえず聞いておいて損は無いだろうと思ってしまった。

「…………」

が、損をした気分だ。

気まずい空気が流れていく。

ローブさんは黙ったままで何も言わない。

ローブさんの被っている顔部分は真っ暗闇でどんな表情をしているとかは分からない。

カメラさんはたまにシャッターをきる時があるが…

ローブさんはなんか『無』って感じだし。

不思議くんって感じ。

「…… フュールトリェ」

「へ…?」

「俺の名前」

ぇ?


名前あるの?!

心で声を上げる。

「フュールトリェって、呼んでみて…?」

少し首を傾げながら言ってくる。

そんな動作が私の心を沼底へと引っ張っていく。

慌てて自身を引き上げ、落ち着こうと深呼吸をする。

「…あだ名でもいいですか」

「あだ名?例えば?」

「……フュルトとか」

「…もう1回言って?」

「フュルト」

私が再度そう言うと少し嬉しげな雰囲気が漂ってきた。

顔が見えないから微笑んでるのか否かってことは分からないけど、多分微笑んでると思う。

「…かくれんぼ再開するか」

「みんな待ってるだろうし」

「そうですね…!」


少し気まずい空気が流れ続けながら私とローブさ──…

いや、フュルトはカメラさんたち探しを再開した。

歩いてる途中で木々の上から監視カメラくんたちが降ってきたりもした。




「…ここが1番高い木?」

フュルトに案内されて着いた場所は雲も突き抜けて木のてっぺんが見えないほど背の高い大樹だった。

「そうだ」

「この木の幹…」

そう呟きながら木を見るようにして見上げる。

「無理じゃないですか?」

そんな心の声をだだ漏れにすると

「…俺もそう思う」

と返されてしまう。

いや『無理じゃない』『大丈夫』って言ってよ。

それじゃあ本当に無理って言ってるのと同じじゃん。

そうフュルトの言葉に文句をつける。

そんな時、

「カメラさん〜!!そこずるいって陽葵が言ってるよ〜?」

「ずるい大人〜!!」

と足元にいた監視カメラくんたちが叫ぶようにしてそう言う。

すると

「…本当に陽葵がそう言ったのか?」

という声と共にカメラさんの姿が背の高い大樹の上から降ってきた。

「ぇ、」

そう。

降ってきた場所には私が居た。

そんな戸惑いと驚きが混ざった声を零したと同時に私はまたもやフュルトに助けられた。

「ぁ、ありがとうございますフュ──」

感謝の言葉と共にあだ名の『フュルト』の名を言おうとしたと同時に、フュルトの手が私の口を塞いで続きの言葉を喋らせないようにしてきた。

「2人の時だけでお願いします」

耳元でそんなことを言われ、声を出せない私はただ何度も繰り返し頷くことしか出来なかった。

そんな光景をカメラさんは不思議そうに、だが不機嫌が混ざった眼差しを向けて、こちらを見つめていた。

「こんな遅さで探してたらキリがない」

そう言いながらカメラさんは監視カメラくんたちを抱き上げる。

監視カメラくんたちはとても喜んでおり、カメラさんに抱き着いたり肩や頭の上まで登っていた。

「そう言われてもみんな難しいとこばっか隠れてるし…」

そう不満そうに声を零す。

と、

「ローブと俺も手伝うから」

と言いながらフュルトの隣につく。

なんだかフュルトを睨んでいるようにも見えるが…

きっと気のせいだろう。



「次のヒントは〜『異常な難易度高くも低くも』!!」

監視カメラくんたちは先程と同じようにヒントを言ってくれた。

そんな光景を見たカメラさんは眉をひそめて『そっちの方がズルいじゃん』と不満そうに呟いたような声が聞こえた気がした。

「異常な難易度か…後回しの方が良さそうだな……」

カメラさんがそう言うと監視カメラくんたちはまたもやヒントを出した。

「じゃあ次のヒントね!」

「『能力活かして民の近くの在り処に』!」

能力…?

「あの、能力って…?」

そう聞きながらカメラさんの方を見る。

と、カメラさんはなぜかため息を吐いていた。

「能力っていうのは────」

そうカメラさんが説明しようと声を上げた瞬間、フュルトがカメラさんの肩を強く引っ張り、何か耳打ちしていた。

「…まぁ、話すより見せた方が早いかもな」

そうボソリと呟いたカメラさん。

が、急にどこからか鋭い木の枝を持って来てフュルトに振り下ろした。

次の瞬間、目の前に居たはずのフュルトの姿は消え、ローブだけが地面に残っていた。

「え?」

疑問の声を漏らしながらカメラさんの方を見ると、

「これが俺たちの能力だ」

と意味がよく分からないことを言うカメラさんが居た。

「え、ちょっと…よく分かんないんですけど……」

「まぁ簡単に説明すると異形頭たちは能力が使える奴が存在するって話ですね」

そんなフュルトの声が聞こえ、気づいたらローブが落ちていた先程の場所にフュルトは何事も無かったかのように突っ立っていた。

「僕は暗闇とか影になれる能力」

「…疲れるからあまり使いませんけど」

そうクスリと小さく笑うフェルトの声を無視して、心の中では『すごい…』と呟きを漏らしていた。

「じゃあみんな能力があるんですか?」

そう聞けばカメラさんは少し不満そうな顔をしながら

「俺には無い」

と言ってきた。

『質問間違えたかも…』と少し反省しつつも

「能力使える人は誰なんですか?」

と問いてしまう。

好奇心が勝った私自身を誰か止めて…

「能力があるのは────」

「カメラさん以外の人だけだよ!」

カメラさんが説明を始めようとした瞬間、監視カメラくんたちが口を挟んできた。

カメラさんはというと…

監視カメラくんたちを少し睨んでいた。

「監視カメラくん、他のヒント無い?」

「他のヒント〜?」

「じゃあしょうがないなぁ…次のヒントね!」

「4つ目のヒントは〜『能力活かして日が入る落ち着く場所に』!」

また能力活かして…

というか落ち着く場所って何……

そう疑問にしていると


「「図書館」」


という声が2つ重なって両隣から聞こえてきた。

「図書館?」

「図書館はロスジューノ森で『落ち着く場所』って呼ばれてるんですよ」

なるほど…

じゃあそこに行けば居るってこと?

「じゃあ早速、行きましょう!!」

そう拳を上にあげて『レッツゴー』的なのをしたらフュルトとカメラさんには冷たい目で見られ、監視カメラくんたちは不思議そうに首を傾げていた。

何とも恥ずかしい…



そうして着いた場所は大きな木々に囲まれた大きな図書館。

ツリーハウスのようになっており、大きな木々から差し込む光がとても神秘的だ。

フュルトは既に先に図書館の中へ進んでおり、私はカメラさんに手を引かれるがままに足を進めた。


図書館の中は外観に負けぬほどの綺麗な場所で、特に天井近くの壁に飾ってあるステンドグラスが教会の中のようにキラキラとしていてとても綺麗だ。

「陽葵さん、」急

に名前を呼ばれ、振り返るとフュルトが何やら指差していた。

その先には…

1つの天球儀が大きな丸太をそのままテーブルにしたような机の上に置いてあった。

「もしかして…天球儀さん?!」

驚きが混ざった声を上げると

「ぴんぽんぴんぽ〜ん!!正解で〜す!」

と言う声と共にいつもの姿である天球儀さんに戻った。

「よく分かりましたね!!って…あれ?」

「なんでカメラさんとローブさんが?」

「まさか僕の居場所教えたりしました?!」

そう言いながら天球儀さんはカメラさんとフュルトを壁に追い詰めるようにする。

が、途中でフュルトの黒い手袋を付けた手が天球儀さんの顔面…?を掴んだ。

と思ったら勢いよく回し始めた。

「ちょっ…!」

慌てて止めると天球儀さんは涙声ながらに『酷いですよ!!』と言っていた。

そんな光景をカメラさんと監視カメラくんたちが見ていた。

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