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「ウ~」
洞窟の奥へ進んでいるとルドラがうなり声を上げる。すぐに獣の顔をした獣人が現れる。
「コボルトか」
ルーザーさんの声で獣人が魔物なのが分かった。僕はすぐに鉄の剣を抜いて警戒する。
「マスターは手を出さずにコボルトはゴブリンとはレベルが違います」
ジャンがそう言って先頭へ駆ける。
彼の声と同時にコボルトが仲間を呼んだ。洞窟の奥からワラワラとコボルトが現れる。10? 20? 暗くてよく見えないけど沢山出てきた。
「おいおい、既に巣が? おかしいだろ。早すぎる。まさか、街道の魔物が入る前に出来てたか?」
ルーザーさんがそう言ってジャンの横で剣を構えた。ジャンは呆れた顔で彼を一瞥するとコボルトへと睨みを利かせた。
ルーザーさんはジャンを心配してるんだろう。彼を弟さんと重ねているから。もう失いたくないんだよな。
「ワンワン!」
「ギャン!?」
二人の後ろから一気に距離を詰めて噛みつきに行くルドラ。
凄いスピードで風がコボルト達を襲う。風と共に突進したんだな。コボルト達は動けずに簡単に噛みつかれる。
ルドラの噛みつきを合図にルーザーさんとジャネットが切りかかる。二人と一匹にため息をついてジャンが遅れて参戦する。僕も続くけれど、出番はなし。20匹程のコボルトは反撃もできずに絶命する。
「ふう。なまってた体も引き締まってきたな」
「……」
ルーザーさんがそう言って自分のお腹をつまむ。そんな彼をジャンが呆れて見つめるとため息をついた。
初めて会った時よりもお腹が小さくなっているかもしれないな。
「この! 何か文句あるのか?」
「ちょ、くっつかないでください!」
呆れていたジャンに気が付いたルーザーさんがからみ始める。本当に嫌そうなジャンは僕の背後に隠れた。
「ルーザーさん。そういうのはセクハラって言われるんですよ」
「セクハラ? なんだそりゃ。仲間同士のスキンシップだろ? ほんと性格もルティに似てるな」
ルーザーさんを注意すると彼は不貞腐れて洞窟の奥へと一足先に進んでいく。そんな姿を見てジャネットはクスクスと笑っていた。
「ルーザーは弟さんを愛していたんですね。大好きなものを失って、自分を捨てていた。マスターとジャンと会って再度自分を取り戻そうとしてる。普通の人ではできないことです」
「そうだね。一度諦めたことを再開することってそうそうできることじゃないよね」
ジャネットが笑顔で話す。僕が同意して答えると彼女が微笑んでくれる。
「さあ行きましょうマスター」
「あ、うん」
「ワンワン!」
ジャネットが手を引っ張ってルーザーさんを追いかける。続いてルドラとジャンが後ろを歩いてくる。
「はぁ、こりゃ~大規模な巣だな。明らかに前々から作られていたな。エクス達が見落としてたな」
大きなため息をついて分かれ道で足を止めるルーザーさん。僕らの方を向いて手を横に振る。
「こりゃダメだ。危険すぎる。一度冒険者ギルドに報告に戻るぞ」
「え? ジャネット達がいれば大丈夫じゃ?」
「ダメだダメだ。危険だ。挟み撃ちにあったら守れる保証はねえ。帰るぞ」
ルーザーさんの声に反論すると、彼は首を横に振って、きた道を帰っていく。
「死骸を片付ける。手伝ってくれ」
「はい」
帰り道、コボルト達の死骸を外へと運んだ。みんながいたから4往復くらいで片付いたな。
「魔石を換金して戻ってきて埋めるぞ。仲間が洞窟の奥から来てたら始末する。餌になるってわけだ」
ルーザーさんの提案を聞いてジャネット達が魔石を取り出し始める。僕も魔石を取る。コボルトはゴブリンと違って毛皮に覆われているから解体しにくいな。
「コボルトの肉はゴブリンよりはましだがあまりうまくない。売れるのは毛皮と魔石だけだ。今回は手早く済ませるために魔石だけにしておく」
「わかりました」
ルーザーさんも解体しながら話す。
僕は1匹済ませる間にみんなは2匹、3匹を済ませる。なんだか申し訳ないけど、油断すると吐き気に襲われる。
内臓の匂いが強烈だ。何というか粘土と油の匂いが混ざったような独特の匂い。その匂いが口にまとわりついてくる。粘っこいんだ。
「よし、一度帰るぞ」
「はい。じゃあみんなも帰さないとね」
「あ……。そうか……お前達もこっちで証明書を作ればはいれるんじゃねえか?」
魔石を全部取り出すと23個になった。ルーザーさんが声を上げるとみんなをスキルの中に帰そうと話す。すると彼は考えて提案する。
「無駄ですよルーザー。私達は持ち物をスキルの中に入れることはできません。マスターの持ち物が増えてしまうだけ」
「そうか、なんだかすまねえな」
「いえ、私達のことを思っていってくれたことでしょ。気にしません」
ジャネットが笑顔で話すといたたまれなくなるルーザーさん。
そうか、彼女たちは外の物を中に入れることができないのか。なんだか悲しいな。彼女たちにお礼に何かをあげることもできないのか。
「気にしないでくださいマスター。では私達は一度帰ります」
「あ、うん」
考え込んでいるとジャネットがそう言って僕に触れる。スキルのウィンドウに帰っていくみんな。心なしかルドラもジャンも悲しい表情に見えた。
『レベルがあがりました』
「……あ、そう」
みんなの倒した経験値が入ってきたみたいだ。今は喜ぶような空気じゃないんだけどな。まあ、とりあえずステータスを見ておこうかな。
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ステータス
ムラタ アユム
職業 無職
レベル3
HP 40
MP 40
STR 35
DEF 35
DEX 35
AGI 32
INT 25
MND 25
スキル
【村】
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数字以外は変化なしか。
村スキルっていうけど、城壁も建ったから町と言ってもおかしくないと思うんだけどな。まあ、人口は35しかいないけど。
もしかしたら人口が増えると町スキルとかになるかもな。