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数日後の夕方───
新製品の試作品が完成した金曜日の夜。
窓の外は、もうすっかり暗闇に包まれていた。
尊さんとの約束通り、俺の自宅マンションで試験を行うことになった。
緊張と、どこか期待にも似た感情が胸中で渦巻いている。
玄関のチャイムが鳴り、軽く深呼吸をしてからドアを開けると、尊さんが立っていた。
スーツ姿ではなく、シンプルな黒のカットソーにカーゴパンツという服装。
仕事着とは違う、プライベートの尊さんの姿に、それだけでドキッとする。
「邪魔する」
「こんばんは、尊さん。待ってました」
普段の仕事モードから脱した彼の雰囲気に、俺の緊張が走る。
自室に案内すると、尊さんはソファに腰掛け、持ってきた紙袋から白いロゴ入りの箱を取り出した。
「これが試作品だ」
テーブルに置かれた手のひらサイズの箱を見て、思わず息を飲む。
SMグッズの専門ならではの洗練されたパッケージングだ。
これから試すことへの期待と不安が入り混じる。
箱を開けると、光沢のある黒いレザーと、可愛らしい猫柄のSM拘束具5点と、遠隔ローターが整然と並んでいた。
それぞれに使用説明書付き。細部にまでこだわったデザインに感心する。
「わっ、猫柄可愛いですね…!」
思わず目を輝かせてしまう。
「……そうだな」
尊さんは軽く頷いただけだけど、その視線が妙に熱い。
俺の反応をじっと見ているようだ。
ソファに座るよう促されると、尊さんは一息置いて口を開いた。
彼の声が、仕事のスイッチが入ったことを教えてくれる。
「まずは遠隔ローターの機能テストからしよう」
彼はビジネスモードに切り替えたかのように冷静に言う。
「恋、下だけ脱いで足広げろ」
いきなりの指示に顔が熱くなる。
恋人同士とはいえ、こんなに直接的な言葉で命令されるのは、新鮮な羞恥心がある。
仕事だと分かっているのに、想像以上に直接的で戸惑ってしまう。
「はっ、はい……わ、わかりました」
恥ずかしさを感じながらも言われた通りにズボンを脱いで
下着姿になって足を広げると、視線が足元から離れない。
「…あ、これも…Tバックも脱ぎますか…?」
「いや、そのままでもいい」
尊さんが少し困ったような顔をしながら呟いた。
その一瞬の人間らしい表情に、少しだけ心が落ち着いた。
「ローターを入れる前に消毒と潤滑処理が必要だ」
尊さんは医療キットから取り出した消毒液を丁寧に拭き取り、次にジェル状の潤滑剤を取り出した。
その手つきは、まるで医療従事者のように丁寧だ。
「これも商品化予定の特殊潤滑剤だ。防水性能と粘性の持続時間を測る必要がある」
尊さんの声はいつもと同じく冷静だが、指先は震えていない。
「それじゃあ、お願いします…っ」
そう言うのが精一杯で、俺は目を閉じた。
尊さんの指がゆっくりと体内に入ってくる感覚に鳥肌が立つ。
痛みは一切ないが、身体中の神経が過敏になっているのを感じる。
「ここだな……」
尊さんの指先が正確な位置を捉えた瞬間、全身に電気が走ったような感覚に襲われた。
そこは、俺自身も一番敏感だと知っている場所だ。
「っ!」
思わず声が出そうになるのを必死で堪える。
これは「製品テスト」なのだから。
ただの被験者として、冷静でいなければならない。
「よし、入れるぞ」
慎重に挿入される感覚。
異物感はあるが不快ではない。
むしろ高校の頃に玩具責めに目覚めた俺からすれば、温かい安心感さえ感じる。
この違和感が、快感に変わっていくのが分かる。
尊さんがコントローラーを取り上げた。
「じゃあ稼働させるぞ。まずはレベル1から」
カチッ。
「ぁ……」
微弱な振動が始まる。
それはまるで羽で撫でられているかのような繊細さ。
しかし確実に体内の敏感な部分を捉えており、じんわりとした熱が広がり始める。
この始まり方が、既に既存製品とは一線を画している。
「どうだ?」
尊さんの低い声が耳元で聞こえる。
その距離感にさらに体温が上がる。
彼がこんなにも近くにいる、という事実が刺激を増幅させる。
「んっ……大丈夫です。むしろ……」
言いかけて言葉を飲み込んだ。
気持ちいいなどと言ってしまったら、これは単なるテストではなくなる。
仕事とプライベートの境界線が曖昧になるのが怖い。
「むしろ?」
尊さんの瞳が鋭さを増す。
見透かされているような視線。
俺の心の中まで見抜かれている気がする。
「……っ、いい、です」
言葉に詰まり顔を背けると、尊さんは小さくため息をついた。
少しだけ、呆れたような、でも優しい溜息だ。
「じゃあレベル3まで上げるぞ」
カチッ。
振動が明らかに強くなる。今度は歯を食いしばる必要があった。
もう、制御不能だ。
「ぁっ……!」
思わず漏れた喘ぎ声に自分で驚く。
いつも使っているローターやバイブは最大までしないと声が上がらないのに
なぜかこの試作品では違う。
尊さんがすぐ側にいるせいだろうか。
あるいはこれが優れ物なのか。多分、両方だ。
「痛いか?」
尊さんの声が降ってくる。
「ちがっ……気持ち、よくてっ……!」
もう隠しようがなかった。
顔から火が出そうなほど熱い。
羞恥心は限界を突破した。
「だろうな」
尊さんの唇がかすかに弧を描いた。
「なら更に上げるぞ」
カチッ。
「ああぁっ……!!」
今度こそ抑えきれず大きな声をあげてしまった。
全身が硬直し、呼吸が荒くなる。
まるで嵐の中に放り込まれたような激しい感覚。
しかし苦痛ではなく、むしろ甘美な衝撃。
体中が、この快感を求めている。
「すごい反応だな」
尊さんが呟く。
その声にはいつもの冷静さに加えて、何か別の感情が混じっているようだった。
それが、俺の気持ちをさらに煽る。
「止めるか?」
答えられずに首を横に振る。
まだ止めたくないという意思表示だ。
もう、理性はギリギリだ。
「わかった」
尊さんはコントローラーを操作しながらメモを取っている。
「防水性能も問題無さそうだな」
あくまで仕事。
その姿勢が、かえって俺の興奮を高めた。
実際、特有の潤滑剤のおかげか水が滴るような感覚もなく、滑らかな稼働を続けている。
「じゃあ次は動作距離を確認する」
そう言うと尊さんは部屋を出て行った。
俺一人になることで、緊張感がまた一段と増す。
「これから最大のレベル7にする、離れたところから動かすぞ」
扉越しにそんな声が聞こえ
カチッ。
「っ?!」
遠隔操作で急に振動パターンが変わった。
ランダムな強弱の変化に翻弄され、床に座り込んでしまう。
今までの快感とは違う、予測不能なスリルだ。
姿が見えなくなった尊さんの操作で、ローターの動きは完全に予測不能になった。
強烈な振動が突然弱まったり、また次の瞬間には激しい衝撃が襲ってきたり―。
「あっ……んぅっ……!」
膝を擦り合わせながら必死に耐える。
冷たいフローリングが火照った肌に心地よい。