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#BL
mo-
369
格安生姜
73
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#1 新居と隣人
ーjntー
四月の初め。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、床に積み上げられた段ボールの山を照らしていた。
…快晴だ。
「……よし」
俺は腰に手を当て、自分の部屋をぐるりと見渡した。
六畳の洋室。
小さなキッチン。
窓の向こうには、春らしい薄い緑色の葉をつけた木が一本見える。
決して広くはない。
けれど、これからここで暮らすのだと思うと、自然と気持ちが引き締まった。
「今日から、ここが俺の家か…。」
誰に聞かせるでもなく呟く。
少しだけ、胸が弾んだ。
これまで俺は、実家から大学まで電車で一時間以上かけて通っていた。
朝は早く起きなければならず、帰宅する頃には疲れ果てている。
自分の時間を確保するのも難しかった。
だから、いつかは一人暮らしをしたいと思っていた。
自分で好きな家具を選び、自分の好きな時間に起きて、食べたいものを作る。
誰かに気を遣うことなく、好きなように生活する。
そんな、ささやかな自由に憧れていた。
そして三月の終わり。
ようやく見つけたのが、このアパートだった。
駅から徒歩十分。
近くにスーパーがあり、コンビニも歩いて五分ほどの場所にある。
築年数はそれなりだが、部屋の中はきれいにリフォームされていた。
何より、家賃が予算内だった。
内見に来た日、窓を開けて春の風を感じた瞬間、俺はほとんど即決していた。
「ここなら、悪くない」
そう思ったのを覚えている。
……けれど、そのときはまだ知らなかった。
自分の新生活が、隣人ひとりによって予想もしない方向へ転がっていくことを。
引っ越し当日の午前十時。
「こちら、最後のお荷物になります!」
引っ越し業者の声に、俺は玄関先で頭を下げた。
「ありがとうございます。助かりました」
最後の段ボールが運び込まれ、ようやく荷物の搬入が終わった。
玄関には段ボールが三箱。
キッチンには調理器具の入った箱が二箱。
そして部屋の中央には、組み立て前のベッドが堂々と横たわっていた。
「……さて」
俺は一度、息をつく。
「やるか」
まずは寝る場所の確保。
それからカーテンを取り付けて、食器を出して、洗面用品を整理する。
やることは山ほどある。
けれど、こういう作業は嫌いではなかった。
物の置き場所を決め、ひとつずつ片付けていく。
散らかっていた部屋が少しずつ整っていくのを見るのは、なんとなく気持ちがいい。
……早く母さんたちに見せたいな。
俺は段ボールを開け、丁寧に中身を取り出した。
お気に入りのマグカップ。
毎朝使っていたコーヒーメーカー。
きれいに畳んだタオル。
食器棚に並べる皿は、割れないように新聞紙で包んである。
一方で、服は季節ごとに分け、ラベルを貼った箱に収納していた。
『春・夏』
『秋・冬』
『書類・その他』
自分でも少し几帳面すぎるとは思う。
しかし、一度適当に片付けてしまうと、あとから探すのが面倒になるのだ。
それに、普通に落ち着く。
「……うん、こんなもんか」
一時間ほど経った頃、キッチンの整理が終わった。
俺は冷蔵庫を開ける。
中には、昨日のうちに買っておいた牛乳、卵、肉、それから野菜がいくつか。
調味料も一通り揃えてある。
「昼、何食べようかな」
引っ越し初日くらい、外食でもいいかもしれない。
けれど、せっかくキッチンがあるのだから、何か作りたい気もする。
祝・初一人暮らしだし。
そんなことを考えながら、俺は窓の外を眺めた。
青空が広がっている。
いい天気だった。
これから始まる生活も、こんなふうに穏やかであればいい。
……そう思った…そのときだった。
ドンッ!!
壁の向こうから、何かがぶつかるような音がした。
「……?」
顔を上げる。
もう一度。
ドン、ガタガタッ!!
何かを引きずるような音が続き、最後に小さく、
「いってぇ……」
という声が聞こえた気がした。
「……隣、か?」
このアパートは全部で八部屋。
俺の部屋は二階の角から二番目で、隣にはもう一部屋ある。
内見のとき、不動産会社の担当者は「比較的静かな物件ですよ」と言っていた。
もちろん、生活音くらいはするだろう。
俺はそう納得して、作業に戻った。
まさか隣人が何をしているのか気にするようになるなんて、このときは想像もしていなかった。
NEXT…❤︎150
コメント
3件
1話からおもしろそうなのがわかりますわ 続き楽しみにしてます‼️
みぅです🤍 読ませていただきました〜。 新居の描写がすごく丁寧で、主人公が部屋を整えていく様子に「ああ、一人暮らし始めたときのあの感じ…」って一緒に胸がときめきました。コーヒーメーカー出したり、タオル畳んだり、そういう小さな動作が新生活のリアルをくれてて好きです。 最後の「ドンッ!!」はちょっとドキッとしましたね。隣人の存在がどう転んでいくのか、すごく気になります。この静かな日常に、音ひとつで色がつく感じがいいなって思いました🌙 続きが楽しみです、きめらさん!