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#高校生
第13話 「秋の背番号」九月。
朝の空気が少しだけ涼しくなっていた。
秋季大会開幕目前。
グラウンドには、張りつめた空気が流れている。
「整列!」
福間監督の声。
部員たちが一列に並ぶ。
誰も口を開かない。
今日は――
秋大会の背番号発表だった。
名前が呼ばれていく。
「1番」
「2番」
「3番」
前へ出て、ユニフォームを受け取る。
「2番」
「小早川」
「はい!」
啓介が前に出る。
受け取った背番号を、静かに見つめる。
夏に続いての正捕手。
だが今は、一年生で唯一のレギュラーだった。
周囲の期待も、責任も大きい。
「緊張してるか?」
隣の二年生主将が小声で聞く。
「……少し」
「俺なんか昨日寝れんかったぞ」
その言葉に、少しだけ笑いが起きる。
空気が少し和らぐ。
だが――
呼ばれない名前もあった。
下を向く一年生。
拳を握る二年生。
秋は人数が少ない。
ベンチ入りできる選手も限られる。
「終わった顔するな」
福間監督の声が飛ぶ。
全員が顔を上げる。
「背番号は、今の評価や」
「でも、未来まで決まるわけやない」
静かな声。
だが重かった。
「レギュラーは奪え」
「ベンチ外は、腐るな」
「競争せんチームは弱くなる」
その言葉に、空気が引き締まる。
練習開始。
ケースバッティング。
送りバント。
守備連携。
福間監督は一球ごとに止める。
「今の判断は?」
「次の塁どこや?」
「声は?」
以前より、細かい。
小早川は汗を拭いながら思う。
(夏より厳しい……)
だが同時に感じていた。
(チームは強くなってる)
夕方。
ブルペン。
投手の球を受けながら、小早川は配球を組み立てる。
インコース。
低め。
緩急。
「もう一球!」
ミットの音が響く。
そこへ福間監督がやって来る。
しばらく黙って球を受ける姿を見る。
そして小さく言った。
「小早川」
「はい!」
「お前、少し変わったな」
小早川は驚く。
「前は、自分のことで必死やった」
「今は、投手の顔見とる」
その言葉に、小早川は少し黙る。
確かに最近、“周り”を見るようになっていた。
福間監督は続ける。
「捕手はな」
「チームの空気を変える仕事や」
夕日がグラウンドを照らす。
その言葉が、胸に深く残った。
秋季大会まで、あと数日。
柳城高校は今、次の景色へ向かっていた。
第13話 終