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その日の夜。
くるみちゃんママの話を聞いて、自分の家のことと比べていた。
うちは、接待というものに行ったという話は聞かないし、お小遣いの他にお金を貸してって言われたこともない。
サービス残業は、なんだかなぁと思うけど、当の健二がそんなに嫌がってるようにも見えないから、まぁいいかと思う。
「二人目か…」
翔太の寝顔を見ながら考えた。
やっと3才になったところだけど、二人目つくるなら早いうちがいいかもしれないなぁ。
今夜あたり、誘ってみようか?
「ただいま」
「おかえり、今日は早かったんだね」
「うん、そんな毎日サービス残業してられないからね。先にお風呂入ってくる」
ビールを出してグラスに注いだ。
「ひゃー、やっぱり風呂上がりのビールは最高だよね?翔太が寝ちゃってるのが残念だけど」
「今日ね、公園でお友達といっぱい遊んで疲れちゃったみたいで、早くに寝ちゃった」
「元気なことはいいことだね」
「うん…それでね…」
「ん?」
「二人目、欲しいなって思って…」
「あ、うん、そうだね…」
「だから、ね!」
いつ、翔太が起きてしまっても慌てないように、部屋の照明は真っ暗にする。
声を出さないように、音を立てないようにそっと睦み合う。
あれ?キスがおざなりになってる気がする。
それに、挿れるの早いよ、待ってよ。
正常位で入ってくると、勝手に動いてそのまま私の中に放出。
「え?ちょっと待って、私はまだ足りないんだけど。これじゃ、ただの生殖行為だよ」
「そんなこと言わないでー、最近少し疲れてるからもう無理…」
健二は、さっさと自分の場所へ戻ると寝息を立て始めた。
久しぶりのセックスなのに、中途半端に終わってしまって私の中の疼きはおさまりそうにない。
「ね、ちょっと!もう一回、ねえってば」
ひそめた声で揺さぶりながら、健二を起こす。
「うぅ…ん…まだしたいの?マリちゃん…」
なに、いまの。
「ちょっと、健二!なに、今の!マリちゃんて誰?」
ピタっと健二の動きが止まった。
「ん?俺、何か言った?」
「マリちゃんって誰?」
「誰?」
「私が聞いてるの!」
「し、知らない、夢見てたからただの寝言だよ」
「どんな夢、見てたの?」
「えっと、確か、ライオンに追いかけられる夢だった、と思う」
「ライオンに追いかけられる夢で、なんで、マリちゃんまだしたいの?って寝言になるの?説明してよ!」
頭の中に、マリという女を抱く健二の姿を想像した。
キスも濃厚で、激しくもつれあう姿だった。
「浮気してたの?!」
「違う、ホント誤解、寝言だから、もう頼むから寝かせて、ね」
布団を被って、さっさと寝てしまった…ように見えた。
きっと寝たふりだ。
置いてけぼりのセックスと、見ず知らずのマリと狸寝入りの健二。
窓の外が明るくなるまで、寝られなかった。
次の日、アラームが鳴って起きる。
健二は、もう起きていた。
「会議があるから、もう出るね!」
「え?そんなこと昨日言ってなかったじゃない、朝ごはんは?」
「コンビニでコーヒー買うからいいよ、行ってくる」
いつもより1時間も早く出社した健二。
まるで昨晩のマリ発言が、やましいって証拠みたいだ。
なんか腹立つ。
「あ、そうだ…探してみよう」
昨日、くるみちゃんママが言っていた浮気の証拠。
もしかしたらあるかもしれない、ホテルの領収書とか。
昨夜、健二が脱ぎ捨てたままの、上着とスラックスのポケットを探る。
出てきたのは丸まったハンカチと、ガソリンのレシートだった。
「ないか…、あ、あっちは?」
カードの明細書が少し前に届いていたことを思い出した。
何かあった時のためにと、一枚だけクレジットカードを持たせてある。
居酒屋の料金?これは確か、職場の飲み会のお金を立て替えたって言ってたっけ。割り勘だけど、ポイントが付くからとかなんとか言ってたような気がする。
それだけだ。
浮気相手がいたとしても、そのために何かお金を使ったという形跡は見当たらない。
やっぱり、ただの寝言?
でも、気になる。
誰に相談すれば?あ、そうだ、くるみちゃんママに相談してみよう、何かヒントがあるかも?
「おかぁちゃん、おはよ」
「あ、翔太起きたの?おはよう。ね、今日もカニさんの公園行こうか!」
「え、ほんと?またくるみちゃんとあそべる?」
「うん、ゆっくり遊んでいいよ。さぁ、ご飯食べようか」
「うんうん、たべるう♪」
翔太と二人の朝ごはんは、フレンチトーストを焼いた。
甘いシロップをたっぷりかけて。
「おとうちゃんもだいすきなやつだ、おとうちゃんのぶん、ある?」
「今日も帰りが遅いかもしれないから、二人分だけ。さ、食べよ」
朝ごはんを食べて、洗濯掃除の一通りの家事を済ませて、くるみちゃんママにLINEする。
〈おはようございます。今日もカニさんの公園に来る?私、ちょっと聞いて欲しいことがあって…〉
ぴこん🎶
《おはよう。ごめんね、今日は私が体調悪くて行けそうにないの。もしもよかったら、うちに来る?》
〈体調悪いなら今度にしよっか〉
ぴこん🎶
《ううん、最近色々あった気疲れよ。くるみも退屈だから、ぜひ。地図を送るね》
マップ画像と、家の外観の写真が送られてきた。
そういえば、家に遊びに行くのは初めてだ。
〈じゃあ、お昼くらいに、何か買っていくから、一緒に食べよ〉
ぴこん🎶
《ありがとう、助かる!》
翔太を連れて、ピザとサラダと美味しそうなケーキを買った。
こうなったら、美味しいものを食べてやる!そう思った。