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好評だったら続きを作ろうかな。って思ってます……w
2030年 5月31日
日本の海は今日も穏やかだった。白波が穏やかに流れていき、青空に登る太陽が海面を反射し空気中を輝かせていた。だけど、人の争いが、国と国との争いがそれを─壊した。生命の源である海で…生命の生きる鼓動が消えていく姿を、あなたは目視することとなるだろう─
第1話 プロローグ 生命の源で消えゆく命
2030年 5月31日
美しい大海原が広がっていた。太陽光を海面が反射し海面が輝いて見えた。そんな輝く海面を切って進む1隻の船─
日本国 海上自衛隊 護衛艦 ”みょうこう”
2時間前、この海域を偵察していた海上自衛隊の偵察哨戒機が日本国領海付近をうろついている西亜統合連邦国の駆逐艦を発見した。西亜統合連邦国(略名・西統連邦)の駆逐艦は海上自衛隊の偵察哨戒機に対しレーダー照射をおこなった。レーダー照射とは、上空を飛行する軍用機に対しミサイルの追尾弾頭をロックオンさせることであり、発射装置を押せば直ぐにミサイルを発見する事ができる。12年前にも、大韓民国海軍によるレーダー照射を海上自衛隊は受けた事があるが、西統連邦の駆逐艦はレーダー照射を偵察哨戒機に対し長時間し続けた。あまりの事態に偵察哨戒機はその海域を離脱、日本政府は西統連邦の武力行使を警戒し京都府に維持する海上自衛隊の舞鶴基地より第3護衛隊群所属の護衛艦みょうこうを派遣した。そして、現在に至るというわけである。
護衛艦みょうこう 艦長 ”中田翔”
中田は、艦橋の艦長席に座り水平線を見ながら肘をついていた。彼の周りでは部下たちが仕事をしているのに対し、彼は一風変わったオーラを出している。彼の肩の黒い階級章には黄色い線が四本編み込まれ、上部には桜の紋章が編み込まれいる。彼がこのみょうこうの艦長であり一等海佐である誇り高き証拠である 。艦橋の時計の秒針がちょうど12を指した時だった。みょうこうの大域ソナー(対水中レーダー)が艦影を捉えた。直ぐに、ソナー室から報告が上がる。
「ソナー室から艦長へ。」
中田は、艦長席の横にかけていた無線機をとり素早く応じる。無線機をとってもなお目線は水平線を見ているまま、オーラも揺るがなかった。
「こちら中田。」
「艦長、本艦から北西に2マイルの海域に艦影あり。大きさやソナーの反響音からして潜水艦です。」
「潜水艦?哨戒機からの報告では駆逐艦だと聞いたが…潜水艦の進路は?」
「進路は、本艦にこそ向いていませんが、艦首方向からして…日本本土です。」
中田は、目線を水平線から離しソナー員がいう海域の方に目をやる。目線の先には、穏やかに波打つ海面が広がっており、とても潜水艦がいるようには思えなかった。しかし、みょうこうのソナーにはその存在がしっかり探知されていた。
「ふむ…駆逐艦から潜水艦にバトンタッチしたってわけか…?ソナー室は引き続き対潜哨戒を継続せよ。」
「了解致しました。」
目線を変えないまま、中田は無線機のスイッチを切りもう一度スイッチを押す。艦内放送に切り替えたのだ。
「艦長より、各員各部に達する。これより、他国籍潜水艦とコンタクトを取る。最悪の事態に備え、第一種戦闘配置につけ。繰り返す、第一種戦闘配置につけ。」
中田の指示に、クルー(乗組員)達は一斉に走り出す。艦内の廊下を走り、それぞれが自分の配置場所に着く。配置場所に到着すると、全部署の各1人の隊員が廊下、部署のハッチを完全に閉ざしロックをかける。これは、魚雷やミサイルが着弾した際に浸水した海水が艦内に広がらないようにするための隔壁である。みょうこうは少しずつ潜水艦が潜航している海域に近づいていく。みょうこうが航行している海域の海中はまるで静かで沈黙の世界だった。しかし、そんな海中に響くソナー音、1隻の潜水艦である。西統連邦海軍が運用する他用途潜水艦である。中田はソナー室に指示を仰ぐ。
「ソナー室、潜水艦の位置は?」
「潜水艦は、本艦の約1キロメートル先の海中にいます。」
「よし。対潜無線を使って警告しろ。」
「了解致しました。」
みょうこうのクルーが、潜水艦に向かって対潜無線を使って警告を行った。しかし、潜水艦は警告を無視しさらに領海を潜航していく。
「艦長、西統連邦の潜水艦、以前と進路を変えず潜航していきます。」
「ほう……まぁ、あの野蛮国家が相手なら想定の範囲内だ。対潜担当、右舷魚雷線よりデコイによる警告をしろ。潜水艦には直撃させるな。繰り返す、直撃はさせるな。」
「了解しました。」
数人の乗組員がみょうこうの甲板を走り、魚雷発射管に向かう。装填されているのは黄色いデコイ。デコイというのは、魚雷を一時的に回避するための囮のことであり、デコイ自体に攻撃能力は無い。
「こちら、右舷対潜担当、右舷魚雷線の発射用意完了。」
「撃て。」
中田の指示で、みょうこうの右舷から1本のデコイが発射される。デコイは海中を潜航していき、西統連邦の潜水艦の真横を通り過ぎる。
「ソナー室、どうだ?」
「西統連邦の潜水艦、以前と進路を変えません。」
「…面倒な……」
その時、西統連邦の潜水艦が魚雷発射管を開いた。同時に、魚雷発射管の開口音はみょうこうのソナーにも探知されていた。
「!!。ソナー室より艦長へ!潜水艦より魚雷発射管の開口音探知!」
「なんだと……」
潜水艦は、2本の重魚雷を発射した。魚雷は海中で半円を描きみょうこうに向かって潜航していく。
「ソナー探知!魚雷2本!本艦に接近!」
「クッ……!撃ってきやがった……」
先程まで冷静沈着だった中田の表情にも、二滴の汗が浮き出始める。
「航海長!速力30ノット(車の時速に換算すると60キロ)!最大船速だ!取舵45度!魚雷を交わせ!」
「了解!最大船速!取舵45度!ヨーーソローー!!」
みょうこうは海面で左右にうねるように動き、魚雷の回避を試みる。1本の魚雷はみょうこうの左舷を横切り回避できた。しかし、運は中田達を恵まなかった。2本目の魚雷は、みょうこうの後部機関部に命中し重魚雷の莫大な炸薬量によりみょうこうの機関部が吹き飛ばされた。衝撃がみょうこうの艦内全体に響き渡る。
「クッ……!!!」
「後部機関部に被弾!機関出力低下!」
「ダメージコントロール!隔壁閉鎖急げ!!」
みょうこうの機関質量は徐々に低下していき、ついには海洋で停止してしまう。後部の船体には巨大な穴があき、炎と巨大な黒煙が大空に舞い上がっていた。みょうこうの航行不能を確認した西統連邦の潜水艦は、その後日本海域から離脱した。
【護衛艦みょうこう 負傷重傷者並びに死者数:257 人】