「健吾さん、貴方に逢えて良かった」
「本当に?」
窺う視線が、健吾さんの中にある不安を示していた。それをいち早くなんとかしたくて、返事をしてあげる。
「本当です。夢の中で僕に逢ったのは偶然かもしれませんが、現実(リアル)でこうして探し出してくれるなんて、大変なことだと思うんです。健吾さんを、そこまで突き動かしたものって――」
自分の中にあった疑問を口にしたら、不安げな表情が和らぎ、安堵に満ちた顔に変化した。
「本来ならば夢の番人を辞めた時点で、敦士だけじゃなく俺の記憶もなくなることを、創造主から聞いた。それなのにおまえを忘れることなく、現実世界の中から探せたのは、夢の中でしっかり愛し合ったお蔭だと思う」
「夢の中でしっかり愛し合ったから、記憶がなくても、僕の躰は貴方を覚えていたんですね」
健吾さんの言葉を使って、覚えていることを告げると、触れるだけの口づけが唇に落とされた。柔らかいだけじゃなく、しっとりした皮膚を唇の上に感じただけで、あっという間に下半身が形を変える。
「真っ直ぐな想いで、敦士が俺を愛してくれたから、絶対に忘れることがなかったんだ。これからもこんな俺を、愛してくれるだろうか?」
ちょっとだけ傾げられた首の動きで、健吾さんが被っているプラチナブロンドが、頬にそっと触れた。
くすぐったいそれを退けたいのに、両手首を拘束されているのでそれができず、うずうずするしかない。
「敦士、愛してくれないのか?」
「健吾さんを愛したいので、これを外してほしいんですけど」
「外さない。俺は、こういうプレイをするのが好きなんだ。覚えておいてくれ」
「ぷっ、プレイ!?」
驚く僕を尻目に、意味深に片側の口角を歪めた健吾さんが、上半身を起こしながら少しだけ後方に移動し、僕自身を手にした。
「今まで隠していた、俺の趣味を暴露することが、ご褒美のひとつで――」
健吾さんは握りしめた僕自身を後孔にあてがい、腰をぐいっと下ろす。吸い込まれるように挿入される気持ちよさで、呼吸が勝手に乱れてしまった。
「ああぁっ、いきな、りっ!」
「もうひとつは、俺自らこうして奉仕してやるのがご褒美だ。時間をかけて、自分で解した甲斐があった。こんなに感じてくれるなんて、すごく嬉しい」
このまま一気に奥まで飲み込まれると思った矢先に、ふっと途中で止めて、自身の先端ギリギリまで腰を上げた動きは、あまりに急だった。下半身に、ぞくっとするものを感じずにはいられない。
ちょっとでも僕が腰を引けば、抜けてしまいそうな危うさがあった。それを阻止しようと下から突き上げたら、健吾さんがその分だけ腰を引いて、もとに戻した。
「やっ! ぬ、抜かないで!」
「大丈夫だ。せっかく繋がったのに、抜くわけないだろ」
僕をじっと見下ろす健吾さんの細められた瞳が、窓から差し込む月明かりで、意地悪くきらりと光った。
拘束されたままの両手首に、ギリギリのところで寸止めされている僕自身。両手が自由なら健吾さんに抱きついて、無理やりにでも奥深く埋めるのに、それができないじれったさのせいで、余計に彼が欲しくて堪らなくなった。
「敦士、どうした。もの言いたげな顔をしてる」
「だって、健吾さんともっと繋がりたいのに、こんなふうにされたら不安になる」
「それは不安な気持ち……だけなのか?」
問いかけた彼の腰が、少しだけ下にずるずる動いて、さっきよりも挿入された。
僕の返事を聞いて、このまま深く繋がると思ったのも束の間、途中で動きを止められてしまった。最奥までは、程遠い位置でストップする。
「健吾さんっ!」
「おまえが感じているのは、不安だけなのか?」
「それは――」
「俺は敦士の想いに応えたい。おまえの望むものすべてを、きちんと叶えてやりたいんだ」
言いながらふたたび腰を上げる健吾さんに、縛られたままの両手首を見せながら、懇願するように口を開く。
「だったら、これを外してください。それから……っ!」
「それから?」
健吾さんは、必死に訴えかけた僕の顔を覗き込んだ。鼻先ギリギリまで近づけられた顔はプラチナブロンドのせいか、いつもの見慣れたものじゃなく、妖艶な雰囲気をまとっていて、頬に熱を持ってしまった。
「敦士、早く言わなければ、このまま抜けてしまうかもしれないぞ」
ゆるゆる上げられる腰の動きに、自然と焦りが募っていく。
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