ローズ「無茶しすぎてもう残りの余命が少ないの。過労ってとこかしら。今も目がしょぼしょぼする。」
ジハード「それは眠たいだけだと思う。」
ローズ「ま、いいわ。とにかくそんなとこ。私は愛する弟を守りたいだけ。他人なんてどうでもいいの。一つだけは夢に嵌め込めない。この国丸ごと対象には出来ない…ね。悪魔は特定のエネルギーがなきゃ、生命維持活動が出来ないはずよ。貴方今までどうやって生きてきたの?私達は、水や食べ物を食べて生きるためのエネルギーを補充してる。…でも貴方達には消化器官がない。」
ジハード「…因みにそれどこで?」
ローズ「昔悪魔の腹をかっさばいたことがあるの。被害者が胃の中にいたりしたら困るでしょ?」
ジハード「なんて恐ろしいことを…。確かに俺達は消化器官がないから、お前達のように食べ物を食べることは出来ない。…だからこそ悪魔がヒトを食べるというのが訳分からないが…。」
ローズ「そんなの私が知るわけないわよ。」
ジハード「他の奴らがどうしてるかは知らない。でも俺は…あー…。俺は擬似的に食事をしてる。消化器官がないのに無理やり食べ物を捩じ込んだりすれば、体調が悪くなるからな。なんせ出すとこがない。お腹が痛いのなんの。」
ローズ「お腹には行くのね…。排泄器官ないのは初耳ね。そういや肛門を見た事なかったわ。擬似的に食事というのは?濁ったけど。」
ジハード「…出した方が説明は早いんだけど…そこそこでかくて…騒ぎになるかもしれない。」
ローズ「どれくらい。」
ジハード「とりあえずこの洞穴は突き破る。」
ローズ「…私真面目に話してるんだけど。」
ジハード「殺されたくないんだから、この状況で冗談なんか言うか。」
ローズ「…外出るわよ。人気のないところまで行きましょう。」
ジハード「分かった。」
ローズ「ここなら問題ないでしょう。」
ジハード「じゃあ出すぞ。」
ジハードが手をかざすと、桃色の雲のようなものが徐々に形を作り出す。やがて、それは1匹の獣へと変化する。
ローズ「…確かにこれは騒ぎになるわね。大きすぎる。あとかっこいいけど…色がファンシーで目立つわね…。」
ジハード「これはわざとだ。こんな生物現実には中々居ない。だからコイツが居ることで、より夢と認識させる。それに囮にも丁度いいんだ。」
ローズ「それで?」
ジハード「コイツで狩りをする。トカゲとか虫を攻撃して、血を貰ってく。そしたらこいつに血は吸収されるんだ。そうして消すと、行き場の無くなった血は俺に吸収される。血にはかなりのエネルギーが詰まってるからな。」
ローズ「人間にやったことは?」
ジハード「ないな。虫よりもヒトの方が効率いいのは分かってるけど…もう今回は消すけど、この魔法は消費する魔力が多いから、本来あのやり直しの魔法と併用して使ってるんだ。魔力だけ変化させてる。」
ローズ「やっぱりヒトを食べない?」
ジハード「…形は違えども、ヒトを食えば後戻り出来ないんだ。ヒトを1人でも食えば、次に俺に食われるのはお前だぞ。」
ローズ「それは困ったわね。この国全体を対象にするなら…何年かかるのかしら?」
ジハード「今まで最低限分しか食事をしてこなかったからな…さっきもいったけどデメリットがあるんだ。諦めた方が…」
ローズ「いいえ、私は絶対に諦めない。どんな手を使ってでも野望を叶える。いいじゃない。そのデメリット逆手にとりましょう。貴方のおかげで思いついた。いつもと同じやり方。貴方のエネルギー…魔力を余り物にしましょう。」
ジハード「そんなことしてもべつに悪魔が来なくなるわけじゃ…」
ローズ「いいえ、来なくなるわ。貴方達って何年まで生きれるの?」
ジハード「数百年は余裕だ。限界は知らないけど…千を超えてる奴も居た。」
ローズ「上々じゃない。目的が変わったわ。やり直しを目標の最終地点にしない。悪魔をこの国に近づけなくしてやる。」
ジハード「……。」
(どうしてか、脅されてる身だってのに…不快感が無さすぎて敵なのを忘れてしまいそうだ。…もし、もしそれが実現するなら…)
ジハード「勝手に納得されても、分からない。俺は何をすればいいか教えてくれ。」
ローズ「そうね。貴方には、この砂漠にわんさか居る悪魔の誰よりも、恐れる程の魔力を待ってもらう必要がある。動物も、ヒトも、悪魔も同じ。自分より見るからに実力がある者には近づかない。この国に一生居続けることにはなるけど…まぁこちらでそれなりの身分を作るわ。それなら人前でも居られる。」
ジハード「でもそんな膨大な量は…」
ローズ「ヒトを殺すことで貴方が恐れてるのは監視の目でしょ?…これから、1、2年後にこの国は分断する。1つは王のいる国。もう1つは王の居ない国。貴方は王の居ない国で魔力を補給すればいい。そして、最後に国民らの死を夢にはめ込め無かったことにする。」
ジハード「それなら実現できそうな話しだが…ヒトの数がどれだけいるか…分かるか?」
ローズ「さぁ?私は未来を見れるわけじゃない。」
ジハード「じゃあ王の居ない国ってのは…」
ローズ「私は未来を見れるわけじゃない。でも王の居ない国が出来るのは絶対。私はあの子のことを、誰よりも理解してるもの。…あの子は、必ずいつか”あの”設計図を盗み出す。」
ジハード「確かに監視の目を逃れることは出来る。ヒトも少なくなるだろうし、現実的な話ではある。」
ローズ「でしょう?」
ジハード「でも、それは”あの”戦争が無ければだ。」
ローズ「戦争?」
ジハード「いや…こっちの話だ。とにかく全盛期なら出来たかもしれないが…今は、魔力を補給するにも魔力が足りない状態だ。」
ローズ「何年かかりそう?」
ジハード「…多めに見積もって9年くらい…」
ローズ「そう。私は…死んでるわね。そうね、これは私の問題。こちらでなんとかするわ。貴方はただ、私の計画のために、魔力を補給し続けてくれればいいわ。それ以外のことにはとやかく言わない。」
ジハード「なぁ。」
ローズ「何?」
ジハード「名前は?」
ローズ「…そう言えば、言ってなかったわね。ローズよ。ローズ・アルド・トーチアス。一応、第1王女。王室直属兵団の隊長と、恒陽化計画の開発者を兼任してる。長いからローズでいいわ。」
ジハード「そりゃどうりで過労で首の皮一枚なわけだ。ジハードだ。」
ローズ「悪魔にも名前があるのね。これから共犯者としてよろしく、ジハード。」
ジハード「よろしく、ローズ。」
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