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1年後、ローズ・アルド・トーチアスの死が公表された。国のために、尽力してくれた英雄だと人々は死者を煽てた。全く本物と違った人物像で、当時は自分は夢でも見ているのかと思った。
ジハード「これ1つお願いします。」
店主「はいはいちょっとまっててね。」
自分はここで今問題なく暮らせている。ローズは言ったことをほとんど実現させた。どうやったのかは知らない。気付いたら自分は、昔からこの時の国に住んでいる長命種のヒトということになっていた。でもチョイスは最悪だと思う。なんでよりによってメシュエネってことにしたんだろう。俺は見るからにもやしだってのに。本人はこの付近にいる長命種はメシュエネしか居ないって言ってたけど…無理がある。
ジハード「はぁ…。」
店主「なんだい、なんか悩み事?」
ジハード「あ、いや…」
店主「ローズ殿下、残念だよねぇ。」
ジハード「そう…ですね。」
残念という感情はない。むしろ…
店主「いけない!もうすぐラッシュだ!良かったら手伝って…」
奥から来た店員「店主!ジハードさんは人間とのハーフだから!」
店主「あ、そうだったねごめん!」
このいたたまれなさが辛い。自分は、メシュエネと人間のハーフということになってる。何でもこの組み合わせのほとんどは、強すぎる力に体力が追いつかないんだと。メシュエネの純血種でもごく稀にいるらしいが…それでどうにか辻褄を合わせてはいるが…
ジハード「やっぱり辛い…。」
店主「これおまけね!ほら元気出す!」
ジハード「あ、ありがとうございます。」
お金というものと、パンを交換する。これをヒトは買うというらしい。自分は食事出来ない、それは変わらない。これはあの幻に食べさせるものだ。絶対馬鹿にされると思って誰にも、ローズにも言ってこなかったが…実は名前がちゃんとある。
ジハード「ルイーズ、よろしく。」
誰も来ないような砂漠の真ん中で幻、幻獣を出す。ルイーズは、パンを食べ始める。かなりの微々たるもので、あまり労力には見合わない。それでも食べるのには理由がある。ローズに言われたのだ。
ローズ「いい?貴方はヒト扱いなの。ヒトは定期的に食べ物を食べないと死んでしまう。捨ててもいいから、定期的に食べ物を買うようにして。お金はこちらで困らない程度に上げる。」
そう言われたから買い物の仕方を教わって、定期的にパンを買ってる。最初は言われた通り捨てようかと思った。でも単純に作ったヒトに申し訳ないのと、カビとムカデが苦手だからこうして食べてる。
ジハード「ムカデってなんであんな見た目なんだろうね。あ、トカゲ。」
幻獣が爪でトカゲをつんと軽く刺す。今も、自分はローズの言われた通り魔力を補給し続けている。まだこの国は分断していない。このまま分断しない事を願い続けた。
ローズの死から間もなくして、第1王子が失踪したという噂が流れ始めた。噂は現実となり国全体の捜索が始まった。設計図を盗んだとは明かされなかった。
半年後、この国は分断された。自分の住んでいる国は恒陽国、もうひとつの国は永夜国となった。知りたくなかった答えが出来た。恒陽国によく似た国。間違いなく設計図を盗んだのだろう。それは同時に別のことを意味する。
ジハード「ローズは…言ったことをすべて現実に…いや違う。現実で起こせることしか、今まで言ってこなかった。」
そう。
死んだローズは8年後に、絶対に戻ってくる。
ガタイのいい男性「ジハードさんですか?」
ジハード「そうですが…何か御用でしょうか?」
ローズの死から7年経ち、1人のガタイのいい男性が話しかけてきた。
ガタイのいい男性「確か道案内のお仕事をされてましたよね?」
ジハード「ああ、はい。どちらへ?」
ガタイのいい男性「貴方がこの国に留まり続ける理由のある場所へ。」
ガタイの良い男性はそう自分に耳打ちをした。
ジハード「準備して参りますので少々お待ちください。砂漠では自由に水を飲むことが出来ませんから。」
ガタイのいい男性「そうですね、ではここで待っています。」
ジハード「ほら。」
8年前に居たあの殺されかけた洞穴に座り、水をガタイのいい男性に渡す。
ガタイのいい男性「あらありがとう。いつからこんな気を使えるようになったの?」
ジハード「さぁいつからだろうな。」
ガタイのいい男性「もう分かってるみたいだけど…一応ね。ローズよ、貴方の共犯者。」
ジハード「だろうな。あんなこと言うのはお前以外に居ない。しかし驚いた。随分と屈強になったな。」
ローズ「驚いたでしょ?私も驚いたわ。貴方はもうとっくに逃げたものだと思ってたもの。まぁそしたら殺しに行ってたけど。」
ジハード「驚く?嘘だろ。お前は俺がここに居続ける、そう予測できてたはすだ。」
ローズ「あら気づいてたの。じゃあ私が復活するのも分かってたのね。これは本当に意外よ?」
ジハード「そうか。すべて手のひらってのはムカつくからお前が絶対知り得ないことを言うが、悪魔にヒトを食べさせないのは俺の願いでもある。」
ローズ「そう。」
ジハード「…ローズはどうしてそんなことになったんだ。」
ローズ「ああこれね。まず言っておくんだけど…私は本物のローズじゃない。でも偽物とも少し違う。」
ジハード「どう考えても肉体はまぁ本体じゃないだろうな。これが本体って言われたら恐ろしい。」
ローズ「貴方時々失礼よね。まぁでもその解釈であってる。私は本物のローズと同じ性質を持つ。性格も行動も言動も何もかもおなじ。…これは誰にも言ってこなかったし、バレることもなかった事だけれど…私と貴方って似てるの。」
ジハード「というと?」
ローズ「あの日8年前に、貴方に力の詳細を吐かせたわよね?」
ジハード「魔法のか。そうだな。」
ローズ「あれは私の力。…私の魔法よ。」
ジハード「…悪魔に君はいなかったはずだが。」
ローズ「そうでしょうね。なんで使えるのかなんて私にも分からない。」
ジハード「待ってくれよ。それなら俺がここに留まる必要は…」
ローズ「なかった、と?それは違うわ。言ったでしょ。本物の寿命は残り少なかったの。」
ジハード「……。」
ローズ「私は相手と見つめ合うことで、そうね…催眠のようなものをかけられる。この体の本来の持ち主に、ローズになるよう命令してある。元の持ち主はかなり精神的自我が強かったから、ひょんなことから目を覚まされかけない。しっかりローズとして扱ってちょうだい。」
ジハード「んな無茶な…というかなんでわざわざそんな大変な人間を選んだんだ?」
ローズ「そんなの決まってるじゃない。作戦決行に当たって、戦うからよ。貴方をあまり戦わせる訳にはいかないから。」
ジハード「決行日は?」
ローズ「1年後よ。」