テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その日の深夜。深澤のマンションの一室に、ゆり組を除くSnow Manのメンバー7人が、秘密裏に集結していた。テーブルの上には、コンビニで買ってきたであろうお菓子と飲み物が並んでいるが、誰もそれに手を付けようとはしない。
ホワイトボードをリビングの中央に運び込み、腕を組んで仁王立ちする岩本が、重々しく口を開いた。
「これより、『第一回 緊急ゆり組対策会議』を始めます」
その場の全員が、神妙な顔つきで頷いた。
「まず現状の整理だ。阿部、頼む」
岩本に促され、阿部が立ち上がり、ホワイトボードにペンを走らせる。
【議題:ゆり組の現状について】
原因:MV撮影での衝突、及び、菊池風磨くんへの嫉妬(宮舘サイド)
現状:渡辺サイドは後悔しているが、素直になれず。宮舘サイドは心を閉ざし、「ビジネスパートナー宣言」。
問題点:グループ全体の士気低下。ファンへの影響も懸念される。
「…以上が、昨日までのヒアリングで分かったことです」
阿部が冷静に解説を終えると、佐久間が「うわー、マジで深刻じゃん!」と頭を抱えた。
「どないすんねん、これ…!舘様、ああなったらマジでテコでも動かんで!」
康二が、頭をわしゃわしゃとかきむしる。
「でも、翔太くんも、このままじゃ壊れちゃいそうだよ…」
ラウールが、目に涙を浮かべて呟いた。
「やっぱり直接二人をぶつけて、話し合わせるしかないんじゃないの?」
目黒が、もっともな意見を口にする。しかし、深澤がそれを否定した。
「いや、今の状態で二人きりにしたら、また同じことの繰り返しになるだけだ。翔太は素直になれないし、舘は心を閉ざしたまま。なんの進展もねぇよ」
「じゃあどうすんだよ!」と佐久間。
楽屋は、再び重い沈黙に包まれた。誰もが、名案を思いつけずにいる。
その時だった。今まで黙ってホワイトボードを睨みつけていた岩本が、ペンを取った。そして、ボードの中央に、大きく、力強い文字を書き始めた。
【作戦名:想い出の場所(エモ)で語り合え大作戦】
「…は?」
「え、何そのダサい作戦名…」
「照兄、マジで言うてんの…?」
メンバー全員が、ポカンとした顔で岩本を見る。しかし、岩本は至って真剣な表情で、続けた。
「ふざけてるわけじゃない。今の二人に必要なのは、理屈じゃない。感情を揺さぶることだ」
そして、岩本は地図アプリを開き、ある場所を指し示した。
「二人が、Snow Manになるずっと前。まだ、ただの“涼太”と“翔太”だった頃に、よく通っていた場所。俺たちが、そのステージを用意する」
その瞳は、リーダーとしての決意に満ち溢れていた。
前代未聞の「ゆり組仲直り大作戦」が、今、本人たちの知らぬところで、始動しようとしていた。
コメント
1件