テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
下総国 義明本陣 足利義明(道哲)
「二〇〇〇の兵がいながら一ヶ所も突破できないとはどういうことだ!?千葉も相馬も臼井も一体何をやっている!」
本陣にて緒戦で先鋒が一ヶ所も守り口を突破できなかったことに儂は激怒する。
「だからあれほど申したではありませんか。攻めるのであれば全軍で攻めねば関宿は落ちないと。なのにそれを拒絶した結果がこれですぞ。はっきり申し上げて道哲様の失策です」
開口一番、儂を明確に非難したのは後ろ盾である真里谷信清だった。まだ僧籍だった自分を庇護し小弓公方まで押し上げた功労者だからこそ不満も正直に吐き出しただろうが、それとこれは話は別だ。
「おのれ信清、儂を愚弄する気か!?」
「愚弄も何も本当のことではございませんか!?」
「お二人とも、落ち着いてくだされ」
信清を罵倒する。初めは我慢していた信清だったが、面子が潰れたことに堪忍袋が切れて激しく反論して儂を非難する。
しばらくしてなんとか落ち着いたが陣中は緊張状態が続いており、当主義豊の代わりに出陣した義豊の叔父里見実尭は殺伐とした空気に当てられたのか顔色が悪い。
「申し上げます!古河方面より敵の援軍を確認!」
古河方面を警戒していた実尭の兵からの報告が本陣に舞い込んできた。この報告によって空気が一変する。敵の援軍が現れたと聞くと勢いよく立ち上がる。
「よし、これより関宿城を包囲している先鋒を除いた全軍を反転させて敵の後詰を奇襲する!古河の弱兵なんぞ蹴散らしてくれるわ!」
今度は信清と実尭も止めなかった。作戦には一理あった。激戦になることにはなるが、後詰を破れば援軍を期待できない関宿城は勝手に落ちるはず。
またこれまでの経験から古河の兵があまり強くないと認識してたため、弟の足利基頼や重臣逸見遠江守らも共にこの作戦に同調した。奇襲に成功すればたとえ同数でも大勝することも可能だからだ。
まず先鋒を除いた全軍を一度引かせるように見せかけて、古河方を西側から挟み討ちにしようと江戸川の対岸の中島という地に軍勢を進めている古河の援軍に狙いを定めた。
そして古河の援軍を視認すると、江戸川の渡河を命じて敵への突撃を開始する。渡河するかについては信清らは懸念していたが基頼の賛成を得たので反対意見を振り切って渡河することに決めた。信清らも奇襲するには渡河せざるを得なかったため強く反対することはなかった。
儂の号令のもと、鬨の声を上げながら先陣が江戸川の渡河を試みる。
だが先陣が見た光景は奇襲に慌てふためく古河勢の姿ではなく冷静に陣を展開する姿だった。