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下総国 中島 小山犬王丸
「やはりきたか」
江戸川を渡河しこちらに突撃を試みる小弓勢を見ながら陣を展開させる。小弓の動きは一部を包囲から外さなかった時点で撤退ではないことに気づいていた。
そしてこの奇襲。撤退以外で関宿城と中島からの挟撃を避けるには後詰の俺たちのところへの奇襲は間違いではない。こちらも対策していなかったら現場は混乱していたはずだ。だが今回は結果的に対策できていたわけで、大きな混乱もなく迎え討つことができた。
今回の小山の兵は騎馬五〇騎を含めた五〇〇前後と数は多くない。しかし小山の中でも精鋭揃いの兵たちは練度も非常に高く、こちらの指示に素早く対応する。
鶴翼の陣に展開される中で小山家は水野谷家と共に右翼へ配置されていた。中央の古河勢の号令を合図に渡河してくる小弓の先陣に矢や投石が降りかかる。特に小山の投石は飛距離が長く速さもあり当たった敵は川の中で昏倒してしまう。
その秘密は投石の道具にあった。この時代にも簡単な投石器らしきものは存在していたが、俺が開発したのはスリングをアレンジしたもので、麻と動物の皮だけを使用して大量生産可能だ。といってもつくりは簡単なもので石を受ける部分を紐の中央に作っただけの投石紐だ。だが威力は絶大で最大飛距離は四〇〇メートルまで及ぶ。
今回このスリングを用いた農兵中心の印地隊を連れてきて正解だった。練度はまだ高める必要がありそうだが成果は申し分なさそうだ。降り注ぐ矢や石に敵の進軍は見るからに遅くなった。盾持ちが少なかったことも影響してか投石に当たってしまう者も少なくない。
他の部隊も結城や山川なども奮戦し敵の渡河を阻止している。中央を受け持つ古河勢は敵の主力が集中していることもあってやや苦戦しているが、亀若丸の激の声がここまで聞こえてくる。その声に呼応してかなんとか持ち直しており崩れる心配はなさそうだ。
「犬王様、敵の第二陣が渡河を開始しました。盾持ちもおります」
右馬助から敵の情報が入ってくる。敵の素早い対応に舌打ちする。盾を出されるとスリングの脅威が低くなってしまう。
「ちっ、流石に対応が早い。敵の旗は誰のものだ?」
「割菱の旗印、おそらく真里谷かと」
「真里谷か。たしか道哲様の後見役だったか。手強い相手になりそうだな。皆の衆、これからが本番ぞ。気を引き締めていくぞ!」
第二陣が投入されて敵の進軍が再開される。小山の兵は多くはないためここからが正念場になりそうだった。