作戦決行日、当日。カーテンの隙間から差し込む光で、渡辺は気だるく目を覚ました。今日は、久しぶりの完全オフ。溜まった録画を消化して、一日中ベッドの上で過ごそう。そう心に決めて、再び布団を頭まで被った、その時だった。
ブブブ…と、枕元のスマホが震える。画面には『深澤辰哉』の文字。
(…うぜぇ)
無視を決め込もうとしたが、着信はしつこく鳴り続ける。根負けした渡辺は、舌打ちしながら通話ボタンを押した。
「…あんだよ」
『お、しょっぴー起きた?今日暇だろ?買い物行こーぜ!』
電話の向こうから、深澤のやけにハイテンションな声が聞こえてくる。
「…やだ。だるい。一人で行ってこいよ」
『えー、いいじゃん!お前に見てほしい服があんだよ!』
「知らねぇよ。俺は寝る」
『つれないこと言うなって!な!いいから、準備しとけよ!すぐ迎えに行くから!』
「は?来んじゃねぇよ!」
渡辺が何か言う前に、深澤は「じゃあ、後でなー!」と一方的に電話を切ってしまった。
(…マジで来んのかよ、あいつ)
どうせ口だけだろう。渡辺はそう高を括り、スマホを放り投げて、再び布団の中に潜り込んだ。
しかし、その約30分後。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
玄関のチャイムが、狂ったように鳴り響いた。モニターを覗くと、そこには満面の笑みでインターホンを連打する深澤と、その隣で「翔太、開けてくれ」と真顔で圧をかけてくる阿部の姿が映っていた。
(うわ、マジで来やがった…)
居留守を使おうにも、チャイムは鳴り止まない。それどころか、ドンドン、とドアを叩く音までし始めた。
「しょーたー!いるのは分かってんだぞー!」
「翔太、近所迷惑になるから、早く開けてくれないかな?」
外からの声に、渡辺は観念して、頭をガシガシとかきながら玄関へと向かった。
ガチャリ、とドアを開けると、二人は待ってましたとばかりに家の中へ上がり込んできた。
「お前、まだパジャマじゃん!ほら、さっさと着替えろ!」
「え、やだ、行かねぇって」
「いいから!俺が服、選んでやるよ!」
深澤は、有無を言わさずクローゼットへと向かう。阿部は、ニコニコしながらも、渡辺の逃げ道を塞ぐようにドアの前に立っている。
「…お前ら、なんなんだよ、今日…」
そのただならぬ連携プレーと気迫に、渡辺は「何かおかしい」と感じ始めていた。しかし、二人の勢いに押し切られる形で、半ば強制的に、家から連れ出されることになってしまったのだった。
作戦は、開始早々、力技での強行突破となった。
コメント
4件
ドキドキっ

どうなるんだろ〜😱😱❤️❤️❤️
