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とにかく、海面の光が少なくなってきたら上がればいいんだ。かつての任務内容を思い出し、僕は任務を開始した。
といえども、スキューバーダイビングで、ほとんど丸一日潜水を続けるだけだ。任務の目的は、前に一度だけ聞いたがパッとしないものだった。潜伏といえど、何のため、誰のため、どのくらい続けるのか。何一つ教えてもらえない。
今となっては、それは目的を共有しないためだと言うことは分かる。でも、何のために?僕は、何のためにこの船に乗った?
視界には、何もない。生物がいない海域だし、地上にも降り立つ場所もない。この虚無に一体、何を求めたのか。僕は、ずっとそれを考えていた。
「フェレンさん、少しいいですか」
僕は、任務後、船上で待っていたフェレンに声をかけた。
「長くなりそうなことかな?」
僕は、言葉に詰まった。僕は自分が求めたもの、この船の目的について話す相手が欲しかった。ただ、それにすぐ答えが出るのかは分からなかったから。
「そうだ、私、この後執務室で少し任務があってね。終わってからそこでお茶でもどうかな」
それから、僕は夕食を一人で済ませた。海軍長さまは忙しく、最近はほとんど会うことがない。ネクトのお兄さんも、あれきり顔も見なくなってしまった。ネクトは、部屋でぐったりしている。話はするが、船の話題はお互いに避けていた。
僕は、約束していた時間に執務室へ向かった。
「あれ、もう来たのか。遅刻はしないとは流石だね」
「そのイジりは、いつまでされるんですか」
「ふふっ、君らふたりがちゃんと来れたらだよ」
フェレンさんは、笑ってはいるが目は室長らしく、鋭い目をしていた。やっぱり、油断は禁物だ。そういえば、朝礼の話をしていて思い出した。
「フェレンさんは、やっぱり朝礼に参加したことがありますよね?」
フェレンさんは、僕の言葉を聞いて呆れた表情をした。
「またその話かい。私は参加したことがないと言っただろう?」
絶対うそだ。ネクトの件が本当だったのだから、僕は自分の記憶を信じていいはずだ。
「本当に言ってます?」
「もちろん。君にとってはそこが重要なところなのかい?」
「そうです」
「どうしてかな?」
フェレンさんは微笑んでいた。なんで、そんな表情なのかは一瞬気にとめたが、僕は構わず続けた。
「ここがフェレンさんの嘘だと思うからです」
そう言った僕が間違いだった。
「また海に投げ出してもいいんだよ。船上には戻らずにね」
僕は、フェレンさんに襟元を掴まれていた。