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「牙が交わる日」
✧ レオナ vs ネメシス|沈黙の対峙
「……ほらよ。わざわざ前に出てきてやったぞ、期待の新生星様?」
「感謝いたします。あなたが、立ち会ってくださるとは思いませんでした」
レオナが鼻で笑う。
「面倒ごとから逃げて寝てるのがオレのスタイルだが……
なんか、お前の顔見ると、“嫌な気配”がするんでな」
「それは、あなたの中にある“痛み”が、私を鏡にして映っているからでしょう」
レオナの表情がぴたりと止まる。
「……そういう台詞、簡単に口にするなよ」
フェイドは一歩も引かず、ただ真っ直ぐに見返す。
「あなたの“牙”は、誰のために向いているのですか?
それとも、まだ“自分”を喰らい続けているのですか?」
レオナの空気が、ほんの一瞬だけ揺らいだ。
その隙に、フェイドは静かに口を閉じた。
✧ 試合、終了
その後の展開は、グリムの予想外の暴走、
エースとデュースの絶妙な連携での立て直し。
サバナクロー側の連携ミスも重なり、
結果――
「勝者、オンボロ寮!」
という結果に、観客席がざわつく。
サバナクローが負けたというより、
“オンボロ寮が崩れなかった”ことに驚きが走った。
✧ 試合後|言葉なき返答
試合後、控えエリアでフェイドが一人、
汗を拭きながら座っていると――
コツ、コツ、と靴音が近づく。
レオナだった。
彼は何も言わず、フェイドの前に立つ。
そして――
「“勝ち逃げ”はさせねぇからな。……“ネメシス”」
ただそれだけを言い残し、去っていく。
フェイドはその背に、静かに頭を下げた。
「……はい。次は、“牙”に触れても、崩れないように――なります」
「落ちた爪痕、風の中へ」
⸻
〔オンボロ寮・夕刻の食卓〕
「乾杯ッ!!」
グリムの声と共に、オンボロ寮の食卓が笑いに包まれる。
サバナクロー戦での勝利を祝って、ユウが用意した簡単な夕食パーティーだった。
エースとデュースも揃い、久しぶりに寮全体が賑わっている。
「いやー、あのサバナクローに勝っちまったかー! これ、次の学園新聞に載るな!」
「うん……でも勝ったっていうより、“崩れなかった”って感じだったよね。
ネメシスが最後まで動じなかったの、すごかった……」
「うにゃっ! 俺様の炎の援護も忘れるニャよっ!!」
フェイドはふふっと柔らかく笑いながら、湯気の立つスープをすくった。
「どれが主役だったというより……皆さんの心が折れなかったことが、何よりの勝因です」
「……でもやっぱ、ネメシスは不思議な人だな」
エースがぼそっと言った。
「なんであんなに落ち着いてるのか、たまに怖くなる時ある」
「えっ、それネメシスに失礼じゃ……!」
「構いません。私は“異質”であることを、自分でも知っていますから」
フェイドの目は、いつものように優しかった。
けれど――その奥に、ふとした“寂しさ”の影が揺れていたのを、
ユウは見逃さなかった。
⸻
〔夜・オンボロ寮屋上〕
その夜。フェイドは一人、屋上で星を見上げていた。
風に髪がなびき、シャツの袖がふわりと揺れる。
「……お兄様」
口をついた言葉は、リーチ兄弟を呼ぶものだった。
あの冷ややかな笑みも、厳しくも優しいまなざしも、今はただ記憶の奥にある。
「“立つ場所”を間違えるな、って……言ってくれましたね」
「私は今、間違っていないでしょうか――?」
そのとき、屋上への階段から足音が聞こえてきた。
「おやおや、随分と詩的な独り言を呟いていますね。」
ジェイドの声だった。
その後ろから、にやりと笑うフロイドも現れる。
「おっかしい子発見~。なになに、星にでもお祈りって感じ〜? 」
フェイドは、目を細めて穏やかに言った。
「……ずっと、見ていらしたのですね。お兄様たち」
「当たり前でしょう?」
ジェイドの声は低く、けれど静かだった。
「君が“仮面”のままでいられるように、僕たちは目を離さない。それが兄の役目でしょう?」
その晩。
フェイドは珍しく、深い眠りに落ちた。
そして――夢を見る。
黒い水面に、一人で立っている。
水の中から、誰かの声が響いてきた。
『お前は“創った者”か、それとも“選ばれた者”か』
『フェイドリーチ……お前の“創造”は、祝福か、それとも罪か』
水面が揺れ、フェイドの影が引き裂かれる。
『――また会おう、“生まれなかった方の君”』
フェイドは叫ぼうとしたが、声は出なかった。
夢が、静かに崩れていく。
⸻
〔翌朝・オンボロ寮〕
「……!」
目を覚ましたフェイドは、息をつきながら額の汗を拭った。
夢の意味も、声の主も分からない。けれど――
「“生まれなかった方の、君”……」
その言葉が、胸に棘のように残っていた。
静かな夜風がオンボロ寮の屋上を撫でる。
フェイドは一人、月明かりに照らされながら空を見上げていた。
その背後から、階段を上ってくる軽やかな足音が聞こえてくる。
「こんばんは、フェイド。こんな時間に星を眺めておられるとは……風邪をひかれては困りますよ?」
声の主は、ジェイド・リーチ。
柔らかな笑みと、穏やかな声。
その後ろからは、フロイドが猫のようにのそりと姿を現す。
「およよ? やっぱりここにいた~。ちびちゃん、星なんて見て何考えてたの~?」
フェイドは振り返り、穏やかな微笑みを浮かべた。
「……いらしていたのですね。ジェイドお兄様、フロイドお兄様」
ジェイドはその呼びかけに、くすりと喉の奥で笑いを含ませる。
「ふふ、“お兄様”だなんて、ずいぶんと殊勝な響きですね。
それでも、あなたが“仮面の名”で過ごしているあいだ――私たちが目を離すと思われましたか?」
「……いいえ。むしろ、いつもどこかで見ていてくださると信じておりました」
「それはそれは。光栄の至りです。
ですが、あまり無理はなさらないでくださいね。
“ネメシス”というお名前はとてもよく馴染んでいますが……時折、瞳の奥に“フェイド”が覗いてしまうように思いますから」
フェイドは少しだけ目を伏せ、風にそよぐ髪を片耳にかける。
「それでも、私は……“今の私”で、ここに在りたいのです」
ジェイドはゆっくりと目を細めた。
「ええ。もちろん、私たちはあなたを否定しません。
ただ――その歩みが重たくなる前に、少しだけ休まれてください。
あなたが仮面を脱ぐその時まで、私たちはずっと、変わらず側におりますから」
フロイドがふにゃりと笑う。
「そーそー。つらくなったら“ギュッて”してあげる~。ね~、ジェイド?」
「ふふ。……それはさておき、風も冷たくなってきました。
そろそろ、戻りましょうか。」
フェイドは小さく頷くと、二人と並んで屋上を後にした。
月は静かに、三人を照らしていた。
「記録にない生徒」
⸻
〔数日後・昼下がりの図書室〕
陽が高く、外は穏やかな晴れ模様。
けれどフェイドはその日、ひとり静かに図書室の片隅にいた。
開いていたのは、ナイトレイブンカレッジの生徒名簿の記録巻。
「……やはり、名前はない」
何かを探すように、フェイドの指先がページをなぞっていく。
けれど、探し続けていた“その名”は、どこにも記されていなかった。
(夢の中で、あれほどはっきりと声を聞いたのに……)
『フェイドリーチ……“生まれなかった方の君”――』
まるで、それは「自分と似ていて、まったく異なる存在」のようだった。
⸻
〔廊下・エースとデュースと合流〕
図書室から出たフェイドを、廊下で待っていたのはエースとデュースだった。
「おー、探したぞーネメシス! なんか最近、妙に静かにしてるからまた屋上で風に吹かれてるのかと」
「おいエース、それちょっと失礼だぞ! でも……確かに、ちょっと元気ないかも?」
「……ふふ、皆さんの目は誤魔化せませんね。
少し、気になる夢を見ただけです。気にしないでください」
「夢? あー、オレもこの前、ケイト先輩に追いかけられる夢見たわ。めっちゃ怖かった!」
「なんでケイト先輩!? いや、それ夢の意味どうなんだ……?」
笑いながら歩く三人を追うように、グリムが駆けてくる。
「おい、待つニャー! オレ様にも美味しいおやつの話題を混ぜるニャ!」
フェイドは、そんな騒がしい仲間たちのやり取りに、小さく微笑んだ。
(けれど――その名は、確かに存在した)
ふと、遠くの渡り廊下で、見慣れない制服の裾が風に揺れるのが見えた気がした。
けれど、次の瞬間には誰の姿もなかった
〔学園長室・クロウリーの懸念〕
「――記録に、ない?」
学園長・クロウリーが、古い巻物を前に、険しい表情で呟いていた。
「ここ最近、複数の生徒や教師から“見慣れない影”を目撃したという報告があるのです。
しかし、その生徒の名も姿も、記録にはまったく載っておりません。まるで……最初から存在していないかのように」
側に控えるディア・クロウリーの瞳が静かに光る。
(フェイドリーチ……あなたの“過去”が、揺れ始めているのかもしれませんね)
〔オンボロ寮・夜、ユウの部屋前〕
その夜、フェイドは何か言い出しかねているような面持ちで、ユウの部屋の前に立っていた。
ノックしようと手を伸ばし――少しだけ躊躇う。
(あなたにだけは、伝えておきたい)
けれどその手は、まだ扉を叩けずにいる。
その背に、グリムの寝息が微かに届いた。
「沈黙する牙」
⸻
〔日常編・オンボロ寮/早朝の朝食風景〕
朝のオンボロ寮。
鳥のさえずりが聞こえる中、キッチンではユウとフェイドが手分けして朝食を準備していた。
「ふふ、グリムさんが好きそうな食材を少し多めに……これで怒られずに済みそうですね」
「昨日の夜、あんなにツナ缶おかわりしたのに……ほんとグリムってすごい胃袋だよね」
ちょうどそこへ、目をこすりながらグリムが起きてきた。
「うにゃ~……オレ様の朝飯、できてるかニャ……?」
「はい。いつも頑張っているご褒美に、今日はちょっと豪華ですよ?」
フェイドが微笑んでスープを差し出すと、グリムの目が一気にぱちりと開いた。
「すげぇニャ……! ネメシス、今度から寮の専属シェフになればいいニャ!」
「それだと、ネメシスが魔法も料理もできるスーパーハイスペックになっちゃうね」
「魔法は……使えませんから。ただ、皆さんが笑ってくださればそれで」
その優しい言葉に、ユウもグリムもなんとなく黙ってしまう。
フェイドは――何も語らない。
でも、語らないからこそ、ふと感じる「距離」がある気がした。
〔場面転換・サバナクロー寮/午後の談話室〕
同じ頃、サバナクロー寮では空気が張り詰めていた。
寮内の古いソファに深く腰かけ、虚ろな瞳で天井を見上げているのは――レオナ・キングスカラー。
「……ちっ」
その舌打ちは、誰に向けたものでもなかった。
目の前には、崩されたチェス盤。
崩したのは、自分自身だ。
「どうしてあんな奴に、あんな目で見られなきゃならねぇんだ……“戦わずに立つ”だと……?」
ラギーが遠慮がちに近づいてくる。
「あの……レオナさん。最近ちょっと、様子が……寝てばっかじゃないですか?」
「もともと寝てんだろ。うるせぇ」
「……でも、前よりちょっと……疲れてるっていうか。
あのネメシスくん、なんかしたんすか?」
レオナの目が鋭く細まった。
「“何かされた”わけじゃねぇ。……ただ、見透かされた気がしただけだ」
⸻
〔オンボロ寮・放課後の夕暮れ〕
放課後のオンボロ寮。
フェイドは一人、外階段の踊り場に腰かけていた。
膝に手帳を乗せ、静かに空を眺めている。
そこへ、ユウが飲み物を二つ持ってやってくる。
「あ、いた。これ、差し入れ。ちょっと冷たいけど……飲んでくれたら嬉しい」
「ありがとうございます。……あなたは、いつも“優しい風”のようですね」
「え?」
「こちらが口に出さずとも、ちゃんと手を差し伸べてくださる。
そういう方が、世界に一人いるだけで……私は、この仮面のままでも歩けるのです」
「……ネメシス」
フェイドは、視線を手帳の上に戻した。
そして静かに、心の中でつぶやく。
(私は――“仮面のまま”で、あなたのそばにいたい)
「吠えぬ王、崩れる日」
⸻
〔放課後・校舎中庭〕
空気が不穏に揺れていた。
校舎の中庭に、人の声、叫び声、魔力のうねり。
――その中心にいたのは、レオナ・キングスカラーだった。
「チッ……つまんねぇ試合だな。負け犬どもが、俺の前に立つなよ」
周囲に倒れる生徒たち。
彼の足元には、呆然とした1年生の姿もある。
「“勝てる試合”しかやらないくせに、王様面してんじゃねーよ!」
「あ? 誰にモノ言ってんだ貴様……?」
サバナクローの空気が――濁っている。
その中心で、レオナは静かに魔力を放っていた。
⸻
〔オンボロ寮・共用スペース〕
「……レオナ先輩が、暴走してる?」
エースが駆け込んできたその声に、フェイドが静かに顔を上げる。
「中庭に人が倒れてて、もう教師も止めに入ったって……
でも、誰も“近寄れない”状態らしい。魔力の暴走ってやつだよ」
「……」
フェイドは立ち上がると、静かに仮面のような微笑みを整えた。
「行ってきます」
「ネメシス!? ちょっと待てって、あいつマジで危ないぞ!?
お前、魔法使えないんだろ――!」
ユウが思わずフェイドの腕を取る。
「やめて……! あなたが傷つくのを、私は――」
「大丈夫です」
フェイドは、ほんの少し、でも確かに微笑んだ。
「私は“あなたが信じてくれる私”を、信じたいのです」
⸻
〔校舎中庭〕
重く、熱を帯びた空気の中。
フェイドはひとり、暴走するレオナの前に立った。
「またお前か。“喋るだけ”の坊やが、俺に何の用だ?」
「あなたが“何かを壊したい”というのなら、私は“壊される側”を選びます」
「……何?」
「でも、私は立ち続けます。
“戦うため”でも“勝つため”でもない。
“倒れてほしくない誰かの代わり”として、ただ――ここに立つ」
レオナが手を上げる。
魔力がうねり、風が吹き上がる。
フェイドの髪が舞い、瞳は閉じられる。
「ふざけんなよ……! そんな綺麗事で、俺が何を捨ててきたと思ってる――!」
「わかりません。私は“あなた”ではないから」
「だったら黙ってろ!!」
魔力の奔流が、フェイドを呑みこもうとした――
その時。
⸻
〔割り込む存在・ユウ、そして〕
「ネメシス!!」
ユウが叫ぶ。
その声が、レオナの耳に届く。
そして――その隙を突いて、ラギーがレオナの背に手を伸ばした。
「すんません、レオナさん……もう十分、っすよ……!」
その手が、レオナの肩を強く掴む。
ぐらりと、レオナの身体が傾ぐ。魔力の波が収束する。
「……クソッ」
崩れ落ちたレオナは、そのまま意識を手放した。
フェイドは、静かに彼を見下ろす。
そして小さく――呟く。
「あなたの“牙”が沈黙を選ぶなら……私は、その沈黙の意味を、見届けましょう」
✧ 翌日・サバナクロー寮前
意識を取り戻したレオナは、フェイドの前に現れた。
「……一つ、聞かせろ。“魔法も使えねぇくせに”、なんでそんなに真っすぐ立ってやがる?」
フェイドは少しだけ、目を細めて答えた。
「私にとっては、“立つこと”が、唯一の魔法なのです」
沈黙がしばらく続く。
レオナは、鼻で笑った。
「……ムカつくな、お前」
そして背を向ける。
その一言が――彼なりの「敗北宣言」だった。
「オーバーブロット・黒の王」
⸻
〔校舎中庭・激突直前〕
教師陣と高年次の生徒たちも集まり、騒ぎは大きくなっていた。
だが――誰もが、“レオナ・キングスカラー”という男の魔力に圧倒され、動けずにいる。
その時。
「学園長命令です!生徒同士の喧嘩とはレベルが違います、下がってください!」
クロウディア・トレイン教師の声も届かぬまま、レオナの指先が黒く染まり始めていた。
「ああ、もううるせぇな……そうだよ、全部“俺のせい”だってんなら、いっそ世界ごと終わらせてやるよ……!」
その瞬間、黒い魔法の奔流が空を裂く――
フェイドはその光景を、静かに見つめていた。
(――これは、オーバーブロット)
そしてフェイドの瞳が、ほんのわずかに鋭さを宿す。
(“汚れた魔力”ではなく、“壊れた願い”)
〔ユウ&オンボロ寮メンバー参戦〕
「やるしかないよ、ネメシス! グリム、いくよ!」
「ああっ!? オレ様も行くのかニャ!? あいつ……めっちゃ強いニャ……!!」
「恐れるならば、私が前を歩きます。
あなたは、その背を預けてください」
フェイドが小さく指先を動かす。
(“魔法が使えない”はずの)彼女の周囲で、空気がわずかに揺れる。
(ただの風。そう思わせるだけの、微細な“気配”。)
「こいつ……やっぱ普通じゃないよな……?」
エースとデュースは顔を見合わせながらも、フェイドに背中を預けるようにして並び立った。
「……行こうぜ。こんなとこで倒れてたら、またネメシスに笑われんだろ」
⸻
〔戦闘描写(フェイド視点)〕
オーバーブロット状態のレオナが振るう魔法は、圧倒的だった。
風を刃にし、足元から大地が裂ける。
魔法石を砕く力を、何度も見せつけてくる。
しかし、そのたびに、フェイドは僅かに身体をずらし――
傷ひとつ負わずに仲間の前に立つ。
「不思議だな……あの人、魔法がないって言ってるのに……どうしてこんなに、怖くないんだろ……」
「うん……ネメシスがいるだけで、背中が軽くなる気がする」
フェイドは、前を向いたまま静かに言う。
「“王”は、誰かの前に立つ者ではありません。
“誰かの涙を背負う者”です」
そして、最後の一撃。
グリムが繰り出した魔法の炎が、レオナの暴走を包む。
〔終焉・黒い王の崩れ〕
レオナの黒いマントが焼け落ちる。
彼の膝が崩れ、ゆっくりと地に倒れた。
彼の手から、ぼとりと一枚のチェスの駒が落ちる――それは“王”。
フェイドは、それを拾い上げて呟いた。
「あなたが本当に望んでいたのは、“王”ではなく、“眠る場所”だったのですね」
レオナはそれを聞いたかどうか、静かに目を閉じた。
レオナの処分は保留となり、学園内には静寂が戻る。
だが、フェイドの心は別のことでざわめいていた。
(オーバーブロット――“力を喰らうほどの願い”)
(その根にあるものを、私は知らねばならない。でなければ――)
『生まれなかった方の君』
再び、夢の中で聞こえたあの声が、脳裏を掠める。
⸻
〔日常・オンボロ寮〕
オンボロ寮に帰還し、ユウ・エース・デュース・グリムたちとささやかな食卓を囲む。
「……でもさ、オレら、よく勝てたよな。あのサバナクロー相手にさ!」
「まさか王様が黒くなっちゃうとはね……あれ、レオナ先輩も処分されんの?」
「それは、クロウリー学園長に任せましょう。
彼が本当に“学園の長”であるならば、きっと正しい裁きを下すはずです」
「お前……マジで教師っぽいな。なんか怖いんだよ、やっぱネメシスって」
フェイドはそれを聞いて、小さく微笑んだ。
「怖がられるなら――“優しいまま”でいられるように、努力をいたします」
「……それが一番怖いんだって」
みんなの笑い声が、オンボロ寮の屋根の下で弾ける。
だが、フェイドの瞳は一瞬、外の空気を見つめていた。
(“記録にない生徒”――もうすぐ、あなたがこの場所へ来る)
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