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その夜は特別だった
まるで何年先かの自分への贈り物のようでもあった
もし贈り物であったなら悲しい
なぜならあなたの未来に私がいなく
私の未来には君がいないということだから
未来までほしいなんて贅沢だ
今私のことを愛しているということが
奇跡なのだから
こんなに汚れた手で
こんなに昏い目で
まだあさましくお前を欲しがる私をー
_ _ _
「なぁクラピカ、外へ出ないか」
夜もふけて案外寒がりなクラピカは
眉をひそめてけげんな顔をする
「まぁそんな顔すんなってほら?
これで寒くないだろ?」
そういって大きめの毛布をばさっとかけて、
クラピカごと抱きしめる。
まるでムックになったクラピカの塊を抱きしめたまま、ゆっくりテラスに出る。
…
「目を閉じて」
夜空を見上げるクラピカに
レオリオが優しく告げる。
素直に目を閉じたクラピカが、
20秒後、不思議そうにわずかに不機嫌そうに
片目を開いて俺を睨む。
「今キスすると思った?」
「///からかうな。」
「 いいから閉じて?」
…
「こうやってるとさ、波の音が聴こえるだろ、
あと虫の声とかさ」
「あぁ」
レオリオの抱きしめる手に力が入る。
「俺たまにこうやってひとりでテラスに出てさ、
考え事したりすんの、
んで、目を閉じてさ波の音とか聞くとなんか安心するっていうかさ、うん。うまく言えねーんだけどさ。」
「うん。」
「 だから、今日お前とこうやって一緒にいれて嬉しいんだ。」
「わたしもだ、ちょっと寒いけどな」
「 これで星でも出てればよかったんだけどなー。」
「 クラピカ」
凛とした声。
レオリオが急に真面目な顔になったことに不安を覚える。
「 だからさ、今日の日を覚えていてほしいんだ。
そしたら目を閉じて安心したこの夜をいつでも思い出せるだろ?
お前がひとりの時、傍にいてやれない時でも少しでもお前に安心してほしいんだよ」
ゆっくり目を開けたクラピカは驚いたように見開く
「…それは口説いているのか?」
「 …口説いてんだよ。」
「 ///」
沈黙が夜空に沈んでいく。
その静寂を破るようにクラピカが静かに口を開く。
「 目を閉じていいか?」
「 閉じて」
今度は優しいキスが降りてきた
毛布に包まれてレオリオに抱かれて
とびきり優しいキスを感じて
星なんかいらない
なにもいらないから
(レオリオ、お前がほしい)
それが言葉にならないかわりに
目から涙が一筋こぼれた
こぼれだしたら止まらず泣き続けた
「 悪かったな、また泣かせちまった」
…
声を殺してレオリオにしがみつく
何度も何度でも背中をさすってくれた
(お願いだから
愛していると言ってほしい
何度身体をかさねても
優しいキスをしてくれても
こんなに優しく抱きしめてくれるのに
どうしてなにも言ってくれないのだ)
「もう傷付きたくない、疲れた…」
「私はお前が好きだよ、レオリオ
本気なんだ。もう大事な人などいらなかったはずなのに。どうしたって忘れられない。
だけど、このオレの気持ちがオレを傷つけ続けてる。
そして、お前に愛されたいと浅ましく思ってしまうのだよ。だから、勘違いしたくない。
ひとりの時になんて言わないで欲しい。
勝手なこと言ってるのはわかってる。
電話も出ない、メアドも教えないくせに、
未来に私がいないことに勝手に傷ついているのだから。」
一気に早口でまくしたてる。
最悪だ、ずっと言わないでおこうと思った言葉たちが。
ひとつひとつ手折って捨てた言葉の花びらが、
風に舞い、まっすぐ愛おしい男に降り注ぐ。
さすがに思ってもみなかった突然の告白に、
レオリオは驚いたように俺から身体を離した。
ーそれはまるで拒絶のようで。
もう毛布はとっくにテラスの床に落ちていた。
もう嫌だ。
レオリオの言葉も温かさも今は聞きたくない。
長い沈黙のあと、
誰よりも優しい目で見つめるレオリオ
「 クラピカ…」
「 俺の目を見て?」
言葉は必要ない。
さっきは目を閉じろと言ったのに
今は目を見ろという
どこまでも勝手で憎らしくて愛おしい彼に
結局何もかも満たされるのだから
せめてこの目に貴方を焼き付けて
どんどん近づいてくる距離に心臓が高鳴る
キスする距離になったら、ささやかれる
「目を閉じて」
今度は心のこもった優しいキスで
レオリオがわずかに震えていた
それはまるで別離の儀式のようで…
「悪ぃ…」
優しく抱きしめられて
あぁ諦めなければならないのかと
他人事のようにクラピカは思い、告げられる言葉を待つ。
馬鹿なことをした。
伝えなければこの関係のまま一緒にいられたのに…。
「 先に言わせちまった。
こんなに思い詰めてたなんて気づかなくてゴメン。
ほんとは俺から伝えたかったんだけど、
お前負担に思うかなって。
お前の足枷にはなりたくなかったからさ。
でもなってたよな。言わないことで傷つけてた。」
どこまでも優しいこの男は、自分が悪いと言う。
レオリオが詫びる理由なんでどこにもないのに。
私はただ星より何より欲しい言葉はただ1つ…。
「 …クラピカ、好きだ…」
いつのまにか、空の雲が流れて
星が見えていた。
星も本当に欲しい言葉も要らないと思った矢先、
空から降ってきて、あぁこれは夢かもしれないな。
もし神様見ていたら見逃してください。
雲に隠れて見しやそれともわかぬまに
愛おしいあなたとの夜を