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※腐有
「俺はっ!!絶対にキルアの事抱きたいの!!!」
真っ直ぐな瞳でど直球にそう告げる少年と、
いきなりの大きな声に体をびくりと揺らしながらも顔を紅潮させて慌てて口を手で塞ぎにいく少年。
少年達には似つかわしくない高級なホテルの一室で繰り広げられるやり取りを生暖かく見守るように、夏の日差しが窓から差し込んでいた。
「ば、ばかッ、声がでけーよっ!」
「だってキルアがうんって言ってくれないから!」
怒った表情で銀髪の少年を見るツンツンとした黒髪の少年、ゴン・フリークスは昔から言い出したら絶対に引かない性格であった。どんな事があろうと自分がしたいと思った事はひたすら真っ直ぐにそこに向かって突き進んでいく、どこか常人離れをした芯の強さを待っていた。
だからこそ、ゴンは絶対に引かなかった。
この話が昨日の夜から日を跨いでも続けられているやり取りであったとしても。
「もうキルアが諦めてよ!俺は絶対に引かないんだから!」
そんなゴンにキルアと呼ばれる銀髪の少年、
キルア・ゾルディックはゴンとは対比的な銀色の髪に病的な程に白い肌をもち、暗殺一家の期待の星として育て上げられたエリート。身体能力はさることながら頭も切れ、ゴンにない知識を補いながらサポート役に徹している。そんなキルアも、ゴンほどではないにしても我が強くプライドが高い性格をしている。
しかし、初めて出来た唯一の友達には少し‥いや、かなり甘いところがあり、ゴンの言う事には基本的には受け身体制で何でも付き合ってきた。
だが、こればかりはキルアも簡単に譲るわけにはいかないと、昨日の夜からずっとやり取りは拮抗を続けていた。
「ゴンだって!俺に押し付けんなよ!つーかなんで俺が抱かれる側だって決めつけてんだよ!」
「だってキルア可愛いじゃん!それに俺が色んなキルアを見たいから俺が抱く!」
「はっ、恥ずかしい事どうどうと言うなっ、それにお前の方が可愛い‥だろっ‥」
お互いに可愛いと言って照れ合う2人。
先ほどとは打って変わって部屋にシンと沈黙が流れた時、それを打ち破るようにグゥ〜とゴンの腹の音がなった。少しポカンとした表情を見せたキルアは、堰を切ったように笑い出す。
「‥‥ふっ、くく、お前変なタイミングで腹鳴らすなよっ‥!」
「仕方ないでしょ、昨日の夜から何も食べてないんだからっ!」
どうやらツボに入ったようでケタケタと腹を抱えて笑うキルアを横目に、ゴンは少しイラついた様子でドスドスと足音を立てながらルームサービスに電話をして朝食を頼んだ。
注文を終えたゴンはキルアの横にドスンと腰をおろして、未だ涙を浮かべながら笑うキルアの両手首を捕まえる。
「はぁーおかし、ほんとお前って面白いよなっ‥‥って、なに?どうしたゴン‥」
真剣な目でジッとキルアを見るゴン。
妙な雰囲気に、両手首を掴まれ逃げ場をなくしてしまったキルアは少し訝しげな表情を浮かべた。
「な、なんだよっ‥怒った‥?」
「怒ってないよ。でも俺、真剣なんだ」
「‥‥俺だってふざけてるわけじゃねーよ」
「分かってよキルア。俺、キルアと一つになりたい」
いつでも、恥ずかし気もなく自分の感情をぶつけてくるゴン。本当ならキルアだってゴンの言う事は聞いてやりたい。キルアにとってゴンの喜ぶ顔を見る事が自分の喜びでもあったから。
「ゴン、恥ずいからやめろって‥」
「恥ずかしくない、俺に取っては大事な事だよ!」
「いや、まあ、そうだけどさ‥。ていうかお前、俺の事、抱くとか言ってるけどやり方知ってんのかよ?」
「それはまだ分からないけど‥でも大丈夫だよ!」
「お前なぁ〜、やり方も分からない奴が一丁前に抱くとか言うんじゃねーよ!」
「でもっ、俺だって男だ!キルアといるとエッチしたくなるんだから仕方ないだろ!」
「だっ、だからそういう事どうどうと言うなってッ‥」
責めに責めてくるゴンを必死に宥めながらも顔を真っ赤にして狼狽するキルアにはどうしても簡単に了承できない理由があった。
「とにかく‥この話は一旦やめよーぜ、な?」
キリがない、とキルアは一旦話を中断させるべく、ゴンに言い聞かせるように告げる。
だがゴンは引かない。今引いたら当分先はこんな話をする機会がなくなりそうで、引くわけにはいかないと本能で感じ取ったからだ。
「‥いやだ、やめない。」
「我儘いうなよ、餓鬼かよ」
「あぁ、俺は餓鬼だね!キルアが大人だって言うならキルアが諦めてよ!」
「おまえっ‥自分勝手な事言うなよ!餓鬼!」
恋人同士であるゴンとキルア。
ゴンは、キルアと両思いであると分かった日から性を意識せずにはいられなかった。
無遠慮にベッドに潜り込んでくるキルアにドキドキしてなかなか寝付けなかったり、時折甘えたようにくっついてくるキルアにドキドキしたり、今までは平気だった事がそうはいかなくなってしまい、切れそうな理性を数えきれないほど抑えてきた。
それは、当のキルアが今までといつも通りの距離感を保ち、全くそういう面を見せなかったからだ。
自分だけがキルアのことをそういう目で見ているんじゃないかと不安になったゴンは、昨日の夜に思い切って聞いてみたのだ。
俺はキルアと一つになりたいんだと。
「キルアは、俺の事好きなんだよね‥?」
ギリギリとキルアの手首を握る力が自然と強くなる。
少し赤らんだ顔で困った様な表情を浮かべながら、小さな声で好きだと言うキルアを見て、ゴンの中でずっと我慢をしていた理性の糸がプツリと切れた。
キルアの白い首筋に吸い付くように唇を寄せ、自分のものだと主張する様に何個も赤い跡をつけていくと、キルアは小さく声を出して身じろいだ。
その声が余計にゴンの欲情を煽る。
「キルアっ‥」
「ゴン、落ち着けよ、やめろってバカっ」
完全に自分を見失っていた。
制止にかかるキルアを無視して、手首を押さえつけたまま口を塞ぐ。キルアとくっついているだけで多幸感と興奮に包まれた。
触れるだけのキスをした後、もっと一つになりたいと舌を入れて絡みとる。
やめろと言いながらも白い肌は赤く染まり、キスの合間に一生懸命に呼吸を紡ぐキルアの姿が今のゴンにとってはとてつもなく興奮材料で、止めることはできなかった。
コンコンーーー
ドアから聞こえるノック音。
「ゴン・フリークス様。朝食をお持ちしました。」
ホテルマンの声にハッとしたキルアは、
掴まれていた手首を振り解いてゴンを突き飛ばした。
勢いで後ろに倒れたゴンが見たキルアは、悲しいような怒っているような、キルア自身がどうすれば良いか分からなさそうな、何とも言えない複雑な表情を浮かべていた。乱れた呼吸を整えながら袖口で口を拭ったキルアはキッとゴンを睨みつける。
「‥キルア、ごめんっ、俺‥‥」
「‥部屋戻る」
バンッ!と勢いよく開いた扉に驚いているホテルマンの横を早足ですり抜けていくキルアの後ろ姿を見ながら、やってしまったとゴンは頭を抱えた。
キルアが嫌がることはしたくなかったのにと後悔する一方で、どうして分かってくれないんだとキルアを責め立てる気持ちがせめぎ合う。
相反する感情は混ざり合う事はなく、ゴンの心を乱していった。
「もう‥、何考えてるのか分かんないよ‥」
キルアと一緒に食べようと思って2人分頼んだ朝食はまだ温かさを残している。
すっかり食欲減退してしまうかと思いきや、人間は欲求には素直なようでこんな時にでも腹がへっている事を自覚したゴンは少し自分に嫌気が差した。
ホテルマンに一言お礼を告げ、朝食を部屋に運び、机に並べる。
食べられる事のない、もう1人分の朝食。
置いてけぼりの自分みたいだとため息を吐いた。