コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
食事を終える頃になると、演奏する曲調が落ち着いたムードのある音楽に変わり、何組かがフロアでソシアルダンスを踊り出した。
「一緒にどうですか?」
と、彼女に手を差し伸べると、
「でも私、ダンスなんて、したことがないですし…」
困ったように顔をうつむかせた。
「私が、リードをするので」手を取り、イスから立ち上がると、
「じゃあ、少しだけなら…」言う彼女を伴って、フロアへ出た。
「私に合わせて、足を動かしてみてください。私が出したら引く、引いたら出すという感じでステップを踏めば、ある程度は踊れますので」
「は…い…」まだどこか不安そうな彼女の手を片手で取り、一方の手を背中に添えると、曲に合わせてゆっくりと足を動かした。
曲はスローワルツで、耳元で「前へ、後ろへ」と、囁きながら踊る内、彼女も少しずつ動きに慣れてきたようだった。
そうして一曲が終わる頃には、彼女の腰に手を当てて回る軽いスピンターンを決めることもできて、ささやかな拍手をもらい席へと戻った──。