「…ふうぁ♡」
男は動かない。既に私が血を吸い取り切ってしまったからだ。
「ごちそうさまでした!」
ニヒルに笑う私は”ヴァンパイア”。この世界で有数の異能力者だ。
話は数ヶ月前に遡る。当時、私は独り身でも、立派に女子高生をしていた。家は恵まれてたから生活に困ることはなかったし、これが欲しいって言ったら買ってくれて、この学校に行きたいって言ったら学費と勉強代も払ってくれた。
勝ち組の人生って感じでしょ?私もあの時までは、これからもいい人生を送れるって信じて疑ってなかったの。
でも違った。私の人生はあの日大きく形を変えた。
「…… っはぁ…はぁ…!」
学校からの帰り道。私は突然激しい動悸に襲われた。脳裏に響くのは女の声。
『あなたは今日から”ヴァンパイア”です。これは数ある大きな力の1つ、貴方なら使いこなすことができるでしょう。』
気がついた時には家のベットに寝転んでた。そんでそのあとすぐにパニックになったの。なんでだと思う?
訳もわからぬ声を聞いたから…?違う。
力に溢れていた自分の体に対して…?違う。
「血が飲みたい…♡」
私は激しい吸血衝動に駆られていた。 顔を真っ赤にして窓から飛び出し、通りすがりの男の肩にしゃぶりついた。私はあの味を忘れることはないだろう。至高の時間だった。
「あ…やば。」
男は私の肩に倒れ、起き上がらなかった。私はあの瞬間、初めて人を殺した。
その日以降私はルールを作った。まず、血を吸う相手は私の思う悪人だけに絞ることにした。善良な相手を干からびさせるのは私も気分が悪いからね。
…言っとくけど、飲まないなんて選択肢ははなからないよ?あれをやめるなんて私にはできない。人殺し、それを些事と考えてしまうまでにあの味はよかった。本当によかったのだ。だからしょうがない。
次に、血を吸うのは夜にすることにした。理由は2つ。単純に夜なら人にバレづらいっていうのと、私の『ヴァンパイア』としての力が増すからだね。
『ヴァンパイア』が何かっていうのも分かってきた。この吸血衝動もそうだけど、他にも色々変化があった。
大きな変化は、体が丈夫になって、身体能力がめちゃ上がった。ビルからビルに飛び移ったり、5階くらいまでならジャンプで降りてもノーダメージだったりする。
あと爪も生えた。この爪がまたすごくて、銃弾弾けたりする。悪い奴と戦う時に重宝してるんだぁ。
そして何より、コウモリの翼が生えた。ほんとにもう、the・ヴァンパイアって感じ。空を飛ぶのは無理だけど、練習して滑空くらいならできるようにしておいた。
無敵に思える私にも一つだけ懸念点がある。私に力を授けた存在は、私以外にも能力者がいるみたいな口振りをしていた。もしも今後能力者と相対したらなにが起こるのか想像もつかない。もし戦闘になりでもしたら私が勝てる保証はないからね。
これからもたくさん血を吸うために私は長く生きなきゃいけないからね!
「こんな夜遅くになにしてるんだい…?お嬢さん。」
最悪だ。こいつは能力者だ。しかも私に敵意をむき出しにしている。いつものように血を調達に出かけていると突如、敵の本拠地で話しかけられた。 最初はただの一般人としか思ってなかったが、こいつ私の爪を受け止めやがった。
「…あんた何者?」
「ただの僕さ。」
答える気はないらしい。私は黒く輝く翼を生やし、戦闘体制に入った。
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